第58回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

高齢期

[OJ-2] 一般演題:高齢期 2

2024年11月9日(土) 16:50 〜 17:50 G会場 (206)

座長:小林 幸治(目白大学 保健医療学部作業療法学科)

[OJ-2-5] MCI高齢者における継続的な社会参加に関連する要因

横山 陽子1, 稲富 宏之2, 黒田 佑次郎1, 櫻井 孝1, 荒井 秀典1 (1.国立長寿医療研究センター  研究所 認知症先端医療開発センター 予防科学研究部, 2.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 医学研究科人間健康科学系専攻)

【序論】
認知症発症の修正可能な危険因子の中には社会的孤立が含まれており,その集団寄与危険割合は約4%である.また日本の世帯数の将来推計では,前期高齢者や後期高齢者の単独世帯の割合は一貫して上昇するとされ,高齢者の社会的孤立への対策はますます重要になる.認知症のリスクをもつMCI高齢者の継続的な社会参加の特性を明らかにすることは,孤立を予防する効果的な支援に役立ち,認知症予防,介護予防,高齢者QOLの改善につながることが期待できる.
【目的】
認知症のリスクをもつMCI高齢者を対象に,継続的な社会参加に関連する要因とその性別による違いを明らかにする.
【方法】
対象者は,認知症予防を目指した多因子介入によるランダム化比較試験(J-MINT研究)に同意し参加した者のうち,社会参加の評価が全て実施できた405名とした.社会参加は,JAGESの8項目(1.ボランティア・市民活動,2.スポーツ,3.趣味・学習,4.老人クラブ,5.自治会,6.同業者の会,7.宗教関係,8.その他)いずれかの項目のうち,月1回以上の参加の有無を評価した.評価時点はベースライン,6ヵ月,18ヵ月の3時点である.全ての評価時点で社会参加した人を社会参加維持群,評価時点のいずれかで参加しなかった人を低社会参加群とし,対象者を2群に分類した.統計解析は,目的変数を継続的な社会参加の有無 ,説明変数を性別,同居者の有無,ソーシャルネットワーク(LSNS-6),抑うつ(GDS),食物多様性,手段的ADL(Lawton index),歩行速度,認知機能のコンポジットスコアとしたロジスティック回帰分析を行い,男女別の解析も同様に行った.
【結果】
対象者の平均年齢は74.2±4.8歳,女性210名(51.9%)で,社会参加維持群は216名,低社会参加群は189名であった.全体のロジスティック回帰分析では,継続した社会参加には一人暮らし(AOR =2.08),友人関係のソーシャルネットワークの広さ(AOR=1.18),食物多様性の高さ(AOR=1.20),認知機能の高さ(AOR=1.83)の4つの要因の関連が示唆された.さらに男女別の分析では,男性が家族関係のソーシャルネットワークの狭さ(AOR=0.86),友人関係のソーシャルネットワークの広さ(AOR=1.18)であるのに対し,女性は一人暮らし(AOR=2.54),食物多様性の高さ(AOR=1.21),認知機能の高さ(AOR=2.79)というように,性差を認めた.
【結論】
MCI高齢者の継続的な社会参加には,一人暮らし,友人関係のソーシャルネットワーク,食物多様性,認知機能の関連性が示唆され,社会参加を促すためには性別に応じた戦略が必要である可能性が示唆された.