[OH-3-5] 地域若者サポートステーション利用者における後ろ向き研究
~ 20 代就労群と未就労群の比較に基づく作業療法士の支援方針の検討~
(序論)地域若者サポートステーション(以下,サポステ)は15〜49歳の就労困難な者の就労支援を行う厚労省の委託事業である.その利用者は,青年期の自立の問題を抱える者,障害が疑われる者,就職氷河期世代の者など多様な背景が混在している.
(目的)本研究の目的は,サポステの利用者データを分析し,作業療法士による支援のあり方を検討することである.今回,主な利用層である20代の特徴を明らかにすることである.
(方法)分析対象はA県ただ一つのサポステの過去3年分(2021年1月1日〜2023年12月31日)の利用者データ(年齢,性別,支援日数,初回評価値,就労セミナー参加回数,利用後の就職の有無)であった.その内,20代の利用者データを抽出し,利用後の就職(一般企業,20時間以上)の有無で,就労群と未就労群(就労群の平均支援日数+1SD以上の長期支援中の者)に分けた.初回評価値は相談初回時の厚労省指定のサポステで改善したい項目(生活習慣:A値3項目,コミュニケーション能力:B値3項目,職業に関する意識:C値2項目,社会常識・能力:D値2項目,自己肯定感:E値2項目,辛抱強さ:F値1項目)の数であった.セミナーは,就労に関した教育,職場体験,レクリエーション的な活動も含んでいた.解析は,就労と未就労によって,①群間比較をマン・ホイットニーのU検定またはフィッシャーの正確確率検定を用いて単変量解析し,②二項ロジスティック回帰分析を用いて多変量解析を行った.その際,説明変数は,投入数を対象者の少ない群のn/10以下を目安に,単変量解析で有意差を認めた項目とし,共線性(VIF値>5)は除外した.すべての統計解析はSPSS v29を使用し,有意水準は5%未満(p<0.05)とした.尚,本報告はA県立大学の倫理承認(No. 972)を受けた.
(結果)全利用者(n=217)の内,20代(n=121)は55.8%であった.就労群(n=75) 対 未就労群(n=46)の群間比較の結果,年齢24.8±2.7 対 24.7±2.2,男性54.7% 対 56.5%(女性45.3% 対 43.5%),支援日数120.8±106.8 対 480.2±253.6,A値0.00±0.00 対 0.76±0.77(p<0.001),B値0.63±0.78 対 1.07±0.83(p=0.002),C値0.03±0.16 対 1.57±0.50(p<0.001),D値0.00±0.00 対 0.72±0.75(p<0.001),E値1.37±0.77 対 1.43±0.72,F値0.69±0.46 対 0.72±0.46,セミナー回数0.9±2.8 対 4.5±8.0(p<0.001)であった.ロジスティック回帰分析は,説明変数(4~5つ)としてA値,B値,C値,D値,セミナー回数を強制投入した.VIF(値)はA値(2.041),B値(1.071),C値(2.390),D値(1.815),セミナー回数(1.306)であった.その結果,B値(オッズ比[OR]=0.316,95%信頼区間 [95%CI]=0.135-0.739,p=0.008),セミナー回数(OR=0.857,95%CI=0.756-0.971,p=0.015)が抽出された(モデル的中率71.1%). つまり,初回評価時にコミュニケーション面の改善したい点が多い者,セミナー参加回数が多い者は長期支援中という結果となった.
(考察)A値,C値,D値は就労と未就労で群間差を認めたが,回帰モデル式では有意な変数として抽出されなかった.その原因は就労群の各値が0に近似していたためと考えた.そもそも就労できた者は初回相談時に生活習慣や社会常識で課題を抱える者はおらず,その課題がある者は就労が遠のくと解釈した.作業療法士の支援は,利用者の自己肯定感や辛抱強さのような精神的側面の強化だけでなく,生活習慣や職業意識などの具体的なスキル向上, 認知行動療法,WRAPを用いたレジリエンスを高める支援が可能と考えた.セミナー参加回数の増加が就労の機会が遠のく結果は,利用目的をより詳細に調査する必要がある.
(目的)本研究の目的は,サポステの利用者データを分析し,作業療法士による支援のあり方を検討することである.今回,主な利用層である20代の特徴を明らかにすることである.
(方法)分析対象はA県ただ一つのサポステの過去3年分(2021年1月1日〜2023年12月31日)の利用者データ(年齢,性別,支援日数,初回評価値,就労セミナー参加回数,利用後の就職の有無)であった.その内,20代の利用者データを抽出し,利用後の就職(一般企業,20時間以上)の有無で,就労群と未就労群(就労群の平均支援日数+1SD以上の長期支援中の者)に分けた.初回評価値は相談初回時の厚労省指定のサポステで改善したい項目(生活習慣:A値3項目,コミュニケーション能力:B値3項目,職業に関する意識:C値2項目,社会常識・能力:D値2項目,自己肯定感:E値2項目,辛抱強さ:F値1項目)の数であった.セミナーは,就労に関した教育,職場体験,レクリエーション的な活動も含んでいた.解析は,就労と未就労によって,①群間比較をマン・ホイットニーのU検定またはフィッシャーの正確確率検定を用いて単変量解析し,②二項ロジスティック回帰分析を用いて多変量解析を行った.その際,説明変数は,投入数を対象者の少ない群のn/10以下を目安に,単変量解析で有意差を認めた項目とし,共線性(VIF値>5)は除外した.すべての統計解析はSPSS v29を使用し,有意水準は5%未満(p<0.05)とした.尚,本報告はA県立大学の倫理承認(No. 972)を受けた.
(結果)全利用者(n=217)の内,20代(n=121)は55.8%であった.就労群(n=75) 対 未就労群(n=46)の群間比較の結果,年齢24.8±2.7 対 24.7±2.2,男性54.7% 対 56.5%(女性45.3% 対 43.5%),支援日数120.8±106.8 対 480.2±253.6,A値0.00±0.00 対 0.76±0.77(p<0.001),B値0.63±0.78 対 1.07±0.83(p=0.002),C値0.03±0.16 対 1.57±0.50(p<0.001),D値0.00±0.00 対 0.72±0.75(p<0.001),E値1.37±0.77 対 1.43±0.72,F値0.69±0.46 対 0.72±0.46,セミナー回数0.9±2.8 対 4.5±8.0(p<0.001)であった.ロジスティック回帰分析は,説明変数(4~5つ)としてA値,B値,C値,D値,セミナー回数を強制投入した.VIF(値)はA値(2.041),B値(1.071),C値(2.390),D値(1.815),セミナー回数(1.306)であった.その結果,B値(オッズ比[OR]=0.316,95%信頼区間 [95%CI]=0.135-0.739,p=0.008),セミナー回数(OR=0.857,95%CI=0.756-0.971,p=0.015)が抽出された(モデル的中率71.1%). つまり,初回評価時にコミュニケーション面の改善したい点が多い者,セミナー参加回数が多い者は長期支援中という結果となった.
(考察)A値,C値,D値は就労と未就労で群間差を認めたが,回帰モデル式では有意な変数として抽出されなかった.その原因は就労群の各値が0に近似していたためと考えた.そもそも就労できた者は初回相談時に生活習慣や社会常識で課題を抱える者はおらず,その課題がある者は就労が遠のくと解釈した.作業療法士の支援は,利用者の自己肯定感や辛抱強さのような精神的側面の強化だけでなく,生活習慣や職業意識などの具体的なスキル向上, 認知行動療法,WRAPを用いたレジリエンスを高める支援が可能と考えた.セミナー参加回数の増加が就労の機会が遠のく結果は,利用目的をより詳細に調査する必要がある.