[OJ-4-5] 通所リハビリテーションの認知症利用者に対するEngagementに着目した介入が介護負担に与える影響
【背景】
認知症患者の心理行動症状(BPSD)は,介護者の体調不良や精神面に対する介護負担となり,在宅生活を継続する上で問題となる.当院通所リハビリテーション(デイケア)においても,認知症利用者のBPSDは,介護者の介護負担を増大させ,在宅生活やデイケア利用を困難とする要因となっている.BPSDへの介入として,作業遂行の水準や外部刺激に従事する行為であるEngagementに着目した活動(AFE)があり,認知症者の情動や行動に好影響を与える可能性がある.
【目的】
当院デイケアの認知症利用者に対するAFEが介護負担度に与える影響を検証する.
【方法】
対象は,「医師より認知症の診断を受けている,MMSEが23点以下,臨床所見で認知症の中核・周辺症状が認められる」のいずれかの取り込み基準を満たした当院デイケアの利用者19名(男女比2/17名,平均年齢85.4±5.4歳,MMSE18.3±3.5点)とした.評価は,評価時に対象者の認知症症状に変動が無いことを確認し,AFEの評価にAssessment Scale for Engagement to Activity(ASEA),介護負担度の評価にBPSD+Q,副次評価としてDASC-21を基に作成した「記憶,精神や思考,動作や行動」の3領域における苦渋点を回答するアンケートを介護者に実施した.アンケートは,各領域における負担項目を0点「全く困っていない」~5点「非常に困っている」の6件法で回答し,補足として自由記述欄を設けた.評価期間は,初期が介入開始時,最終が3か月後とし,各期間の評価結果を比較した.AFEは,個人特性や手続き記憶を考慮した内容を提供することで,対象者の活動性の増加や興奮行動の減少が期待できるため,対象者の性別や地域特性を基に「主婦業,農作業,仕事的活動,製作活動」の4つの役割活動を挙げた.内容の選定は,作業療法士が対象者との面談,デイケア利用時の様子,能力や生活歴を考慮し,失敗体験とならない内容を選択した.AFEの実施頻度と期間は,1回30分,週に1~2回,3か月間とし,介入開始前の同意書の説明で了承が得られなかった者,3か月間の介入を継続できなかった者を除外した.
【倫理的配慮】
本介入は,当院の倫理委員会による審査及び承認を得て実施した.
【結果】
介入は,全対象がAFEの介入を希望し,3か月間継続できた6/19名が解析対象となった.6名の介入期間におけるデイケアの利用回数が3±1.1/週,AFEが合計実施回数16.3±5.4回,1週間当たりの実施回数1.36±0.46回であった.各評価結果は,初期・最終の順に,ASEAが19.3±0.49点→19.5±0.79点,BPSD+Qの重症度が13.5±13.8点→10.8点±17点,負担度が11.3点±9.5点→10.5±12.5点,アンケートにおける負担度が14.3±8.3点→11.6±7.5点で推移した.BPSDの症状は,初期・最終のBPSD+Qとアンケートの結果より,初期時に生じていた各対象の「脱抑制,繰り返し質問,介護への抵抗,物取られ妄想など」の過活動行動や「うつ,不安,アパシー,傾眠傾向,閉じこもりなど」の低活動行動の出現頻度が軽減する傾向がみられた.
【考察】
認知症デイケア利用者に対するAFEは,各対象における過活動性・低活動性BPSDの出現頻度および介護負担度を軽減した.BPSDの背景因子には,日常生活でできないことが増え,自分の存在が失われる不安や喪失体験がある.本介入においては,失敗体験とならない配慮下でのAFEが活動時の役割と達成感を提供することで,BPSDや介護負担を軽減する可能性が示唆された.
認知症患者の心理行動症状(BPSD)は,介護者の体調不良や精神面に対する介護負担となり,在宅生活を継続する上で問題となる.当院通所リハビリテーション(デイケア)においても,認知症利用者のBPSDは,介護者の介護負担を増大させ,在宅生活やデイケア利用を困難とする要因となっている.BPSDへの介入として,作業遂行の水準や外部刺激に従事する行為であるEngagementに着目した活動(AFE)があり,認知症者の情動や行動に好影響を与える可能性がある.
【目的】
当院デイケアの認知症利用者に対するAFEが介護負担度に与える影響を検証する.
【方法】
対象は,「医師より認知症の診断を受けている,MMSEが23点以下,臨床所見で認知症の中核・周辺症状が認められる」のいずれかの取り込み基準を満たした当院デイケアの利用者19名(男女比2/17名,平均年齢85.4±5.4歳,MMSE18.3±3.5点)とした.評価は,評価時に対象者の認知症症状に変動が無いことを確認し,AFEの評価にAssessment Scale for Engagement to Activity(ASEA),介護負担度の評価にBPSD+Q,副次評価としてDASC-21を基に作成した「記憶,精神や思考,動作や行動」の3領域における苦渋点を回答するアンケートを介護者に実施した.アンケートは,各領域における負担項目を0点「全く困っていない」~5点「非常に困っている」の6件法で回答し,補足として自由記述欄を設けた.評価期間は,初期が介入開始時,最終が3か月後とし,各期間の評価結果を比較した.AFEは,個人特性や手続き記憶を考慮した内容を提供することで,対象者の活動性の増加や興奮行動の減少が期待できるため,対象者の性別や地域特性を基に「主婦業,農作業,仕事的活動,製作活動」の4つの役割活動を挙げた.内容の選定は,作業療法士が対象者との面談,デイケア利用時の様子,能力や生活歴を考慮し,失敗体験とならない内容を選択した.AFEの実施頻度と期間は,1回30分,週に1~2回,3か月間とし,介入開始前の同意書の説明で了承が得られなかった者,3か月間の介入を継続できなかった者を除外した.
【倫理的配慮】
本介入は,当院の倫理委員会による審査及び承認を得て実施した.
【結果】
介入は,全対象がAFEの介入を希望し,3か月間継続できた6/19名が解析対象となった.6名の介入期間におけるデイケアの利用回数が3±1.1/週,AFEが合計実施回数16.3±5.4回,1週間当たりの実施回数1.36±0.46回であった.各評価結果は,初期・最終の順に,ASEAが19.3±0.49点→19.5±0.79点,BPSD+Qの重症度が13.5±13.8点→10.8点±17点,負担度が11.3点±9.5点→10.5±12.5点,アンケートにおける負担度が14.3±8.3点→11.6±7.5点で推移した.BPSDの症状は,初期・最終のBPSD+Qとアンケートの結果より,初期時に生じていた各対象の「脱抑制,繰り返し質問,介護への抵抗,物取られ妄想など」の過活動行動や「うつ,不安,アパシー,傾眠傾向,閉じこもりなど」の低活動行動の出現頻度が軽減する傾向がみられた.
【考察】
認知症デイケア利用者に対するAFEは,各対象における過活動性・低活動性BPSDの出現頻度および介護負担度を軽減した.BPSDの背景因子には,日常生活でできないことが増え,自分の存在が失われる不安や喪失体験がある.本介入においては,失敗体験とならない配慮下でのAFEが活動時の役割と達成感を提供することで,BPSDや介護負担を軽減する可能性が示唆された.