[OD-5-1] 疼痛強度とQOLの関係に影響を与える要因
【はじめに】
股関節,膝関節の人工関節置換術後の患者で19-43%は慢性疼痛に移行する可能性があり,慢性疼痛は生活の質(Quality of life:以下,QOL)に影響を与える.また,疼痛は身体機能や心理的要因,感作との関連があることの報告もある.一方,疼痛とQOLの関係性に対する心理的要因や感作による媒介効果は明らかにされていない.
本報告では,回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)に入院した,人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:以下,THA)および人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:以下,TKA)後患者の,術後6カ月後の疼痛強度とQOLの関係に,心理的要因や中枢性感作症候群が媒介するか明らかにすることで,THAやTKA後患者のQOL向上の支援の一助とすることを目的とする.
【方法】
対象は2020年4月1日から2022年3月31日に福岡みらい病院の回リハ病棟に入院したTHAまたはTKA後の患者とした.除外基準は,入院時に術側下肢以外に著明な疼痛を有する者,退院後に反対側下肢の手術予定がある者,認知症の診断や明らかな精神疾患を呈し自分の意志を面接やアンケートに反映できない者,複数回のTHAまたはTKAを施行した者,回リハ病棟に術後から2か月以内の期間で退院した者,とした.
方法は,入院中に定期評価として行う,VAS(疼痛強度),HADS(不安抑うつ),PCS(破局的思考),PSEQ(自己効力感),CSI-9(中枢性感作症候群),EQ-5D-5L(QOL)の評価用紙を,術後6カ月時点に郵送して回答を依頼し,その評価結果を後方視的に分析する.統計解析は統計分析ソフトHADを用いて,独立変数をVAS,従属変数をEQ-5D-5L,媒介変数をHADS,PCS,PSEQ,CSI-9とした,ブートストラップ法による媒介分析を行う.ブートストラップ標本サイズは2000とし,有意水準は5%とする.本研究は福岡みらい病院の倫理審査委員会の承認を得て行い,患者には文書にて説明し同意を得て行った.
【結果】
47名に対して術後6カ月時点で評価用紙を郵送し,38名から回答を得た.38名の内訳として,平均年齢76歳,性別は男性6名,女性32名,術式はTHA24名,TKA14名であった. HADSを媒介変数とした際の直接効果は β=-0.262,p<0.02,間接効果はβ=-0.382,p<0.003であった.PCSを媒介変数とした際の直接効果は β=-0.148,p<0.364,間接効果はβ=-0.496,p<0.0004であった.PSEQを媒介変数とした際の直接効果は β=-0.48,p<0.00002,間接効果はβ=-0.163,p<0.076であった.CSI-9を媒介変数とした際の直接効果は β=-0.359,p<0.021,間接効果はβ=-0.285,p<0.011であった.
【考察】
THAまたはTKA後に回リハ病棟に入院した患者で,不安抑うつ症状と中枢性感作症候群を媒介変数とした際,術後6カ月の疼痛強度とQOLの関係には直接効果に加えて間接効果も認めたことから,部分媒介モデルを示している.破局的思考を媒介変数とした際には,間接効果のみ認めたことから完全媒介モデルを示している.
上記より,回リハ病棟に入院したTHA,TKA後患者の退院後のQOL向上の支援には,疼痛強度に加え,不安抑うつや中枢性感作症候群,破局的思考といった症状を考慮した支援が重要と考える.
股関節,膝関節の人工関節置換術後の患者で19-43%は慢性疼痛に移行する可能性があり,慢性疼痛は生活の質(Quality of life:以下,QOL)に影響を与える.また,疼痛は身体機能や心理的要因,感作との関連があることの報告もある.一方,疼痛とQOLの関係性に対する心理的要因や感作による媒介効果は明らかにされていない.
本報告では,回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)に入院した,人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:以下,THA)および人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:以下,TKA)後患者の,術後6カ月後の疼痛強度とQOLの関係に,心理的要因や中枢性感作症候群が媒介するか明らかにすることで,THAやTKA後患者のQOL向上の支援の一助とすることを目的とする.
【方法】
対象は2020年4月1日から2022年3月31日に福岡みらい病院の回リハ病棟に入院したTHAまたはTKA後の患者とした.除外基準は,入院時に術側下肢以外に著明な疼痛を有する者,退院後に反対側下肢の手術予定がある者,認知症の診断や明らかな精神疾患を呈し自分の意志を面接やアンケートに反映できない者,複数回のTHAまたはTKAを施行した者,回リハ病棟に術後から2か月以内の期間で退院した者,とした.
方法は,入院中に定期評価として行う,VAS(疼痛強度),HADS(不安抑うつ),PCS(破局的思考),PSEQ(自己効力感),CSI-9(中枢性感作症候群),EQ-5D-5L(QOL)の評価用紙を,術後6カ月時点に郵送して回答を依頼し,その評価結果を後方視的に分析する.統計解析は統計分析ソフトHADを用いて,独立変数をVAS,従属変数をEQ-5D-5L,媒介変数をHADS,PCS,PSEQ,CSI-9とした,ブートストラップ法による媒介分析を行う.ブートストラップ標本サイズは2000とし,有意水準は5%とする.本研究は福岡みらい病院の倫理審査委員会の承認を得て行い,患者には文書にて説明し同意を得て行った.
【結果】
47名に対して術後6カ月時点で評価用紙を郵送し,38名から回答を得た.38名の内訳として,平均年齢76歳,性別は男性6名,女性32名,術式はTHA24名,TKA14名であった. HADSを媒介変数とした際の直接効果は β=-0.262,p<0.02,間接効果はβ=-0.382,p<0.003であった.PCSを媒介変数とした際の直接効果は β=-0.148,p<0.364,間接効果はβ=-0.496,p<0.0004であった.PSEQを媒介変数とした際の直接効果は β=-0.48,p<0.00002,間接効果はβ=-0.163,p<0.076であった.CSI-9を媒介変数とした際の直接効果は β=-0.359,p<0.021,間接効果はβ=-0.285,p<0.011であった.
【考察】
THAまたはTKA後に回リハ病棟に入院した患者で,不安抑うつ症状と中枢性感作症候群を媒介変数とした際,術後6カ月の疼痛強度とQOLの関係には直接効果に加えて間接効果も認めたことから,部分媒介モデルを示している.破局的思考を媒介変数とした際には,間接効果のみ認めたことから完全媒介モデルを示している.
上記より,回リハ病棟に入院したTHA,TKA後患者の退院後のQOL向上の支援には,疼痛強度に加え,不安抑うつや中枢性感作症候群,破局的思考といった症状を考慮した支援が重要と考える.