[OJ-3-5] 動作に伴う筋痛や疲労の軽減によりADL拡大を図った急性期皮膚筋炎患者の一例
【はじめに】これまでの急性期皮膚筋炎患者のリハビリテーションにおいて,運動療法の開始時期や運動負荷量に関する報告は見受けられるものの,筋炎症状の特徴を踏まえた上でのADL介入の報告は少ない.今回筋力低下に加えて,筋痛や疲労がADLの阻害因子であった急性期皮膚筋炎患者を担当した.動作に伴う筋痛や疲労に留意し,動作方法の変更や環境調整,自助具を活用し介入した結果,ADLの拡大を認め自宅退院した為報告する.尚,報告にあたり患者本人に口頭及び書面にて同意を得ている.
【症例紹介】60代女性.眼瞼腫脹や筋痛,脱力を認め入院(第1病日).当初Creatine Kinase(以下,CK)15817IU/Lで上腕や大腿に強い筋痛,四肢体幹に筋力低下を認める.治療は第4〜8病日:免疫グロブリン療法.第7〜14病日:プレドニン35mg/日.第15〜17病日:ステロイドパルス500mg/日×3日間.その後プレドニン30mg/日で経過とともに漸減.背景:夫と2人暮らし.仕事は自営業.
【初期評価】[身体機能(R/L)]MMT:体幹2,肩屈曲2/2,肘屈曲3/3,手屈曲4/4,股屈曲2/2-,膝伸展4/4,足背屈4/4.筋痛:(Visual analogue scale;VAS)安静時80mm.疲労:(修正Borg scalde;mBS)安静時1.[活動]起居:最大介助,歩行:独歩見守り,食事:見守り,トイレ:中等介助,FIM78点(運動43点・認知35点)で食事やトイレ以外は臥床傾向.
【介入と経過】入院翌日より介入開始.第17病日以降,CK4969IU/Lと低下傾向で医師より運動負荷を徐々にかける指示があったが,「痛いから動けない」「少し動くだけですごく疲れる」と発言があり,動作練習や筋力訓練は積極的に行えなかった.また,筋痛や疲労で臥床傾向となり廃用リスクが高かった.そのため,特に筋痛や疲労の強いADLに対してそれらを軽減させる方針とし,食事,便座からの立ち上がり,洗体,洗髪動作の改善を試みた.食事は口元までのリーチの反復で上腕に強い筋痛と疲労を認めた.そのため座面の高さを上げ,膝上にクッションを置き,上肢を空中で保持せず,肘屈曲の動きのみで口元にリーチするよう変更した.結果,筋痛VAS60→30mm疲労mBS7→4に軽減した.便座からの立ち上がりは,L字バーを両上肢で努力性に引っ張るよう立ち上がっていたので上腕に強い筋痛と疲労を伴っていた.そのため,離殿時の体幹前屈角度を増し,両大腿部に両手を置き登攀性起立を模した立ち上がり方に変更した.即時的に疼痛は自制範囲内となり,その後反復して練習を行い動作獲得へ至った.筋痛や疲労はVAS48→6mm,mBS5→3に軽減した.第29病日以降はCK891IU/Lと低下し筋力や活動量向上を認めるも,洗体や洗髪で介助や筋痛,疲労を伴っていた.洗体はロングタオルを利用し上肢の最小限の動作で拭く方法を練習した.結果,自立に至り筋痛VAS20→8mm疲労mBS4→1に軽減した.洗髪では頭部リーチを代償するため長柄ブラシを作製し使用.ブラシ角度の調整を繰り返し,最終的に自立し筋痛VAS22→8mm疲労mBS4→2に軽減した.第44病日にCK240IU/Lまで低下.退院前に自宅環境を調整し自宅退院した.
【最終評価】[身体機能(R/L)]MMT:体幹2,肩屈曲3/2,肘屈曲4/4,手屈曲5/5,股屈曲2/2,膝伸展4/4,足背屈5/5.疼痛:VAS安静時0mm.疲労:mBS安静時0.[活動]起居:修正自立,歩行:棟内歩行自立,食事:自立,トイレ:修正自立,FIM117点(運動82点・認知35点).食事やトイレ以外も日中座位で過ごす.
【考察】筋痛や疲労がADLの阻害因子である皮膚筋炎患者に対し,動作方法の変更や環境調整,自助具活用の介入を行った.筋への過度な機械的ストレスを回避し,筋痛や疲労を最小限に留めADLの拡大を図ることができたと考える.
【症例紹介】60代女性.眼瞼腫脹や筋痛,脱力を認め入院(第1病日).当初Creatine Kinase(以下,CK)15817IU/Lで上腕や大腿に強い筋痛,四肢体幹に筋力低下を認める.治療は第4〜8病日:免疫グロブリン療法.第7〜14病日:プレドニン35mg/日.第15〜17病日:ステロイドパルス500mg/日×3日間.その後プレドニン30mg/日で経過とともに漸減.背景:夫と2人暮らし.仕事は自営業.
【初期評価】[身体機能(R/L)]MMT:体幹2,肩屈曲2/2,肘屈曲3/3,手屈曲4/4,股屈曲2/2-,膝伸展4/4,足背屈4/4.筋痛:(Visual analogue scale;VAS)安静時80mm.疲労:(修正Borg scalde;mBS)安静時1.[活動]起居:最大介助,歩行:独歩見守り,食事:見守り,トイレ:中等介助,FIM78点(運動43点・認知35点)で食事やトイレ以外は臥床傾向.
【介入と経過】入院翌日より介入開始.第17病日以降,CK4969IU/Lと低下傾向で医師より運動負荷を徐々にかける指示があったが,「痛いから動けない」「少し動くだけですごく疲れる」と発言があり,動作練習や筋力訓練は積極的に行えなかった.また,筋痛や疲労で臥床傾向となり廃用リスクが高かった.そのため,特に筋痛や疲労の強いADLに対してそれらを軽減させる方針とし,食事,便座からの立ち上がり,洗体,洗髪動作の改善を試みた.食事は口元までのリーチの反復で上腕に強い筋痛と疲労を認めた.そのため座面の高さを上げ,膝上にクッションを置き,上肢を空中で保持せず,肘屈曲の動きのみで口元にリーチするよう変更した.結果,筋痛VAS60→30mm疲労mBS7→4に軽減した.便座からの立ち上がりは,L字バーを両上肢で努力性に引っ張るよう立ち上がっていたので上腕に強い筋痛と疲労を伴っていた.そのため,離殿時の体幹前屈角度を増し,両大腿部に両手を置き登攀性起立を模した立ち上がり方に変更した.即時的に疼痛は自制範囲内となり,その後反復して練習を行い動作獲得へ至った.筋痛や疲労はVAS48→6mm,mBS5→3に軽減した.第29病日以降はCK891IU/Lと低下し筋力や活動量向上を認めるも,洗体や洗髪で介助や筋痛,疲労を伴っていた.洗体はロングタオルを利用し上肢の最小限の動作で拭く方法を練習した.結果,自立に至り筋痛VAS20→8mm疲労mBS4→1に軽減した.洗髪では頭部リーチを代償するため長柄ブラシを作製し使用.ブラシ角度の調整を繰り返し,最終的に自立し筋痛VAS22→8mm疲労mBS4→2に軽減した.第44病日にCK240IU/Lまで低下.退院前に自宅環境を調整し自宅退院した.
【最終評価】[身体機能(R/L)]MMT:体幹2,肩屈曲3/2,肘屈曲4/4,手屈曲5/5,股屈曲2/2,膝伸展4/4,足背屈5/5.疼痛:VAS安静時0mm.疲労:mBS安静時0.[活動]起居:修正自立,歩行:棟内歩行自立,食事:自立,トイレ:修正自立,FIM117点(運動82点・認知35点).食事やトイレ以外も日中座位で過ごす.
【考察】筋痛や疲労がADLの阻害因子である皮膚筋炎患者に対し,動作方法の変更や環境調整,自助具活用の介入を行った.筋への過度な機械的ストレスを回避し,筋痛や疲労を最小限に留めADLの拡大を図ることができたと考える.