[OE-1-2] 食事動作獲得を目指したBickerstaff脳幹脳炎患者への急性期作業療法
【序論】Bickerstaff脳幹脳炎(以下BBE)は眼球運動障害,運動失調,意識障害を呈する指定難病である.また,リハビリテーションの効果,予後予測等の報告が少なく,効果的な作業療法については不明である.今回,急性期から四肢・体幹失調に着目し,作業療法ではScale of the Assessment and Rating of Ataxia(以下SARA)を用いて身体機能評価を適宜行った.そして症状の改善に応じて環境調整と自助具の選定を行ったところ,箸での食事動作獲得に繋がったため報告する.尚,本報告は本人とご家族に同意を得ている.
【症例紹介】症例は30歳代男性,妻と子どもと3人暮らし,仕事はエンジニアとして勤務していた.X日に眼球運動障害,右下肢失調,右上肢筋力低下,構音障害認め精査入院となった.同日,意識障害が急激に出現し挿管・人工呼吸器管理となった.作業療法(以下OT)はX+15日に開始された.
【作業療法評価】X+26日頃より意識障害が改善し,GCS はE4VtM6,意思疎通は口唇の動きで表出可能となった.眼球運動は,水平・上下方への追視が不十分で,両目開眼時は複視を認めた.SARAは40点,MMT は両上肢3-4であった.ADL はFIM 31点(運動14点,認知17点)であった.本人の希望は「口からご飯を食べたい」であった.
【作業療法方針】BBEは未治療でも症状は4週間でピークを迎え,その後は徐々に回復に向かう(古賀,2022)とされている.そのため,短期的な合意目標を身辺ADL再獲得,OTでは食事動作自立とした.
【介入経過】X+30日より経口摂取開始となり,食事評価を実施した.SARAは36点,座位保持,指追い試験,鼻指鼻試験(以下FNF)は困難であった.前腕回内外運動のみ極めて拙劣であったが,太柄スプーンを把持でき,両上肢支持下で口唇までリーチ可能であった.そのため,ベッド座位で両肘下にクッション,太柄スプーンで環境調整した.しかし,数口摂取で全身疲労感著明で残りは食事介助を行った.X+36日にはSARAは20点,座位保持は可能となり,指追い試験・FNFは誤差5cm以内で規定回数可能,前腕回内外運動は拙劣であったが,スプーン把持可能だった.そのため,リクライニング車椅子とカットアウトテーブル,スプーンで環境調整した.この時期より,自己摂取可能だったが,全身疲労感著明で20分程度でベッドに戻っていた.X+42日にはSARAは11点,座位保持と前腕回内外運動は正常,指追い試験・FNFは誤差2cm程度,3食車椅子座位で摂取可能となった.両上肢はオーバーテーブルから離し,食器把持・持ち替え,スプーン操作可能であった.この時期より常食へ移行し,食具の固定性,操作性改善していたため,箸とスプーンの併用とした.X+50日にはSARAは4点,座位保持と前腕回内外運動は正常,指追い試験・FNFでわずかに誤差ある程度で,箸で食事摂取可能となった.
【結果】X+53日のGCSはE4V5M6,遠くを見た際のみ複視が残存,SARAは4点,MMTは4-5であった.ADLはFIMが114点(運動79点,認知35点)と病棟内自立していたが,本人の希望ありX+54日に回復期病院に転院となった.
【考察】BBEにおけるリハビリテーションの報告は少ない.しかし,運動失調は症状の程度・変化を評価し動作を総合的に判断すること(石川ら,2011)や介助を適切な箇所に最小限提供し,動作理解を得た上での反復動作練習は効果的という報告(後藤,2014)がある. 本症例においてもSARAを用いて運動失調を適宜評価し,段階的な環境調整と自助具の選定をしたことが,身体機能改善と食事動作獲得に有用であったと考える.
【症例紹介】症例は30歳代男性,妻と子どもと3人暮らし,仕事はエンジニアとして勤務していた.X日に眼球運動障害,右下肢失調,右上肢筋力低下,構音障害認め精査入院となった.同日,意識障害が急激に出現し挿管・人工呼吸器管理となった.作業療法(以下OT)はX+15日に開始された.
【作業療法評価】X+26日頃より意識障害が改善し,GCS はE4VtM6,意思疎通は口唇の動きで表出可能となった.眼球運動は,水平・上下方への追視が不十分で,両目開眼時は複視を認めた.SARAは40点,MMT は両上肢3-4であった.ADL はFIM 31点(運動14点,認知17点)であった.本人の希望は「口からご飯を食べたい」であった.
【作業療法方針】BBEは未治療でも症状は4週間でピークを迎え,その後は徐々に回復に向かう(古賀,2022)とされている.そのため,短期的な合意目標を身辺ADL再獲得,OTでは食事動作自立とした.
【介入経過】X+30日より経口摂取開始となり,食事評価を実施した.SARAは36点,座位保持,指追い試験,鼻指鼻試験(以下FNF)は困難であった.前腕回内外運動のみ極めて拙劣であったが,太柄スプーンを把持でき,両上肢支持下で口唇までリーチ可能であった.そのため,ベッド座位で両肘下にクッション,太柄スプーンで環境調整した.しかし,数口摂取で全身疲労感著明で残りは食事介助を行った.X+36日にはSARAは20点,座位保持は可能となり,指追い試験・FNFは誤差5cm以内で規定回数可能,前腕回内外運動は拙劣であったが,スプーン把持可能だった.そのため,リクライニング車椅子とカットアウトテーブル,スプーンで環境調整した.この時期より,自己摂取可能だったが,全身疲労感著明で20分程度でベッドに戻っていた.X+42日にはSARAは11点,座位保持と前腕回内外運動は正常,指追い試験・FNFは誤差2cm程度,3食車椅子座位で摂取可能となった.両上肢はオーバーテーブルから離し,食器把持・持ち替え,スプーン操作可能であった.この時期より常食へ移行し,食具の固定性,操作性改善していたため,箸とスプーンの併用とした.X+50日にはSARAは4点,座位保持と前腕回内外運動は正常,指追い試験・FNFでわずかに誤差ある程度で,箸で食事摂取可能となった.
【結果】X+53日のGCSはE4V5M6,遠くを見た際のみ複視が残存,SARAは4点,MMTは4-5であった.ADLはFIMが114点(運動79点,認知35点)と病棟内自立していたが,本人の希望ありX+54日に回復期病院に転院となった.
【考察】BBEにおけるリハビリテーションの報告は少ない.しかし,運動失調は症状の程度・変化を評価し動作を総合的に判断すること(石川ら,2011)や介助を適切な箇所に最小限提供し,動作理解を得た上での反復動作練習は効果的という報告(後藤,2014)がある. 本症例においてもSARAを用いて運動失調を適宜評価し,段階的な環境調整と自助具の選定をしたことが,身体機能改善と食事動作獲得に有用であったと考える.