[OH-3-2] 物質使用障害者の外来作業療法プログラムへの継続参加者の特徴と参加効果
【序論】物質使用障害(SUD; Substance Use Disorders)者の標準的治療プログラムに認知行動療法をベースとした薬物・アルコール依存症克服のためのプログラム(SMARPP)がある. しかし, SMARPPへの参加に至らない患者が一定数存在することが問題となっていたため, 外来作業療法プログラム「Real生活プログラム(リア活)」を2018年に開発した(村田ら2020). リア活は, ハームリダクション心理療法の概念を踏襲し薬物使用の適応的/不適応的な面の両価性に共感し再発要因への介入を治療の主体としていないことが特徴で,当事者が大切にする気持ちを肯定的に捉え, 自身の希望する健康的な“生活”に近づくことを目的としている(山元ら2023). ただ, リア活参加継続に関連する特徴や参加継続による効果検証は十分でない.
【目的】リア活参加者の継続と関連する特徴や参加継続の効果を明らかにすることを目的とした.
【方法】対象は, 2020/2~2023/7にリア活が処方された通院SUD者とした. 取得した個人因子データは, 年齢, 性別, 教育年数, 居住形態, 生活保護受給, 現職業, 診断名, 発症年齢, 主使用薬物の種類, 重複障害, 投薬状況, 診察継続, 治療・社会資源への参加経験であった. 同様にリア活の効果指標としてクールごとの参加数, COPM遂行度/満足度, 自尊感情尺度 (RSES-J), 失体感症尺度(STSS), 渇望度/人とつながっている感覚(VAS)を抽出した. 解析は, 研究参加者のリア活参加率の中央値で2群に分類して個人因子データは, Fisher正確確率検定, 連続値はt検定を用いて群間差を検証した. また, 効果指標が2時点取得できた参加継続群に対しWilcoxon符号付き順位検定にて参加効果を検証した.解析はIBM SPSS Statistics 29で実施し, 有意水準を5%未満とした. なお, 本研究は国立精神・神経医療研究センターの倫理委員会の承認を得た(A2023-085).
【結果】対象は55名(平均年齢:36.2±9.9歳, 性別:男性30名(54.5%), 主診断:ICD-10 F1 40名(72.7%), 重複障害有:48名(88.9%), 主依存薬物:処方薬/市販薬:21名(38.2%), 生保受給:27名(50.9%), 無職:44名(80.0%))であった. リア活参加率の中央値は47%(IQR = 32)で参加継続群(参加率47%以上)は28名(50.9%)であった.参加継続群と参加継続困難群の個人因子データを比較した結果, 継続群が年齢が高い傾向を示し(継続群:38.6±10.4 歳, 困難群:33.7±8.8歳, t(53) = 1.883, p = 0.065, Cohen’s d = 9.657),自助グループ参加率が有意に高かった(継続群:39.3%, 困難群:11.1%, χ2 = 5.75, p = 0.029, Cramer’s V = 0.323). 継続群18名の参加効果は, 作業遂行満足度のみ有意な改善 (z = 2.103, p = 0.035, dz = 0.612)が示され, 人とつながっている感覚は改善傾向を示した(z = 1.894, p = 0.058, dz = 0.496)).他の参加効果項目は差が検出されなかった(all p > 0.26).
【考察】外来作業療法プログラム「リア活」の参加率は, 年齢が高く自助グループへの参加経験がある方が高いことが示唆された. 自助グループ参加への価値を見いだし行動した経験がある者は, 経験がない者より人や場に“つながる必要性”を認識している可能性が考えられた. リア活に継続参加した効果として“作業遂行への満足度”の改善が示された. 作業遂行度自体の改善は認めなかったことから, 作業を上手に遂行できるまでには至っていないが, できない自分も含めて受け入れて満足感が向上したと示唆された. また, リア活は“自分一人だけじゃない”という中核的な概念に支えられ自分自身に向き合うことができる“安心で温かな場所”であるとされている(森田2021). このリア活の概念が“人とつながっている感覚”の改善傾向に影響した可能性が考えられた.
【目的】リア活参加者の継続と関連する特徴や参加継続の効果を明らかにすることを目的とした.
【方法】対象は, 2020/2~2023/7にリア活が処方された通院SUD者とした. 取得した個人因子データは, 年齢, 性別, 教育年数, 居住形態, 生活保護受給, 現職業, 診断名, 発症年齢, 主使用薬物の種類, 重複障害, 投薬状況, 診察継続, 治療・社会資源への参加経験であった. 同様にリア活の効果指標としてクールごとの参加数, COPM遂行度/満足度, 自尊感情尺度 (RSES-J), 失体感症尺度(STSS), 渇望度/人とつながっている感覚(VAS)を抽出した. 解析は, 研究参加者のリア活参加率の中央値で2群に分類して個人因子データは, Fisher正確確率検定, 連続値はt検定を用いて群間差を検証した. また, 効果指標が2時点取得できた参加継続群に対しWilcoxon符号付き順位検定にて参加効果を検証した.解析はIBM SPSS Statistics 29で実施し, 有意水準を5%未満とした. なお, 本研究は国立精神・神経医療研究センターの倫理委員会の承認を得た(A2023-085).
【結果】対象は55名(平均年齢:36.2±9.9歳, 性別:男性30名(54.5%), 主診断:ICD-10 F1 40名(72.7%), 重複障害有:48名(88.9%), 主依存薬物:処方薬/市販薬:21名(38.2%), 生保受給:27名(50.9%), 無職:44名(80.0%))であった. リア活参加率の中央値は47%(IQR = 32)で参加継続群(参加率47%以上)は28名(50.9%)であった.参加継続群と参加継続困難群の個人因子データを比較した結果, 継続群が年齢が高い傾向を示し(継続群:38.6±10.4 歳, 困難群:33.7±8.8歳, t(53) = 1.883, p = 0.065, Cohen’s d = 9.657),自助グループ参加率が有意に高かった(継続群:39.3%, 困難群:11.1%, χ2 = 5.75, p = 0.029, Cramer’s V = 0.323). 継続群18名の参加効果は, 作業遂行満足度のみ有意な改善 (z = 2.103, p = 0.035, dz = 0.612)が示され, 人とつながっている感覚は改善傾向を示した(z = 1.894, p = 0.058, dz = 0.496)).他の参加効果項目は差が検出されなかった(all p > 0.26).
【考察】外来作業療法プログラム「リア活」の参加率は, 年齢が高く自助グループへの参加経験がある方が高いことが示唆された. 自助グループ参加への価値を見いだし行動した経験がある者は, 経験がない者より人や場に“つながる必要性”を認識している可能性が考えられた. リア活に継続参加した効果として“作業遂行への満足度”の改善が示された. 作業遂行度自体の改善は認めなかったことから, 作業を上手に遂行できるまでには至っていないが, できない自分も含めて受け入れて満足感が向上したと示唆された. また, リア活は“自分一人だけじゃない”という中核的な概念に支えられ自分自身に向き合うことができる“安心で温かな場所”であるとされている(森田2021). このリア活の概念が“人とつながっている感覚”の改善傾向に影響した可能性が考えられた.