[OH-3-4] 統合失調症患者の主観的健康状態評価をもとに訪問作業療法介入をする意義
【はじめに】
統合失調症患者に対する訪問作業療法(以下OT)において訪問ごとに患者による主観的健康状態を取り上げ,生活の気がかり事への対処を共に考え,共同作業を実施する取り組みをした.複数事例から訪問ごとに主観的健康状態を取り上げることの重要性について検討したので報告する.
【方法】
2023年1月時点で月1回30分以上の頻度にて当センターの訪問OTを受けた統合失調症患者を対象にした複数事例の研究.精神科リハビリテーション実施計画書の更新作成時を開始時とし,訪問ごとに主観的健康状態を取り上げ,生活の気がかり事への対処を対象と共に考え,共同作業を実施した.6カ月後の目標再設定時をフォローアップ時とし,機能の全体的評定尺度(以下GAF)得点と主観的健康状態(以下BsHAS)総得点,精神障害者社会生活評価尺度(以下LASMI)の下位尺度平均得点,生活行為向上マネジメントによるOT目標の実行度と満足度を,ウィルコクソン符号順位検定にて開始時とフォローアップ時を比較した.対象者から本研究への参加に当たり書面で同意を得た.
【結果】
該当者8人のうち書面で同意を得た7人(男性6人,女性1人)を対象とした.開始時の平均年齢は56.9±7.2歳, GAF値は50.7±5.9点,BsHAS総得点は8.9±4.9点,LASMI下位尺度とその平均得点はD(日常生活)1.7±0.7点,I(対人関係)1.5±0.7点,W(労働または課題の遂行)1.7±0.5点,E(持続性・安定性)4.7±0.8点,R(自己認識)2.3±1.9点,OT目標の実行度と満足度はともに5.2±2.5点であった.比較検定の結果,LASMIのD,I,W下位尺度得点がp値0.05未満で有意に改善し,その効果サイズ(Cohenのd値)は順に0.43,0.35,0.35であった.対象者はセルフモニタリングや将棋,散歩,庭掃除,書字練習など作業療法士との共同作業をした.OT目標の実行度と満足度が向上した者は2人に留まったが,自治会サークル活動への参加や就労継続支援B型への通所を開始した者が含まれた.
事例紹介
A氏,50歳代,男性,統合失調症.一人暮らし.GAF54点,BsHASでは常に低値であった.生活リズムの改善を目的に週1回50分の頻度で対話と散歩を実施した.LASMIのI尺度得点が1.4点から0.7点に,W尺度得点が1.9点から1.2点に改善した.A氏は就労継続支援B型内職作業に加え,通所を始めるまでに至った.
B氏,50歳代,男性,統合失調症.一人暮らし.GAF56点,BsHASでは人疲れ感が認められた.生活リズムの改善を目的に2週に1回,50分の頻度で対話と将棋をした.LASMIのD尺度得点が1.7点から1.5点に,I尺度得点が1.4点から0.8点に,W尺度得点が1.4点から1.3点に改善した.自治会の将棋サークルを探し出し,月に1回の頻度で参加するに至った.
C氏,50歳代,男性,統合失調症.一人暮らし.ひきこもりと自殺企図歴あり.GAF55点,BsHASでは人疲れ感が認められた.ストレス対処技能の獲得を目的に週1回50分の頻度で対話と庭作業をした.LASMIのD尺度得点が1.3点から1.1点に,I尺度得点が0.9点から0.7点に,W尺度得点が1.3点から1.0点に改善した.ガイドヘルパーとの関係が良好となり,定期的な外出を持続した.
【考察】
統合失調症患者に対して主観的健康状態を把握しながらOT介入することにより,対象者の身体感覚や健康状態に意識を向けさせることに加え,生活における身辺処理や対人関係,生活行為を促進する可能性がある.
統合失調症患者に対する訪問作業療法(以下OT)において訪問ごとに患者による主観的健康状態を取り上げ,生活の気がかり事への対処を共に考え,共同作業を実施する取り組みをした.複数事例から訪問ごとに主観的健康状態を取り上げることの重要性について検討したので報告する.
【方法】
2023年1月時点で月1回30分以上の頻度にて当センターの訪問OTを受けた統合失調症患者を対象にした複数事例の研究.精神科リハビリテーション実施計画書の更新作成時を開始時とし,訪問ごとに主観的健康状態を取り上げ,生活の気がかり事への対処を対象と共に考え,共同作業を実施した.6カ月後の目標再設定時をフォローアップ時とし,機能の全体的評定尺度(以下GAF)得点と主観的健康状態(以下BsHAS)総得点,精神障害者社会生活評価尺度(以下LASMI)の下位尺度平均得点,生活行為向上マネジメントによるOT目標の実行度と満足度を,ウィルコクソン符号順位検定にて開始時とフォローアップ時を比較した.対象者から本研究への参加に当たり書面で同意を得た.
【結果】
該当者8人のうち書面で同意を得た7人(男性6人,女性1人)を対象とした.開始時の平均年齢は56.9±7.2歳, GAF値は50.7±5.9点,BsHAS総得点は8.9±4.9点,LASMI下位尺度とその平均得点はD(日常生活)1.7±0.7点,I(対人関係)1.5±0.7点,W(労働または課題の遂行)1.7±0.5点,E(持続性・安定性)4.7±0.8点,R(自己認識)2.3±1.9点,OT目標の実行度と満足度はともに5.2±2.5点であった.比較検定の結果,LASMIのD,I,W下位尺度得点がp値0.05未満で有意に改善し,その効果サイズ(Cohenのd値)は順に0.43,0.35,0.35であった.対象者はセルフモニタリングや将棋,散歩,庭掃除,書字練習など作業療法士との共同作業をした.OT目標の実行度と満足度が向上した者は2人に留まったが,自治会サークル活動への参加や就労継続支援B型への通所を開始した者が含まれた.
事例紹介
A氏,50歳代,男性,統合失調症.一人暮らし.GAF54点,BsHASでは常に低値であった.生活リズムの改善を目的に週1回50分の頻度で対話と散歩を実施した.LASMIのI尺度得点が1.4点から0.7点に,W尺度得点が1.9点から1.2点に改善した.A氏は就労継続支援B型内職作業に加え,通所を始めるまでに至った.
B氏,50歳代,男性,統合失調症.一人暮らし.GAF56点,BsHASでは人疲れ感が認められた.生活リズムの改善を目的に2週に1回,50分の頻度で対話と将棋をした.LASMIのD尺度得点が1.7点から1.5点に,I尺度得点が1.4点から0.8点に,W尺度得点が1.4点から1.3点に改善した.自治会の将棋サークルを探し出し,月に1回の頻度で参加するに至った.
C氏,50歳代,男性,統合失調症.一人暮らし.ひきこもりと自殺企図歴あり.GAF55点,BsHASでは人疲れ感が認められた.ストレス対処技能の獲得を目的に週1回50分の頻度で対話と庭作業をした.LASMIのD尺度得点が1.3点から1.1点に,I尺度得点が0.9点から0.7点に,W尺度得点が1.3点から1.0点に改善した.ガイドヘルパーとの関係が良好となり,定期的な外出を持続した.
【考察】
統合失調症患者に対して主観的健康状態を把握しながらOT介入することにより,対象者の身体感覚や健康状態に意識を向けさせることに加え,生活における身辺処理や対人関係,生活行為を促進する可能性がある.