第58回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

運動器疾患

[OD-4] 一般演題:運動器疾患 4 

2024年11月10日(日) 08:30 〜 09:30 D会場 (小ホール)

座長:野中 信宏(愛野記念病院 手外科センター)

[OD-4-1] 関節リウマチにおける拇指変形が化粧動作に与える影響

佐藤 信治1, 島原 範芳1, 黒田 弥生1, 石橋 仁美2, 石橋 裕3 (1.道後温泉病院リウマチセンター リハビリテーション科, 2.東京工科大学 医療保健学部 リハビリテーション学科, 3.東京都立大学 保健福祉学部 作業療法学科)

【序論】
関節リウマチ(RA)は関節炎や過用や誤用に伴い,変形が発生する可能性が高い疾患である.現在,薬物療法の進歩により,寛解達成の割合も増加し,健常者と遜色ない生活を送れるRA患者が増加傾向にある.しかし,RAの疾患活動性が安定していても手指変形が発生するといった報告もあり,生活の中での関節保護指導やスプリントの作製といった予防的アプローチは重要となる.拇指は手の機能の40%,全身機能の25%に関与すると言われており,手指の中でも重要な役割を担っている.また,RAにおいても手指変形の始まりは拇指変形の関与が考えられるなど,作業療法士(OT)としては治療においても着目すべき手指の一つである.今回,在宅生活を送っているRA患者における拇指変形の化粧動作への影響について調査及び検討したので報告する.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき,文面と口頭により対象者に同意を得た.なお,本研究に対して当院倫理委員会の承認を得ている.
【方法】
対象は当院外来通院中のRA患者50名(平均年齢62.1±12.8歳)とし,対象の両側拇指に変形の有無を確認した.拇指変形の無い群を変形無群,片側拇指に変形が有る場合に片側変形有群,両側拇指に変形が有る群を両側変形有群の3群に分け,統計学的に検証した.評価項目は患者背景に年齢と罹患年数,疾病因子にDAS28CRPとHAQ,身体機能因子に握力とロコモ25,健康関連因子にSF-12とした.統計学的解析にはKruskal-wallis検定を使用し,有意水準を5%未満とした.実施している化粧工程をスキンケア,メイクアップ,ポイントメイクの3つに細分化し,各化粧動作の工程数や化粧時間,化粧をした際の満足度や化粧頻度,化粧をしての外出希望の有無について確認した.対象の生活背景として就労の有無,仕事内容をインタビュー形式でアンケートを実施した.
【結果】
群間比較は罹患年数において変形無群と片側変形有群,片側変形有群と両側変形有群(いずれもP<0.05)で差が見られた.握力では変形無群と両側変形有群(P<0.01),片側変形有群と両側変形有群(P<0.05)で差が見られた.化粧工程ではポイントメイクの工程数に片側変形有群と両側変形有群(P<0.05)で差を認めた.化粧時間及び化粧をした際の満足度に関しては群間での差は認めなかった.化粧頻度については毎日と答えた人は変形無群が62%,片側変形有群が83%,両側変形有群が48%であった.化粧をしての外出希望については変形無群で62%,片側変形有群で83%,両手変形有群で64%であった.就労に関してはデスクワークが変形無群で23%,片側変形有群で25%,両側変形有群で8%であった.肉体労働では変形無群で31%,片側変形有群で30%,両手変形有群ではなかった.無職では変形無群で31%,片側変形有群で33%,両手変形群は88%とそのほとんどを占めていた.
【考察】
本研究の結果から,化粧に関する満足度は拇指変形の有無による有意差は認めなかったが,ポイントメイクの工程数に差がみられた.ポイントメイクの場合にはコンパクトな化粧品を使用する機会が多く,拇指変形があることによって化粧品の把持など動作の困難さが生じる可能性が考えられた.RA患者が就労している場合には,仕事内容によっては手指変形を助長する可能性もある.拇指変形や就労の有無に関わらずRA患者は,多くの人が化粧をして外出したいと考えており,OTは手指変形の予防や化粧道具を使いやすくするための自助具作製の他,動作指導などをすることが重要である.