[OJ-2-4] 臨床実習学生との関わりをきっかけに介助拒否及び介助量の軽減に至った症例
【はじめに】痛みの訴えが強くADL介助や作業療法(以下,OT)に拒否を示す症例に対し,他者との関係性構築を目的に,OT以外の時間での臨床実習学生(以下,学生)との関わりを促した.関係性構築を通じ,介助拒否や介助量の軽減に至った為報告する.
【症例紹介】90歳代女性.自宅で転倒し,左大腿骨転子下骨折と診断.当院にてγ-ネイル術施行され,術後17日目に回復期病棟へ転棟しOT開始となる.受傷前は,両変形性膝関節症による膝痛あるが買い物以外のADLは全て自立であり,飼い猫の世話をしていた.転棟時は,終日ベッド臥床で食事以外のADLは全て全介助であった.両下肢の防御性収縮が強く関節運動に痛みを伴い,病棟職員(以下,職員)による排泄や更衣介助は「触らないで」とベッド柵を把持して抵抗し泣いて拒否していた. 【初期評価】[ROM]股関節,膝関節屈曲は痛みにより測定拒否.[HDS-R]13点[FIM]64点(運動29点/認知35点)[人間作業モデルスクリーニングツール(以下,MOHOST)]35/95点,日常生活動作の必要性やOTそのものへは意欲がなく,OTや職員との関係性構築が阻害され拒否が生じていると考えられた.
【介入】第1期:学生介入にてOT以外での関わりを行い離床時間の延長を図った.症例は,座位では膝痛の軽減が見られ,膝痛は臥床時間の長期化に伴う不動の影響も考えられた.学生が症例への理解を深め,信頼関係の構築を期待して生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)で,情報収集・問題整理を行えるように指導し,「猫の世話」が症例の重要な作業として挙げられた.学生と離床時の過ごし方を検討し,猫に関する会話や動画鑑賞を行い楽しみの獲得を図った.自宅に帰れば自分で出来るという思い違いを理解し,離床拒否は軽減した.
第2期:MTDLPの活用により,「痛みが出ないようにトイレがしたい」と具体的な希望も聞かれた.OTにて起居動作や下衣操作練習を行い,学生は座位での下肢筋力運動や学生が考案した余暇活動を行い「帰る為に必要だから頑張ります」と参加意識も変化した.トイレ動作は下衣操作の介助にて可能となるが,職員には介助拒否や抵抗が残存していた.
第3期:介助拒否の軽減,職員との関係性構築を図った.練習場面の写真を撮影,居室に掲示し「リハビリ頑張ってますね」「歩けるようになったら猫の世話ができますね」等の介助時の声掛けの増加を目指し環境設定を行った.OTにて移乗動作練習を行い,学生は移乗前後の声掛けや称賛を行い介助拒否が減少した.トイレ誘導は職員の一人介助で可能になり自立に至る.その後,介護サービスを利用しての自宅退院に至った.
【結果】[ROM]両股関節屈曲100°/両膝関節屈曲95°自動運動時の痛みは軽減した.[HDS-R]18点[FIM]97点(運動62点/認知35点)[MOHOST]76/96点(作業への動機付け・作業のパターンが改善し運動技能も向上)[病棟内ADL]食事:三食端坐位にて摂取,排泄:日中ポータブルトイレ自立となる.
【考察】本症例は,学生介入を契機に介助拒否が軽減した.学生は職員よりも症例と接する時間を多く取れる為,MTDLPを使用し症例のニーズに近い話題を得られ動機付けが促された.実習での学生と症例との関わりが,症例に良い影響をもたらす可能性が示唆された.また,拒否や抵抗には動機付けとなる関わりを通じ病棟内ADLや他職種への介入に繋げることも有用であると考えられた.
【倫理的配慮】対象にはヘルシンキ宣言に基づき本報告の主旨を口頭及び文章にて行い,十分に説明し同意を得た.
【症例紹介】90歳代女性.自宅で転倒し,左大腿骨転子下骨折と診断.当院にてγ-ネイル術施行され,術後17日目に回復期病棟へ転棟しOT開始となる.受傷前は,両変形性膝関節症による膝痛あるが買い物以外のADLは全て自立であり,飼い猫の世話をしていた.転棟時は,終日ベッド臥床で食事以外のADLは全て全介助であった.両下肢の防御性収縮が強く関節運動に痛みを伴い,病棟職員(以下,職員)による排泄や更衣介助は「触らないで」とベッド柵を把持して抵抗し泣いて拒否していた. 【初期評価】[ROM]股関節,膝関節屈曲は痛みにより測定拒否.[HDS-R]13点[FIM]64点(運動29点/認知35点)[人間作業モデルスクリーニングツール(以下,MOHOST)]35/95点,日常生活動作の必要性やOTそのものへは意欲がなく,OTや職員との関係性構築が阻害され拒否が生じていると考えられた.
【介入】第1期:学生介入にてOT以外での関わりを行い離床時間の延長を図った.症例は,座位では膝痛の軽減が見られ,膝痛は臥床時間の長期化に伴う不動の影響も考えられた.学生が症例への理解を深め,信頼関係の構築を期待して生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)で,情報収集・問題整理を行えるように指導し,「猫の世話」が症例の重要な作業として挙げられた.学生と離床時の過ごし方を検討し,猫に関する会話や動画鑑賞を行い楽しみの獲得を図った.自宅に帰れば自分で出来るという思い違いを理解し,離床拒否は軽減した.
第2期:MTDLPの活用により,「痛みが出ないようにトイレがしたい」と具体的な希望も聞かれた.OTにて起居動作や下衣操作練習を行い,学生は座位での下肢筋力運動や学生が考案した余暇活動を行い「帰る為に必要だから頑張ります」と参加意識も変化した.トイレ動作は下衣操作の介助にて可能となるが,職員には介助拒否や抵抗が残存していた.
第3期:介助拒否の軽減,職員との関係性構築を図った.練習場面の写真を撮影,居室に掲示し「リハビリ頑張ってますね」「歩けるようになったら猫の世話ができますね」等の介助時の声掛けの増加を目指し環境設定を行った.OTにて移乗動作練習を行い,学生は移乗前後の声掛けや称賛を行い介助拒否が減少した.トイレ誘導は職員の一人介助で可能になり自立に至る.その後,介護サービスを利用しての自宅退院に至った.
【結果】[ROM]両股関節屈曲100°/両膝関節屈曲95°自動運動時の痛みは軽減した.[HDS-R]18点[FIM]97点(運動62点/認知35点)[MOHOST]76/96点(作業への動機付け・作業のパターンが改善し運動技能も向上)[病棟内ADL]食事:三食端坐位にて摂取,排泄:日中ポータブルトイレ自立となる.
【考察】本症例は,学生介入を契機に介助拒否が軽減した.学生は職員よりも症例と接する時間を多く取れる為,MTDLPを使用し症例のニーズに近い話題を得られ動機付けが促された.実習での学生と症例との関わりが,症例に良い影響をもたらす可能性が示唆された.また,拒否や抵抗には動機付けとなる関わりを通じ病棟内ADLや他職種への介入に繋げることも有用であると考えられた.
【倫理的配慮】対象にはヘルシンキ宣言に基づき本報告の主旨を口頭及び文章にて行い,十分に説明し同意を得た.