[OF-1-3] 骨転移を来したがん患者の開始時及び終了時のADLの比較
【はじめに】
当院は標榜診療科数34,病床数550床の高度総合診療施設であり,国際医療協力,長寿医療の基幹施設である.特に,がん,循環器,内分泌/代謝,感覚器,精神疾患,骨/運動器疾患,及び難病,救命救急医療に力を入れるとともに,骨髄移植をはじめとする高度先進医療に積極的に取り組んでいる.リハビリテーション科では多岐にわたる疾患の処方があり,難渋するケースも少なくない.特にがん患者の場合,当院での介入期間中,自立した日常生活レベルに至ることが困難である.そこで,作業療法処方において,がん患者リハビリテーション(以下,がんリハ)に焦点を絞り,骨転移のない患者(以下,非骨転移群)と骨転移を来した患者(以下,骨転移群)の作業療法開始時及び終了時のADLを比較し検討を行なったのでここに報告する.また,骨転移群においては転帰と生存率を調査した.
【方法】
対象は2022.2.1~2024.1.31に当院入院患者のうち,がんリハで処方され,介入した患者(以下,全対象者)を抽出した.診療録より後方視的に調査し,非骨転移群,骨転移群の開始時と終了時のBarthel Index (以下,BI)を比較した.さらに骨転移群は作業療法開始時と終了時のBI各項目を比較した.統計処理はWilcoxon符号付順位和検定を行い,有意水準は0.05未満とした.
【結果】
作業療法処方数2059名,全対象者数163名.非骨転移群117名,骨転移群46名.骨転移群の詳細ついては以下に示す.年齢:30~93歳.性別:男性27名,女性19名.作業療法介入期間:1~56日.原発巣:胃癌7名,前立腺癌7名,膀胱癌6名,腎盂癌5名,乳癌6名,肺癌4名,子宮癌4名,外陰癌2名,血液癌3名,食道癌1名,原発巣不明1名.BI:中央値(四分位範囲).非骨転移群BI:開始時50(25-75)点,終了時70(35-85)点.転移群BI:開始時30(10-70)点,終了時35(5-75)点.非骨転移群は介入によって改善を有意に認めた.しかし骨転移群には改善に有意差が認められなかった.骨転移群BI各項目において,開始時と終了時に有意差はなかった.骨転移群の退院時の転帰は自宅退院16名,転院26名,死亡3名,中止1名であり,調査時期間内の生存は32.6%だった.
【考察】
BIでは40点未満は全介助と言われる.今回の結果より骨転移群の介助量が多いことは明らかで,全項目において一部介助以上を要している.特に入浴,歩行,階段昇降では中央値が0点と非常に低い結果だった.また痛みが強い動作の場合は服薬管理も必要となる.作業療法では介入時間をなるべく固定化し,鎮痛剤の服薬時間を逆算して設けてもらったり,疼痛が落ち着きやすい時間帯を選び介入したりする工夫も行なった.疼痛コントロールが上手く行われている場合は,移乗や自重での運動が可能となるケースもある.しかし患部の負担を考慮し安静度が設けてある場合や疼痛が強い場合は,十分な運動が困難となる.そういった場合,ベッド上生活を強いられることで,意欲低下や食思低下などがあり,今回の様な結果につながりやすいと考えられた.そのため,自宅に帰りたくても,当人や介護者を考慮し転院を余儀なくされる患者も多かった.その中でも,自宅退院を希望される場合は,福祉用具の選定や介助方法,動作可能と思われる範囲などを本人及び家族に向け指導を行なった.今回の後方視的研究を元に,今後の介入方法を振り返り,ADLのみならずQOLに繋げられるよう配慮して取り組んでいきたい.
【倫理的配慮】
本調査は,ヘルシンキ宣言に沿って診療録より情報を抽出した.また,研究の趣旨,個人情報の取扱いに関して説明を行い研究の協力を得た.
【COI】
演題発表に関連し,開示すべきCOI 関係にある企業等はない.
当院は標榜診療科数34,病床数550床の高度総合診療施設であり,国際医療協力,長寿医療の基幹施設である.特に,がん,循環器,内分泌/代謝,感覚器,精神疾患,骨/運動器疾患,及び難病,救命救急医療に力を入れるとともに,骨髄移植をはじめとする高度先進医療に積極的に取り組んでいる.リハビリテーション科では多岐にわたる疾患の処方があり,難渋するケースも少なくない.特にがん患者の場合,当院での介入期間中,自立した日常生活レベルに至ることが困難である.そこで,作業療法処方において,がん患者リハビリテーション(以下,がんリハ)に焦点を絞り,骨転移のない患者(以下,非骨転移群)と骨転移を来した患者(以下,骨転移群)の作業療法開始時及び終了時のADLを比較し検討を行なったのでここに報告する.また,骨転移群においては転帰と生存率を調査した.
【方法】
対象は2022.2.1~2024.1.31に当院入院患者のうち,がんリハで処方され,介入した患者(以下,全対象者)を抽出した.診療録より後方視的に調査し,非骨転移群,骨転移群の開始時と終了時のBarthel Index (以下,BI)を比較した.さらに骨転移群は作業療法開始時と終了時のBI各項目を比較した.統計処理はWilcoxon符号付順位和検定を行い,有意水準は0.05未満とした.
【結果】
作業療法処方数2059名,全対象者数163名.非骨転移群117名,骨転移群46名.骨転移群の詳細ついては以下に示す.年齢:30~93歳.性別:男性27名,女性19名.作業療法介入期間:1~56日.原発巣:胃癌7名,前立腺癌7名,膀胱癌6名,腎盂癌5名,乳癌6名,肺癌4名,子宮癌4名,外陰癌2名,血液癌3名,食道癌1名,原発巣不明1名.BI:中央値(四分位範囲).非骨転移群BI:開始時50(25-75)点,終了時70(35-85)点.転移群BI:開始時30(10-70)点,終了時35(5-75)点.非骨転移群は介入によって改善を有意に認めた.しかし骨転移群には改善に有意差が認められなかった.骨転移群BI各項目において,開始時と終了時に有意差はなかった.骨転移群の退院時の転帰は自宅退院16名,転院26名,死亡3名,中止1名であり,調査時期間内の生存は32.6%だった.
【考察】
BIでは40点未満は全介助と言われる.今回の結果より骨転移群の介助量が多いことは明らかで,全項目において一部介助以上を要している.特に入浴,歩行,階段昇降では中央値が0点と非常に低い結果だった.また痛みが強い動作の場合は服薬管理も必要となる.作業療法では介入時間をなるべく固定化し,鎮痛剤の服薬時間を逆算して設けてもらったり,疼痛が落ち着きやすい時間帯を選び介入したりする工夫も行なった.疼痛コントロールが上手く行われている場合は,移乗や自重での運動が可能となるケースもある.しかし患部の負担を考慮し安静度が設けてある場合や疼痛が強い場合は,十分な運動が困難となる.そういった場合,ベッド上生活を強いられることで,意欲低下や食思低下などがあり,今回の様な結果につながりやすいと考えられた.そのため,自宅に帰りたくても,当人や介護者を考慮し転院を余儀なくされる患者も多かった.その中でも,自宅退院を希望される場合は,福祉用具の選定や介助方法,動作可能と思われる範囲などを本人及び家族に向け指導を行なった.今回の後方視的研究を元に,今後の介入方法を振り返り,ADLのみならずQOLに繋げられるよう配慮して取り組んでいきたい.
【倫理的配慮】
本調査は,ヘルシンキ宣言に沿って診療録より情報を抽出した.また,研究の趣旨,個人情報の取扱いに関して説明を行い研究の協力を得た.
【COI】
演題発表に関連し,開示すべきCOI 関係にある企業等はない.