[OI-1-3] 脳梗塞後に片麻痺を呈した子どもへの課題指向型訓練における電動車椅子の有効性
【序論】
当院は医療型障害児入所施設であり,リハビリテーションが生活の一部である中,片麻痺の障害を有する子どもの作業療法において,上肢の機能と認知機能向上が課題となる.既存の課題指向型訓練において,子どもの作業療法における麻痺側へのプログラムとして電動車椅子を活用した事例報告は少ない.今回は自力移動,座位不可の脳梗塞による右片麻痺を呈した子ども1人を対象に,課題指向型訓練として電動車椅子を使用したCI療法が右上肢に与える影響と,能動的な移動体験が認知機能へ与える影響について探求した.
【目的】
右片麻痺の子どもに対する課題指向型訓練の作業療法として電動車椅子を使用したCI療法の効果を明らかにし,その有効性を検討することである.なお報告に際し,保護者の同意を得た.
【方法】
年齢3歳11ヶ月,新版K式発達検査による姿勢運動0歳5ヶ月,認知適応0歳7ヶ月,言語社会0歳5ヶ月の子ども1人に対して,電動車椅子を使用したCI療法を実施した.実施期間は2023年5月から12月,40分のリハビリを週に約4回実施した.左上肢の拘束は避け,右上肢への意識と動作を促進しながら能動的な院内の移動体験を提供し,リハビリ期間の経過と結果を記録した.
【経過と結果】
初期は因果関係の理解が難しく,ジョイスティックへの上肢リーチも見られない.他動的な右上肢リーチと把持を促し,因果関係の理解と右上肢の意識を高め, 筋緊張の高さを利用し引き込みながらジョイスティックを操作する.中期は因果関係の理解と右上肢への意識が高まり,電動車椅子操作において能動的に左上肢で右上肢を把持し,クレーン動作でジョイスティックにリーチするようになる.また筋緊張の高さを利用した後方への操作のみから,前方に押す動作が見られ始める.終期は右上肢の能動的なジョイスティックへのリーチが見られ始める.日常生活場面では寝返りの際にon elbows が可能となり,交互性はないが床上でもずり這いで移動するようになる.また床から起き上がり動作も始まり,右上肢が支持手として参加する場面が増える.食事で座位保持装置に机を付ける際は,右上肢を机の上に挙げることができるようになる. 遊びの場面では,元々は左上肢で玩具を把持し箱から出すのみだったが,目的の場所に入れて遊び始める.新版K式発達検査では姿勢運動0歳6ヶ月,認知適応0歳10ヶ月,言語社会0歳8ヶ月の変化が示された.
【考察】
課題指向型訓練として電動車椅子を組み入れたことは,発達年齢がピアジェの述べる感覚運動期の第3期にあたり,因果関係の理解が可能になる時期であり,課題として問題はなかったと考える.またジョイスティックがすべての方向に操作可能だったことで,子どもの運動パターンに合わせることができた.そのため子どもの興味が高まり楽しみながら左手の拘束はなく右上肢へのアプローチができ,右上肢のボディイメージの向上と具体的な動作改善に結びついたと考える.またジョセフらは,運動経験は空間認知に促進的な役割を担うと述べており,自力移動不可な子どもに対して,電動車椅子での能動的な移動や操作の経験が空間認知向上に繋がり,目と手の協調性が高まったことで右上肢機能だけでなく,遊びの変化も見られたと考える.これらの結果から,片麻痺を有する子どもの課題指向型訓練として電動車椅子を導入することは右上肢の機能向上だけでなく,認知面の機能向上が示唆され有効性が高いと考える.今後は電動車椅子を移動手段の獲得として用いるだけではなく,機能向上のためのリハビリテーションで使用される機会を増やし,片麻痺を呈する子どものケースに活用した結果が求められる.
当院は医療型障害児入所施設であり,リハビリテーションが生活の一部である中,片麻痺の障害を有する子どもの作業療法において,上肢の機能と認知機能向上が課題となる.既存の課題指向型訓練において,子どもの作業療法における麻痺側へのプログラムとして電動車椅子を活用した事例報告は少ない.今回は自力移動,座位不可の脳梗塞による右片麻痺を呈した子ども1人を対象に,課題指向型訓練として電動車椅子を使用したCI療法が右上肢に与える影響と,能動的な移動体験が認知機能へ与える影響について探求した.
【目的】
右片麻痺の子どもに対する課題指向型訓練の作業療法として電動車椅子を使用したCI療法の効果を明らかにし,その有効性を検討することである.なお報告に際し,保護者の同意を得た.
【方法】
年齢3歳11ヶ月,新版K式発達検査による姿勢運動0歳5ヶ月,認知適応0歳7ヶ月,言語社会0歳5ヶ月の子ども1人に対して,電動車椅子を使用したCI療法を実施した.実施期間は2023年5月から12月,40分のリハビリを週に約4回実施した.左上肢の拘束は避け,右上肢への意識と動作を促進しながら能動的な院内の移動体験を提供し,リハビリ期間の経過と結果を記録した.
【経過と結果】
初期は因果関係の理解が難しく,ジョイスティックへの上肢リーチも見られない.他動的な右上肢リーチと把持を促し,因果関係の理解と右上肢の意識を高め, 筋緊張の高さを利用し引き込みながらジョイスティックを操作する.中期は因果関係の理解と右上肢への意識が高まり,電動車椅子操作において能動的に左上肢で右上肢を把持し,クレーン動作でジョイスティックにリーチするようになる.また筋緊張の高さを利用した後方への操作のみから,前方に押す動作が見られ始める.終期は右上肢の能動的なジョイスティックへのリーチが見られ始める.日常生活場面では寝返りの際にon elbows が可能となり,交互性はないが床上でもずり這いで移動するようになる.また床から起き上がり動作も始まり,右上肢が支持手として参加する場面が増える.食事で座位保持装置に机を付ける際は,右上肢を机の上に挙げることができるようになる. 遊びの場面では,元々は左上肢で玩具を把持し箱から出すのみだったが,目的の場所に入れて遊び始める.新版K式発達検査では姿勢運動0歳6ヶ月,認知適応0歳10ヶ月,言語社会0歳8ヶ月の変化が示された.
【考察】
課題指向型訓練として電動車椅子を組み入れたことは,発達年齢がピアジェの述べる感覚運動期の第3期にあたり,因果関係の理解が可能になる時期であり,課題として問題はなかったと考える.またジョイスティックがすべての方向に操作可能だったことで,子どもの運動パターンに合わせることができた.そのため子どもの興味が高まり楽しみながら左手の拘束はなく右上肢へのアプローチができ,右上肢のボディイメージの向上と具体的な動作改善に結びついたと考える.またジョセフらは,運動経験は空間認知に促進的な役割を担うと述べており,自力移動不可な子どもに対して,電動車椅子での能動的な移動や操作の経験が空間認知向上に繋がり,目と手の協調性が高まったことで右上肢機能だけでなく,遊びの変化も見られたと考える.これらの結果から,片麻痺を有する子どもの課題指向型訓練として電動車椅子を導入することは右上肢の機能向上だけでなく,認知面の機能向上が示唆され有効性が高いと考える.今後は電動車椅子を移動手段の獲得として用いるだけではなく,機能向上のためのリハビリテーションで使用される機会を増やし,片麻痺を呈する子どものケースに活用した結果が求められる.