[OI-2-1] 難病により重症心身障害を呈したA君のトイレ支援
~放課後等デイサービスにおける指導員への間接支援を通して~
【はじめに】放課後等デイサービス(以下:放デイ)のガイドライン(厚生労働省,2015)によると,放デイは生活能力向上のために必要な訓練などを供与するものである.放デイで提供される支援の内容は多種多様で,支援の質の大きな開きがあり,各事業所の実情や個々の子どもの状況に応じて創意工夫した支援を提供する必要が指摘されている.また,作業療法士は障害のある利用者本人だけではなく,その周囲の関係者に間接支援することも期待されている(日本作業療法士協会,2019).【目的】利用者の生活目標を立案する際に,指導員が難しさを感じて取り組めていない課題に対して,作業療法の視点から評価や介入を行い,指導員への間接支援を通じて安心・安全なトイレ誘導や排尿確認回数の増加につながった支援について報告する.
【症例紹介と間接支援の方針】対象者は,難病を呈する6歳4か月のA君.身体1級,知的A1.脳障害による知的障害や不随意運動を伴う運動麻痺を呈し,発達状況は,発語なし,未頚定,座位は不安定,寝返り可能.生活動作は全介助.利用サービスは職員兼務が行える多機能型事業所(放デイ,児童発達支援,生活介護)の放デイであった.指導員は12名で,男女は9名と3名,年齢は20〜60歳台,有資格は看護師,保育士,児童指導員任用資格などであった.指導員はA君の生活動作に関して「支援方法が不明,危ない」と感じ,生活行為を目標にすることが困難な状況であった.指導員にとってA君にできてほしいことを聞くと,「トイレでの排泄」が挙げられたため,それを目標に作業療法の視点でA君への関り方や取り組みを考え,指導員へ伝達し,連携しながらA君への支援を行った.指導員への間接支援は週1~2回程度実施した.内容は,①トイレに繋がる普段の関り,②安全・安心なトイレ環境,③トイレ誘導方法の模索,という3つの大枠を作成し,具体的な支援方法の提案や実施後の振り返りを行った.今回の発表に際し,A君の保護者及び指導員から書面での同意を得ている.開示すべき利益相反関係はない.
【目標に対する取り組み経過】①の普段の関りでは,A君の身体が伸展方向に過剰に力が入る点と未頚定に焦点を絞り,腹臥位や座位などの姿勢誘導方法と,遊びの提案を行った.②のトイレ環境面では,危険個所の確認と対策方法を考え,A君の特性に合わせたトイレ補助グッズの作成,トイレ環境整備を行った.③のトイレ誘導方法では,2人体制から進め,取り組みを振り返り改善を進めた.
【結果】2年5か月間の間接支援によって,A君の能力では徐々に身体を曲げた姿勢で過ごすこと,身体を安定させることが改善した.また,環境整備やトイレへの誘導方法を見直すことで,全指導員がA君の日中活動やトイレ支援が行えるよう調整できた.そして,全指導員が1人体制でトイレ支援可能となり,トイレ誘導回数を増やせた.実際に,今回の間接支援前の誘導回数と排尿確認回数0回/月が,支援後には誘導回数42回/月と排尿確認回数25回/月へと増加した.
【考察】対象者の希望する作業を行う為に,「人」「環境」「作業」の観点から作業遂行を捉えることが提言されており(Lawら,1996),本報告の指導員への間接支援では,A君の作業目標を明確にし,3つの観点からA君の課題と対応方法の検討について助言や連携を行うことができた.また,定期的な話し合いを行う基盤が形成され,支援方法を見直すきっかけも作れたことで,A君の目標達成につながる支援となった.このような間接支援を通して指導員の新たな視点での関りや環境整備が促進され,他の利用者の生活支援に対する波及効果も期待される.
【症例紹介と間接支援の方針】対象者は,難病を呈する6歳4か月のA君.身体1級,知的A1.脳障害による知的障害や不随意運動を伴う運動麻痺を呈し,発達状況は,発語なし,未頚定,座位は不安定,寝返り可能.生活動作は全介助.利用サービスは職員兼務が行える多機能型事業所(放デイ,児童発達支援,生活介護)の放デイであった.指導員は12名で,男女は9名と3名,年齢は20〜60歳台,有資格は看護師,保育士,児童指導員任用資格などであった.指導員はA君の生活動作に関して「支援方法が不明,危ない」と感じ,生活行為を目標にすることが困難な状況であった.指導員にとってA君にできてほしいことを聞くと,「トイレでの排泄」が挙げられたため,それを目標に作業療法の視点でA君への関り方や取り組みを考え,指導員へ伝達し,連携しながらA君への支援を行った.指導員への間接支援は週1~2回程度実施した.内容は,①トイレに繋がる普段の関り,②安全・安心なトイレ環境,③トイレ誘導方法の模索,という3つの大枠を作成し,具体的な支援方法の提案や実施後の振り返りを行った.今回の発表に際し,A君の保護者及び指導員から書面での同意を得ている.開示すべき利益相反関係はない.
【目標に対する取り組み経過】①の普段の関りでは,A君の身体が伸展方向に過剰に力が入る点と未頚定に焦点を絞り,腹臥位や座位などの姿勢誘導方法と,遊びの提案を行った.②のトイレ環境面では,危険個所の確認と対策方法を考え,A君の特性に合わせたトイレ補助グッズの作成,トイレ環境整備を行った.③のトイレ誘導方法では,2人体制から進め,取り組みを振り返り改善を進めた.
【結果】2年5か月間の間接支援によって,A君の能力では徐々に身体を曲げた姿勢で過ごすこと,身体を安定させることが改善した.また,環境整備やトイレへの誘導方法を見直すことで,全指導員がA君の日中活動やトイレ支援が行えるよう調整できた.そして,全指導員が1人体制でトイレ支援可能となり,トイレ誘導回数を増やせた.実際に,今回の間接支援前の誘導回数と排尿確認回数0回/月が,支援後には誘導回数42回/月と排尿確認回数25回/月へと増加した.
【考察】対象者の希望する作業を行う為に,「人」「環境」「作業」の観点から作業遂行を捉えることが提言されており(Lawら,1996),本報告の指導員への間接支援では,A君の作業目標を明確にし,3つの観点からA君の課題と対応方法の検討について助言や連携を行うことができた.また,定期的な話し合いを行う基盤が形成され,支援方法を見直すきっかけも作れたことで,A君の目標達成につながる支援となった.このような間接支援を通して指導員の新たな視点での関りや環境整備が促進され,他の利用者の生活支援に対する波及効果も期待される.