[OD-3-6] 橈骨遠位端骨折掌側ロッキングプレート固定術後患者の安全な自動車ステアリング操作はいつから可能か
【はじめに】運動機能障害のある患者で,自動車運転の過失事故のリスクがはるかに高くなることが知られている.高齢者の四大骨折の1つである橈骨遠位端骨折(DRF)の自動車運転再開は,掌側ロッキングプレート固定術(VLP)後,2~3週間後に可能であったとの報告が複数ある.しかし,これらの報告は患者の自己申告調査であったり,運転再開時期の手関節機能が不明であるなど,客観的に不明確な部分が多い.
【目的】自動車運転シミュレーターを用いてVLP後のDRF患者のステアリング操作能力を経時的に定量化し,健常者のこれらの能力と比較する.これらより安全なステアリング操作がいつから可能になるかを明らかにする.また,これらの時期の手関節機能を明確にする.
【方法】日常的に自動車を運転するVLP後のDRF患者10名(男1名,女9名,平均年齢64.4歳)を対象とし,これらを患者群とした.全てが右手利きで,受傷側が利き手であった患者は4名であった.骨折型はAO分類でA:4名,C:6名であった.これらの術後1週,2週,3週,4週,6週,8週時に,運転シミュレーターHondaセーフティナビ(本田技研工業社,日本)の運転能力評価サポートソフトの運転反応検査のうち,パイロン間を通過する課題である「ハンドル操作検査」を行い,ステアリング操作の反応時間,正確性,左右バランス,適応性の4項目を定量化した.また,同時期の安静時痛,労作時痛,ステアリング操作時の痛みをnumerical rating scaleの0から10の11件法で評価した.さらに同時期の手関節(屈曲,伸展,橈屈,尺屈)と前腕(回内,回外)の可動域を計測した.また,日常的に自動車を運転する健常者15名(男5名,女10名,平均年齢62.4歳)を対照群に設定し,同様に「ハンドル操作検査」を実施した.検討項目は,ステアリング操作の反応時間,正確性,左右バランス,適応性を対象群と患者群の術後各時期で比較することとした.統計学的解析には,Mann–WhitneyのU検定を用い,有意水準を0.05に設定した.尚,本研究は所属施設の研究倫理審査の承認を受け,全ての対象者に書面で参加の同意を得た.
【結果】運転シミュレーターによるステアリング操作の反応時間と適応性は,対照群と比べ患者群の術後全ての時期で有意差を認めなかった.一方,ステアリング操作の正確性は,対照群と比べ患者群の術後1週,2週で有意差を認め,術後3週以降に有意差を認めなくなった.また,左右バランスも術後1週で有意差を認めたが,術後2週以降に有意差を認めなくなった.術後3週時の疼痛の平均値は安静時痛0.4,労作時痛4.0,運転時痛2.6,可動域の平均値(患健比)は,手関節屈曲42.5°(63.7%),伸展48°(69.9%),橈屈15°(74.2%),尺屈34.5°(78.5%),前腕回内71°(84.7%),回外76°(85.3%)であった.
【考察】本研究より,VLP後のDRF患者の安全な自動車のステアリング操作は,術後3週から可能になることが示唆され,先行研究を支持する結果となった.術直後は健側に依存したステアリング操作になるため,障害物に対する反応は可能であるが,ステアリング操作の正確性や左右バランスが不十分になると考えられた.しかし,術後3週で両手でのステアリング操作が向上し,対照群と同等のステアリング操作が可能になったと考える.また本研究で得られた術後3週時の手関節機能は,安全なステアリング操作が可能となる1つの指標になると考えられた.
【目的】自動車運転シミュレーターを用いてVLP後のDRF患者のステアリング操作能力を経時的に定量化し,健常者のこれらの能力と比較する.これらより安全なステアリング操作がいつから可能になるかを明らかにする.また,これらの時期の手関節機能を明確にする.
【方法】日常的に自動車を運転するVLP後のDRF患者10名(男1名,女9名,平均年齢64.4歳)を対象とし,これらを患者群とした.全てが右手利きで,受傷側が利き手であった患者は4名であった.骨折型はAO分類でA:4名,C:6名であった.これらの術後1週,2週,3週,4週,6週,8週時に,運転シミュレーターHondaセーフティナビ(本田技研工業社,日本)の運転能力評価サポートソフトの運転反応検査のうち,パイロン間を通過する課題である「ハンドル操作検査」を行い,ステアリング操作の反応時間,正確性,左右バランス,適応性の4項目を定量化した.また,同時期の安静時痛,労作時痛,ステアリング操作時の痛みをnumerical rating scaleの0から10の11件法で評価した.さらに同時期の手関節(屈曲,伸展,橈屈,尺屈)と前腕(回内,回外)の可動域を計測した.また,日常的に自動車を運転する健常者15名(男5名,女10名,平均年齢62.4歳)を対照群に設定し,同様に「ハンドル操作検査」を実施した.検討項目は,ステアリング操作の反応時間,正確性,左右バランス,適応性を対象群と患者群の術後各時期で比較することとした.統計学的解析には,Mann–WhitneyのU検定を用い,有意水準を0.05に設定した.尚,本研究は所属施設の研究倫理審査の承認を受け,全ての対象者に書面で参加の同意を得た.
【結果】運転シミュレーターによるステアリング操作の反応時間と適応性は,対照群と比べ患者群の術後全ての時期で有意差を認めなかった.一方,ステアリング操作の正確性は,対照群と比べ患者群の術後1週,2週で有意差を認め,術後3週以降に有意差を認めなくなった.また,左右バランスも術後1週で有意差を認めたが,術後2週以降に有意差を認めなくなった.術後3週時の疼痛の平均値は安静時痛0.4,労作時痛4.0,運転時痛2.6,可動域の平均値(患健比)は,手関節屈曲42.5°(63.7%),伸展48°(69.9%),橈屈15°(74.2%),尺屈34.5°(78.5%),前腕回内71°(84.7%),回外76°(85.3%)であった.
【考察】本研究より,VLP後のDRF患者の安全な自動車のステアリング操作は,術後3週から可能になることが示唆され,先行研究を支持する結果となった.術直後は健側に依存したステアリング操作になるため,障害物に対する反応は可能であるが,ステアリング操作の正確性や左右バランスが不十分になると考えられた.しかし,術後3週で両手でのステアリング操作が向上し,対照群と同等のステアリング操作が可能になったと考える.また本研究で得られた術後3週時の手関節機能は,安全なステアリング操作が可能となる1つの指標になると考えられた.