第58回日本作業療法学会

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一般演題

発達障害

[OI-1] 一般演題:発達障害 1

Sat. Nov 9, 2024 2:30 PM - 3:30 PM G会場 (206)

座長:中島 そのみ(札幌医科大学 )

[OI-1-4] Modified Baby CIMTを実施した左不全麻痺児の一症例

工藤 大弥1, 川原 佑亮1, 菊池 佑維1, 三屋 邦明1, 木ノ内 よしな2 (1.千葉県千葉リハビリテーションセンター リハビリテーション治療部, 2.千葉県千葉リハビリテーションセンター 診療部)

【はじめに】Baby Constraint induced movement therapy(以下,Baby CIMT)とは,modified CIMTを修正し,脳性麻痺(片麻痺)となるリスクがある乳児に適応したリハビリテーションである.Baby CIMTはスウェーデンのKarolinska Institutetでマニュアルが作成(Eliassonら2013)され,2023年3月に日本語版が完成した.Baby CIMTでは,麻痺側上肢の発達を促すことを目的としており,1日30分の非麻痺側の拘束,週1回の家族へのコーチングを6週間×2回の計42時間以上を超える練習量を推奨している.今回,0歳8ヶ月の左不全麻痺痺児にModified Baby CIMTを実施し,運動発達の向上を認めたため報告する.
【事例紹介】左不全麻痺を呈した0歳8ヶ月の女児.39週1日,3376g,吸引分娩で出生.定頸4ヶ月,寝返り4ヶ月,ずり這い7ヶ月で獲得.座位未獲得.4ヶ月頃に,寝返り時の左上下肢の動きの拙劣さに気付きA病院を受診.頭部MRIの結果,右放線冠陳旧性梗塞と診断された.これまで,地域の発達センターに週1回,訪問リハビリテーションを週2回利用しており,生後6カ月頃から当センターの外来リハビリテーション(PT,OT)を月2回ずつ実施した.
【方法】<プロトコル>BABデザインで実施.B期(B1期,B2期)はModified Baby CIMT,A期(ベースライン期)は週1回60分のPTもしくはOTの通常リハビリテーションを実施.Modified Baby CIMTは,①非麻痺側の拘束(1日30分,週6~7日,6週間),②両親へのコーチング(週1回),③両親向けのトランスファーパッケージ(TP)の使用を実施した.B1期は外来リハビリテーション,B2期は親子入園にて実施した. <アウトカム>上肢機能の質的評価法(QUEST),リハビリテーションのための子どもの能力低下評価法(PEDI),遊び場面の動画撮影を各期の前後で実施した.<拘束方法>おくるみ<倫理的配慮>本報告は,書面にて保護者に同意を得ている.また,当センターの倫理委員会の承認を得ている.
【結果(各期の変化量)】<QUEST> B1期:+6.43 A期:−0.41 B2期:+6.29  <PEDI機能的スキル> B1期:セルフケア+14.4,移動+1.7,社会的機能+7.4 A期:セルフケア+3.2,移動+6.9,社会的機能+11.1 B2期:セルフケア±0,移動+1.2,社会的機能+8.4<遊び場面の観察>B1期:介入前は自発的な麻痺側の使用はほぼ見られなかったが,リーチ動作が獲得され,補助的な使用が見られ始めた.A期:引っ張る,叩くなど麻痺側のみで遊ぶようになった. B2期:両手での遊びや麻痺側での道具操作が見られた.また,コップを両手で持つなど生活場面での使用が見られた.<TP(日記)>B1期:姿勢や使用物品等の違いが動作の変化に繋がることに気付けるようになった. B2期:生活場面での変化の気付きが増え,児が主体的に楽しく取り組められる工夫を行えるようになった.
【考察】Baby CIMTは,生活場面で両親が遊びを通じて麻痺側上肢の使用を促すことを特徴としている.今回,コーチングにより両親がB1期では運動機能の視点,B2期では本人主体の視点で関われたことが,麻痺側上肢の発達に寄与したと考える.また,B1期で獲得された運動機能がA期でも維持できたことが,A期におけるPEDIの向上や観察場面における麻痺側の使用に影響を与えていたと考える.本邦におけるBaby CIMTの研究は不十分であるが,本事例から,両親へのコーチングは重要であり,生活場面や遊びの中で麻痺側上肢の使用を促せられるような環境調整の視点を支援することが,麻痺側上肢の運動発達促進に繋がると示唆された.