[OH-3-3] 拒否的な態度に苦慮した高齢者アルコール依存症患者への介入
~孤独に対する精神科デイケアでの断酒に向けた関わり~
【序論】高齢化が進む現代において,退職や離別を経て人との繋がりが希薄となった独居高齢者が,孤独や不安から酒量が増え,アルコール依存症と診断される症例は少なくない.今回,断酒目的にデイケア(以下DC)を導入するも,習慣的な飲酒や拒否的な態度によって介入に苦慮した症例A氏を担当した.DC利用の中で,A氏にとってDCが居場所となった事で,自助グループ(以下SHG)に参加し,断酒に向けた行動をとるように変化した為,本人の同意を得て,以下に報告する.
【症例】A氏60代後半男性.アルコール依存症.20代で大工として稼働.30代で習慣飲酒.60代前半で離婚し独居.肺気胸で退職し生活保護受給.焼酎をストレートで飲むようになり,B病院より酒の問題を指摘されX年に当院入院.入院中からDC導入も,退院後すぐに再飲酒し習慣化.連絡なくDCを休む事も多いため,安定した通所を促し,週5日のDC利用となる.
【経過】第一期 拒否的な態度が目立つ時期(X+2年8月~)OTRとの面談を「やりたくない」と拒否し,依存症ミーティングも避けるため,休まず通所する事を改めて促す.メンバーとの交流が増え,昼休みにトランプを楽しむも,大声や場にそぐわない冗談が多く,適宜声掛けを要する.「酒はちょうどよく飲めている」と言うため,断酒の必要性を伝えると「だったらもう(DCに)来ないぞ」と話す.身体への影響も感じていないと話すため,血液データの共有を提案.第二期 振る舞いに気を付ける事を共有する時期(X+3年12月~)血液検査で肝機能が異常値となり,飲酒が心身へ悪影響を及ぼしている事を共有.飲酒の習慣化について「みんなに悪い気はする」「奥底では酒をやめようと思っている」と話し,DC前日には飲酒しないと決める.ミーティングでは「ここがなかったら,どうなっていたか分からない」「酒は我慢するしかない」と話すようになる.OTRからDCでは他メンバーに配慮する事や気持ちを正直に話す事,振る舞いに気を付ける事が必要と伝える.第三期 SHGへの通所を決めた時期(X+4年10月~)場にそぐわない態度を見せるA氏に,OTRが「なぜDCに来ているのか」と利用目的を確認すると,通所中断を迫られたように感じたとDCを休む.他スタッフからOTRに思いを正直に伝えてみるよう提案.OTRはA氏の回復のためにDCを継続して欲しい思いを伝えると,A氏も「本当はDCに来たい」と話し,改めて断酒を目標としたDC利用を提案.断酒に向けた行動としてSHGの通所を始める.
【結果】SHGの参加を重ね「あそこにいったら飲むわけにはいかない」と断酒を継続.DCでは作品展で大賞を獲得すると,他メンバーが投票してくれた事が「嬉しかったんだ」と思いを素直に表現する.
【考察】A氏は離婚や離職から孤独や不安を感じる生活の中で,メンバーとの交流が楽しみとなった事で,DCは孤独を癒す居場所となっていったと考える.一方で,酒を手放せない中,飲酒問題を突きつけるOTRに対し,A氏は自己防衛の為に拒否的な態度を表し,衝突が絶えなかったと推測する.OTRはA氏の対応に苦慮しつつ,場にそぐわない振る舞いを,他者から受け入れられないのではと思う不安と捉え,思いを正直に話す事を提案.信頼するメンバーの中で正直になる事は,酒を必要としてきたA氏が自身の心理面と向き合う事になると考えた.また,断酒に難しさを感じるA氏には,断酒者から受け入れられる体験や,断酒を身近に感じる事が必要と考え,SHGの通所を提案.A氏はDCという新しい居場所と,SHGへの参加で人との温かい繋がりを実感し,思いを素直に表す事を繰り返す中で,断酒の継続を実現しているのだと考える.
【症例】A氏60代後半男性.アルコール依存症.20代で大工として稼働.30代で習慣飲酒.60代前半で離婚し独居.肺気胸で退職し生活保護受給.焼酎をストレートで飲むようになり,B病院より酒の問題を指摘されX年に当院入院.入院中からDC導入も,退院後すぐに再飲酒し習慣化.連絡なくDCを休む事も多いため,安定した通所を促し,週5日のDC利用となる.
【経過】第一期 拒否的な態度が目立つ時期(X+2年8月~)OTRとの面談を「やりたくない」と拒否し,依存症ミーティングも避けるため,休まず通所する事を改めて促す.メンバーとの交流が増え,昼休みにトランプを楽しむも,大声や場にそぐわない冗談が多く,適宜声掛けを要する.「酒はちょうどよく飲めている」と言うため,断酒の必要性を伝えると「だったらもう(DCに)来ないぞ」と話す.身体への影響も感じていないと話すため,血液データの共有を提案.第二期 振る舞いに気を付ける事を共有する時期(X+3年12月~)血液検査で肝機能が異常値となり,飲酒が心身へ悪影響を及ぼしている事を共有.飲酒の習慣化について「みんなに悪い気はする」「奥底では酒をやめようと思っている」と話し,DC前日には飲酒しないと決める.ミーティングでは「ここがなかったら,どうなっていたか分からない」「酒は我慢するしかない」と話すようになる.OTRからDCでは他メンバーに配慮する事や気持ちを正直に話す事,振る舞いに気を付ける事が必要と伝える.第三期 SHGへの通所を決めた時期(X+4年10月~)場にそぐわない態度を見せるA氏に,OTRが「なぜDCに来ているのか」と利用目的を確認すると,通所中断を迫られたように感じたとDCを休む.他スタッフからOTRに思いを正直に伝えてみるよう提案.OTRはA氏の回復のためにDCを継続して欲しい思いを伝えると,A氏も「本当はDCに来たい」と話し,改めて断酒を目標としたDC利用を提案.断酒に向けた行動としてSHGの通所を始める.
【結果】SHGの参加を重ね「あそこにいったら飲むわけにはいかない」と断酒を継続.DCでは作品展で大賞を獲得すると,他メンバーが投票してくれた事が「嬉しかったんだ」と思いを素直に表現する.
【考察】A氏は離婚や離職から孤独や不安を感じる生活の中で,メンバーとの交流が楽しみとなった事で,DCは孤独を癒す居場所となっていったと考える.一方で,酒を手放せない中,飲酒問題を突きつけるOTRに対し,A氏は自己防衛の為に拒否的な態度を表し,衝突が絶えなかったと推測する.OTRはA氏の対応に苦慮しつつ,場にそぐわない振る舞いを,他者から受け入れられないのではと思う不安と捉え,思いを正直に話す事を提案.信頼するメンバーの中で正直になる事は,酒を必要としてきたA氏が自身の心理面と向き合う事になると考えた.また,断酒に難しさを感じるA氏には,断酒者から受け入れられる体験や,断酒を身近に感じる事が必要と考え,SHGの通所を提案.A氏はDCという新しい居場所と,SHGへの参加で人との温かい繋がりを実感し,思いを素直に表す事を繰り返す中で,断酒の継続を実現しているのだと考える.