[OD-5-5] 大腿骨近位部骨折者における生活行為工程分析表に基づく作業療法実践
~群内前後比較研究~
【はじめに】
先行研究では,大腿骨近位部骨折者に作業療法士(以下,OT)が関わることで運動機能や日常生活動作・手段的日常生活動作, Quality of life(以下,QOL)向上を認めた報告や,在院日数の短縮にも寄与したとの報告がされてきた.しかし,生活行為に対して具体的な支援戦略について言及した報告はなく,実際にどのような支援が生活行為に対して効果的なのか検証していく必要がある.生活行為工程分析表(以下,PADA-D)は,分習法的に生活行為支援を可能とする評価指標だが,認知症を対象としており,疾患を超えた臨床有用性は示されていない.本研究の目的は,亜急性期における大腿骨近位部骨折者を対象にPADA-Dに基づいた生活行為の分習法的支援の効果について明らかにすることである.
【対象】
研究対象者は,2023年4月から12月までの間に,A病院に入院した65歳以上の大腿骨近位部骨折の診断を受けた者とした.除外基準は,意思決定が困難な者,大腿骨近位部骨折以外に顕著な身体障害を有する者,せん妄を併発している者,脳血管疾患を有する者とした.
【方法】
研究デザインは,群内前後比較研究を用いた介入研究である.介入内容は,作業療法を週6回,1回40分〜60分,全体で30回程度を約1ヶ月実施し,その前後で評価を実施した.機能的自立度評価表(以下,FIM)と並行してPADA-D評価を用いて生活行為の観察評価を実施し,その後にクライエント(以下,CL)とPADA-Dの結果を見ながら現状を共有した.目標立案は,PADA-Dの評価結果をもとに目標とする生活行為を3つ程度設定し,工程および下位項目に焦点を当て分習法的に生活行為の練習を実施した.介入戦略は,作業療法介入プロセスモデルを参考に,回復モデル,習得モデル,代償モデルの3つとした.基本情報は,診療録より情報収集した.主要指標は,FIMと老研式活動能力指標 (以下,TMIG-IC),健康関連QOL(以下,SF-8),General Self-Efficacy Scale(以下,GSES)を測定した.副次的指標は,PADA-Dの得点に加え,30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30)などを測定した.統計解析は,改変Rコマンダーを用いた.正規性の検定を実施した後,各成果指標に対して対応のあるt検定あるいはWilcoxonの符号付き順位検定を実施した.本研究は,筆者所属の倫理委員会の承認(承認番号:22093)を受け実施した.
【結果】
17名(男性3名,女性14名)を解析対象とした.年齢平均は,82歳であった.目標に挙がった生活行為は,「移動」が11件で最も多く,次いで「排泄」6件,「更衣」6件,「掃除」1件であった.目標達成までの期間は,作業療法実施回数が平均17回であった.平均29回の作業療法の結果,FIMやCS-30,PADA-Dの満足度と遂行度,GSES,SF-8の全体的健康感,心の健康の項目で得点が有意に改善した.
【考察】
本研究結果では,FIMやCS-30などの客観的指標だけでなく,PADA-Dの満足度と遂行度やGSES,SF-8などの主観的指標にも改善を認めた.要因としては,PADA-DをCLとの目標立案および支援計画の手段として用いたことで,CLとの協業が促進されたこと,さらには構造化された分習法的支援による成功体験の積み重ねやすさも主観的指標の改善に寄与したと考えられた.これらの結果は,PADA-Dを用いた報告(田平ら,2018)や人工膝関節全置換術患者や高位脛骨骨切り術後患者を対象とした報告(Yuki H,2022,Hiraga Y,2021)と一部類似した結果であったことから,本研究は先行研究と同等程度の効果を得ることが示唆された.
先行研究では,大腿骨近位部骨折者に作業療法士(以下,OT)が関わることで運動機能や日常生活動作・手段的日常生活動作, Quality of life(以下,QOL)向上を認めた報告や,在院日数の短縮にも寄与したとの報告がされてきた.しかし,生活行為に対して具体的な支援戦略について言及した報告はなく,実際にどのような支援が生活行為に対して効果的なのか検証していく必要がある.生活行為工程分析表(以下,PADA-D)は,分習法的に生活行為支援を可能とする評価指標だが,認知症を対象としており,疾患を超えた臨床有用性は示されていない.本研究の目的は,亜急性期における大腿骨近位部骨折者を対象にPADA-Dに基づいた生活行為の分習法的支援の効果について明らかにすることである.
【対象】
研究対象者は,2023年4月から12月までの間に,A病院に入院した65歳以上の大腿骨近位部骨折の診断を受けた者とした.除外基準は,意思決定が困難な者,大腿骨近位部骨折以外に顕著な身体障害を有する者,せん妄を併発している者,脳血管疾患を有する者とした.
【方法】
研究デザインは,群内前後比較研究を用いた介入研究である.介入内容は,作業療法を週6回,1回40分〜60分,全体で30回程度を約1ヶ月実施し,その前後で評価を実施した.機能的自立度評価表(以下,FIM)と並行してPADA-D評価を用いて生活行為の観察評価を実施し,その後にクライエント(以下,CL)とPADA-Dの結果を見ながら現状を共有した.目標立案は,PADA-Dの評価結果をもとに目標とする生活行為を3つ程度設定し,工程および下位項目に焦点を当て分習法的に生活行為の練習を実施した.介入戦略は,作業療法介入プロセスモデルを参考に,回復モデル,習得モデル,代償モデルの3つとした.基本情報は,診療録より情報収集した.主要指標は,FIMと老研式活動能力指標 (以下,TMIG-IC),健康関連QOL(以下,SF-8),General Self-Efficacy Scale(以下,GSES)を測定した.副次的指標は,PADA-Dの得点に加え,30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30)などを測定した.統計解析は,改変Rコマンダーを用いた.正規性の検定を実施した後,各成果指標に対して対応のあるt検定あるいはWilcoxonの符号付き順位検定を実施した.本研究は,筆者所属の倫理委員会の承認(承認番号:22093)を受け実施した.
【結果】
17名(男性3名,女性14名)を解析対象とした.年齢平均は,82歳であった.目標に挙がった生活行為は,「移動」が11件で最も多く,次いで「排泄」6件,「更衣」6件,「掃除」1件であった.目標達成までの期間は,作業療法実施回数が平均17回であった.平均29回の作業療法の結果,FIMやCS-30,PADA-Dの満足度と遂行度,GSES,SF-8の全体的健康感,心の健康の項目で得点が有意に改善した.
【考察】
本研究結果では,FIMやCS-30などの客観的指標だけでなく,PADA-Dの満足度と遂行度やGSES,SF-8などの主観的指標にも改善を認めた.要因としては,PADA-DをCLとの目標立案および支援計画の手段として用いたことで,CLとの協業が促進されたこと,さらには構造化された分習法的支援による成功体験の積み重ねやすさも主観的指標の改善に寄与したと考えられた.これらの結果は,PADA-Dを用いた報告(田平ら,2018)や人工膝関節全置換術患者や高位脛骨骨切り術後患者を対象とした報告(Yuki H,2022,Hiraga Y,2021)と一部類似した結果であったことから,本研究は先行研究と同等程度の効果を得ることが示唆された.