[OH-1-5] ストレス対処法を獲得し体調を崩さずに自宅で猫の世話が再開できた事例
~精神科スーパー救急病棟での復職に向けたMTDLP 実践~
【はじめに】今回,精神科スーパー救急病棟(以下,救急病棟)で夫と共依存関係にある統合失調症のA氏と関わる機会を得た.A氏は就労を機に夫との関係が悪化,うまくストレス対処できず抑鬱,身体症状が出現し入院に至った.MTDLPを用いてA氏の特徴を踏まえチームで関わった結果,約3ヶ月後ストレス対処法を獲得し自宅で体調を崩さずに猫の世話を再開できたため,以下に報告する.尚,本報告に際し本人の承諾を得ている.
【事例紹介】40代女性,統合失調症.幼い頃両親が離婚祖母に育てられる.高校卒業後介護職として働くがX年,上司から「仕事が遅い」と言われ混乱,発症.X+1年,精神科デイケア(以下,DC)利用開始.X+8年,同じDC利用者と結婚.専業主婦として家事を担っていた.夫が猫アレルギーのため飼い猫の世話は欠かさなかった.X+9年,夫と同じ鮮魚店のパートを始めDC疎遠となり退所.徐々に夫と口論が増え抑鬱的になり,手足の痺れも出現し「死にたい」と訴え,主治医より夫婦の共依存関係も指摘され任意入院となる.
【作業療法評価】心身機能は,FIQ77.QIDS-J:16点,睡眠2時間程で全身の痛みが出現.活動と参加は,食事や排泄,入浴以外自室で臥床.強みは,コミュニケーション良好.初回面接で「夫も病気があるので心配,早く退院して復職したい」と希望したが生活行為の聞き取りでは「実は猫が気になって,復職前に猫の世話がしたい」と述べ,夫も「猫の世話が困っている.早く帰って来てほしい」と夫婦共に自宅生活と猫の世話の再開を希望した.心身機能の改善により猫の世話は可能となるが,共依存関係の理解の低さやストレス対処の苦手さから安定した自宅生活の継続と復職に支障を来すと予測された.チームカンファレンスでの予後予測と夫婦の意向を考慮し,合意目標を3ヵ月後「自宅で体調を崩さず猫の世話ができる」とした.自己評価は実行度,満足度共に1/10点.FAI:13点.であった.
【経過および結果】
基本的プログラム:精神的安定と生活リズムの改善,全身持久力向上に向け手工芸とレクを実施.簡単な塗り絵から開始し徐々に手の痺れは減少,3週目から「これが楽しみ」と毎朝起床できるようになった.また,レクにも参加し徐々に抑鬱は軽減した.
応用的プログラム:共依存関係の理解とストレス対処に向けて心理教育とクライシスプランの作成を実施. 心理教育はCPがA氏の理解に合わせて進行し,内容をNsと振り返った.並行してOTとクライシスプランを作成し,「これを見れば対処がわかる」と発言が聞かれた.
社会適応プログラム:退院に向けて外出外泊,退院時カンファレンスを実施.日帰り外出の回数を漸増的に取り入れ徐々に外泊を増やした.クライシスプランを活用し,猫の世話と家事を行いながら夫と過ごすことができた.退院に向けて,カンファレンスを実施しDCに支援内容を引き継いだ.約3ヶ月の介入の結果,生活リズムが整いストレス対処法を獲得し自宅退院となった.合意目標は達成し訪問看護とDCを再開し,現在復職準備を行っている. QIDS-J:7点,自己評価の実行度・満足度共に1/9,FAIも20点と向上した.
【考察】今回MTDLPを用いて聴取し,猫の世話は夫婦にとって重要な生活行為であり,それを合意目標にできたことと,共依存関係の理解の低さ,ストレス対処の苦手さなど特徴を踏まえ他職種と共有し支援できたことで結果に繋がった.今後,復職に向けて夫婦への共依存関係の理解の促しが課題でありDCに申し送っている.救急病棟は限られた期間や環境下での支援になるが,対象者や家族その他の支援者との関わりを大切にし,その人らしい生活を支援し繋げていくことが重要と考える.
【事例紹介】40代女性,統合失調症.幼い頃両親が離婚祖母に育てられる.高校卒業後介護職として働くがX年,上司から「仕事が遅い」と言われ混乱,発症.X+1年,精神科デイケア(以下,DC)利用開始.X+8年,同じDC利用者と結婚.専業主婦として家事を担っていた.夫が猫アレルギーのため飼い猫の世話は欠かさなかった.X+9年,夫と同じ鮮魚店のパートを始めDC疎遠となり退所.徐々に夫と口論が増え抑鬱的になり,手足の痺れも出現し「死にたい」と訴え,主治医より夫婦の共依存関係も指摘され任意入院となる.
【作業療法評価】心身機能は,FIQ77.QIDS-J:16点,睡眠2時間程で全身の痛みが出現.活動と参加は,食事や排泄,入浴以外自室で臥床.強みは,コミュニケーション良好.初回面接で「夫も病気があるので心配,早く退院して復職したい」と希望したが生活行為の聞き取りでは「実は猫が気になって,復職前に猫の世話がしたい」と述べ,夫も「猫の世話が困っている.早く帰って来てほしい」と夫婦共に自宅生活と猫の世話の再開を希望した.心身機能の改善により猫の世話は可能となるが,共依存関係の理解の低さやストレス対処の苦手さから安定した自宅生活の継続と復職に支障を来すと予測された.チームカンファレンスでの予後予測と夫婦の意向を考慮し,合意目標を3ヵ月後「自宅で体調を崩さず猫の世話ができる」とした.自己評価は実行度,満足度共に1/10点.FAI:13点.であった.
【経過および結果】
基本的プログラム:精神的安定と生活リズムの改善,全身持久力向上に向け手工芸とレクを実施.簡単な塗り絵から開始し徐々に手の痺れは減少,3週目から「これが楽しみ」と毎朝起床できるようになった.また,レクにも参加し徐々に抑鬱は軽減した.
応用的プログラム:共依存関係の理解とストレス対処に向けて心理教育とクライシスプランの作成を実施. 心理教育はCPがA氏の理解に合わせて進行し,内容をNsと振り返った.並行してOTとクライシスプランを作成し,「これを見れば対処がわかる」と発言が聞かれた.
社会適応プログラム:退院に向けて外出外泊,退院時カンファレンスを実施.日帰り外出の回数を漸増的に取り入れ徐々に外泊を増やした.クライシスプランを活用し,猫の世話と家事を行いながら夫と過ごすことができた.退院に向けて,カンファレンスを実施しDCに支援内容を引き継いだ.約3ヶ月の介入の結果,生活リズムが整いストレス対処法を獲得し自宅退院となった.合意目標は達成し訪問看護とDCを再開し,現在復職準備を行っている. QIDS-J:7点,自己評価の実行度・満足度共に1/9,FAIも20点と向上した.
【考察】今回MTDLPを用いて聴取し,猫の世話は夫婦にとって重要な生活行為であり,それを合意目標にできたことと,共依存関係の理解の低さ,ストレス対処の苦手さなど特徴を踏まえ他職種と共有し支援できたことで結果に繋がった.今後,復職に向けて夫婦への共依存関係の理解の促しが課題でありDCに申し送っている.救急病棟は限られた期間や環境下での支援になるが,対象者や家族その他の支援者との関わりを大切にし,その人らしい生活を支援し繋げていくことが重要と考える.