[OD-2-3] 糖尿病性壊疽による下肢切断患者においてtranstheoretical modelを用いた作業療法の実践
【はじめに】
糖尿病の合併症の一つである末梢動脈疾患は, ときに下肢切断を必要とする重篤な病態である. 下肢切断後は不安や抑うつなどの心理症状を生じると示されている. しかし, 下肢切断患者への心理症状への具体的な介入方法に関する報告はきわめて少なく, さらなる介入方法の充実が必要である. 今回, 糖尿病性壊疽による下肢切断患者において悲観的な言動を訴える患者を経験した. 作業療法士は, 心理症状に対してtranstheoretical model:以下, TTMに基づき対応した. 結果, 患者が掲げた生活目標の達成と不安の軽減が図れたため, その経過を考察とともに報告する.
【倫理的配慮】
本報告にあたり症例本人に説明し同意を得た. また, 筆頭著者が所属するリハビリテーション室の所属長に承認を受けた.
【症例紹介】
症例(以下A氏)は60歳代後半の女性であり, 病前は夫と娘と生活し, ADLは自立していた. 現病歴は38℃台の発熱と右足浮腫が出現し, 近医を受診した所, 右足糖尿病性壊疽と診断され, 当院の整形外科に紹介受診となり入院となった.
【介入経過】
介入時のBarthel Index(以下BI)は55/100点でADL全般に介助が必要であり, 「切断をするのがショックです」などの悲観的な言動が多く聞かれた. A氏の状態を, 【行動変容ステージの前熟考期】に該当すると判断し, その訴えを傾聴するように関わった. 入院45病日目に右下腿切断術が施行された. 「義足を着けての生活がどこまでできるのかが一番不安です」などの問題に対する発言が増え, 【行動変容ステージの熟考期・準備期】と思われる発言が聞かれた. 介入時には, 生活範囲の拡大やADLにおける自立度が向上したことに焦点を当て, リハビリテーションに取り組むことによる効果を実感できるように関わった. 入院101日目より治療用義足を使用したADL訓練を開始した. BIは55/100点で, 依然としてADL全般に介助が必要であった. 退院に向けて目標を設定するためにCOPMを行なった. A氏からは「自分でできることはなるべく行いたい」などの前向きな発言が多く聞かれた. 【行動変容ステージの行動期】の段階であると判断した. A氏と話し合った結果, 杖を使って屋内を歩行できるようになること, 自宅でお風呂に入れるようになること, 食器洗いをできるようになることを作業療法の目標とすることに決定し, 介入を行った.
【結果】
COPMの結果, 遂行度スコアは初回が4.6から最終9.6へと向上し(変化値:5.0), 満足度スコアは初回が3.3から最終9.6へと向上(変化値:6.4)した. A氏からは, 「これなら家に帰っても大丈夫や」などの前向きな発言が聞かれ, 不安が軽減されている様子が伺えた. 入院149病目に自宅退院となった.
【考察】
下腿切断患者に対し, TTMを用いた介入を行った. 結果, 臨床的に意義のある最小化であるMCIDの観点から検討すると, COPMのMCIDは2点以上の変化が必要であるとされており, 作業療法介入に一定の影響を与える可能性が示唆された.
TTMの有用な点として, 具体的な複数の介入方法が明示されていることや, 対象の行動変容における変化の把握がしやすいことが挙げられる. 今回用いた具体的な介入として, 自己再評価, 意思決定バランス, 強化マネジメント, 脱落防止法, 援助関係があった. これらの介入は, 下肢切断に伴い生じる心理的側面に対する介入の一助となる可能性が示唆された.
糖尿病の合併症の一つである末梢動脈疾患は, ときに下肢切断を必要とする重篤な病態である. 下肢切断後は不安や抑うつなどの心理症状を生じると示されている. しかし, 下肢切断患者への心理症状への具体的な介入方法に関する報告はきわめて少なく, さらなる介入方法の充実が必要である. 今回, 糖尿病性壊疽による下肢切断患者において悲観的な言動を訴える患者を経験した. 作業療法士は, 心理症状に対してtranstheoretical model:以下, TTMに基づき対応した. 結果, 患者が掲げた生活目標の達成と不安の軽減が図れたため, その経過を考察とともに報告する.
【倫理的配慮】
本報告にあたり症例本人に説明し同意を得た. また, 筆頭著者が所属するリハビリテーション室の所属長に承認を受けた.
【症例紹介】
症例(以下A氏)は60歳代後半の女性であり, 病前は夫と娘と生活し, ADLは自立していた. 現病歴は38℃台の発熱と右足浮腫が出現し, 近医を受診した所, 右足糖尿病性壊疽と診断され, 当院の整形外科に紹介受診となり入院となった.
【介入経過】
介入時のBarthel Index(以下BI)は55/100点でADL全般に介助が必要であり, 「切断をするのがショックです」などの悲観的な言動が多く聞かれた. A氏の状態を, 【行動変容ステージの前熟考期】に該当すると判断し, その訴えを傾聴するように関わった. 入院45病日目に右下腿切断術が施行された. 「義足を着けての生活がどこまでできるのかが一番不安です」などの問題に対する発言が増え, 【行動変容ステージの熟考期・準備期】と思われる発言が聞かれた. 介入時には, 生活範囲の拡大やADLにおける自立度が向上したことに焦点を当て, リハビリテーションに取り組むことによる効果を実感できるように関わった. 入院101日目より治療用義足を使用したADL訓練を開始した. BIは55/100点で, 依然としてADL全般に介助が必要であった. 退院に向けて目標を設定するためにCOPMを行なった. A氏からは「自分でできることはなるべく行いたい」などの前向きな発言が多く聞かれた. 【行動変容ステージの行動期】の段階であると判断した. A氏と話し合った結果, 杖を使って屋内を歩行できるようになること, 自宅でお風呂に入れるようになること, 食器洗いをできるようになることを作業療法の目標とすることに決定し, 介入を行った.
【結果】
COPMの結果, 遂行度スコアは初回が4.6から最終9.6へと向上し(変化値:5.0), 満足度スコアは初回が3.3から最終9.6へと向上(変化値:6.4)した. A氏からは, 「これなら家に帰っても大丈夫や」などの前向きな発言が聞かれ, 不安が軽減されている様子が伺えた. 入院149病目に自宅退院となった.
【考察】
下腿切断患者に対し, TTMを用いた介入を行った. 結果, 臨床的に意義のある最小化であるMCIDの観点から検討すると, COPMのMCIDは2点以上の変化が必要であるとされており, 作業療法介入に一定の影響を与える可能性が示唆された.
TTMの有用な点として, 具体的な複数の介入方法が明示されていることや, 対象の行動変容における変化の把握がしやすいことが挙げられる. 今回用いた具体的な介入として, 自己再評価, 意思決定バランス, 強化マネジメント, 脱落防止法, 援助関係があった. これらの介入は, 下肢切断に伴い生じる心理的側面に対する介入の一助となる可能性が示唆された.