[OK-2-4] 認知症・半側空間無視を呈した症例に対するVirtual Reality・視覚探索訓練を用いた介入
【はじめに】半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:以下,USN) の介入は,非無視側へ偏向した注意を解放し無視側へ注意の移動を誘導し固定する支援が必要であり脳卒中ガイドラインでは視覚探索訓練・プリズム眼鏡を用いた訓練等が推奨度Bとなっている.また,視覚範囲を広げる方法としてVirtual Reality(以下,VR)も注目されている.一方で,認知症を有するUSN患者は課題理解の困難さや発動性低下も加わり難渋することが多いが有効なアプローチの報告は見当たらない.そこで,認知症・USNを呈した症例に対し情動・意欲に考慮した課題設定とVR・視覚探索訓練の難易度調整を行い介入した結果,一定の効果を得たため報告する.報告に際し対象者承諾・当院倫理委員会承認を得ている.
【症例紹介】80歳代男性(右利き),診断名:右側頭葉皮質下出血,既往歴:アルツハイマー型認知症,病前生活:妻と2人暮らし.見当識障害・物忘れありデイケア利用.趣味:自宅周辺の散歩.
【作業療法評価】JCS :Ⅰ-3,FIM :21/126,KF-NAP :最終得点25点(評価点数5点/2項目):重度,観察場面:左側からの声掛けに「はい」と反応あるが左側を探索する様子はなく常に右側を向いている(0/10回),車椅子移動時も視線は常に右側を向いている.妻からの情報収集:「面会では左側からの声掛けに対し反応はあるが目を合わせてくれない,散歩が趣味なので私が車椅子を押し散歩ができたら」等の発言が聞かれた.目標:左側からの声掛けに対しアイコンタクトが合う,家族との散歩時に左側の対象物を共有できる.
【方法(86〜112病日)】①解放障害に対しVRを用いた介入(VR型半側空間無視リハビリ支援システム:Vi-dere).スリットシステムを活用し右側の情報を制限しつつ左側へ注意を促し解放障害に対し介入を行った(4回).2回目より左側へ注意を解放・移動させる頭頸部回旋や仮想空間上の食べ物へ手を伸ばす没入感も観察された.
②左側への視線移動・固定に対し視覚探索訓練.家族写真を用いた介入:正面に見開きアルバムを提示し右側から左側へ視線移動を促したが,右側の写真に注意が持続し左側の写真へ注意の解放は認められなかった.その為,麻痺側上肢を机上に置き再度実施すると視線がアルバム中心まで移動可能であったが注意を固定し続ける事は難しく,右側に注意が引き付けられやすかった.その為,1枚ずつ提示する方法に変更した.1枚ずつだと左側でも注意持続が可能であった為,注意の移動・固定できる範囲に考慮し左側へ範囲を広げ麻痺側上肢に介助下で写真を持たせ注意の固定を促した.
【結果】KF-NAP:最終得点15点(評価点数3点/2項目):中等度.左側からの声掛けに対し探索しアイコンタクトが合う機会が増加した(5/10回).妻との散歩では左側の花など共有できた.妻からも「分かってくれて嬉しい,一緒に景色を共有できて嬉しい」等の発言が聞かれた.
【考察】前田(2008)は,意欲・関心に結びつく課題を設定し自己意識化行動の援助をすること・反応の仕方に注目し刺激提示を工夫開発すること等を注意点として述べている.今回,認知症により課題理解が難しい症例に対し情動・意欲を考慮した課題設定を行なった.また,VRのスリットを用いた介入により右側の情報を遮断しつつ左側へスリットが可動する事で注意の解放→移動が促せたと考える.これは,無視側へ注意を解放するため非無視側の情報を考慮する事,無視側へ注意の移動を促すため報酬価値のある対象物を提示する事,無視側での注意固定を促すため注意の移動範囲に考慮した位置に対象物を提示する事が重要と考える.これらを応用する事は認知症に加えUSNを呈する症例に対し有効である可能性が示唆された.
【症例紹介】80歳代男性(右利き),診断名:右側頭葉皮質下出血,既往歴:アルツハイマー型認知症,病前生活:妻と2人暮らし.見当識障害・物忘れありデイケア利用.趣味:自宅周辺の散歩.
【作業療法評価】JCS :Ⅰ-3,FIM :21/126,KF-NAP :最終得点25点(評価点数5点/2項目):重度,観察場面:左側からの声掛けに「はい」と反応あるが左側を探索する様子はなく常に右側を向いている(0/10回),車椅子移動時も視線は常に右側を向いている.妻からの情報収集:「面会では左側からの声掛けに対し反応はあるが目を合わせてくれない,散歩が趣味なので私が車椅子を押し散歩ができたら」等の発言が聞かれた.目標:左側からの声掛けに対しアイコンタクトが合う,家族との散歩時に左側の対象物を共有できる.
【方法(86〜112病日)】①解放障害に対しVRを用いた介入(VR型半側空間無視リハビリ支援システム:Vi-dere).スリットシステムを活用し右側の情報を制限しつつ左側へ注意を促し解放障害に対し介入を行った(4回).2回目より左側へ注意を解放・移動させる頭頸部回旋や仮想空間上の食べ物へ手を伸ばす没入感も観察された.
②左側への視線移動・固定に対し視覚探索訓練.家族写真を用いた介入:正面に見開きアルバムを提示し右側から左側へ視線移動を促したが,右側の写真に注意が持続し左側の写真へ注意の解放は認められなかった.その為,麻痺側上肢を机上に置き再度実施すると視線がアルバム中心まで移動可能であったが注意を固定し続ける事は難しく,右側に注意が引き付けられやすかった.その為,1枚ずつ提示する方法に変更した.1枚ずつだと左側でも注意持続が可能であった為,注意の移動・固定できる範囲に考慮し左側へ範囲を広げ麻痺側上肢に介助下で写真を持たせ注意の固定を促した.
【結果】KF-NAP:最終得点15点(評価点数3点/2項目):中等度.左側からの声掛けに対し探索しアイコンタクトが合う機会が増加した(5/10回).妻との散歩では左側の花など共有できた.妻からも「分かってくれて嬉しい,一緒に景色を共有できて嬉しい」等の発言が聞かれた.
【考察】前田(2008)は,意欲・関心に結びつく課題を設定し自己意識化行動の援助をすること・反応の仕方に注目し刺激提示を工夫開発すること等を注意点として述べている.今回,認知症により課題理解が難しい症例に対し情動・意欲を考慮した課題設定を行なった.また,VRのスリットを用いた介入により右側の情報を遮断しつつ左側へスリットが可動する事で注意の解放→移動が促せたと考える.これは,無視側へ注意を解放するため非無視側の情報を考慮する事,無視側へ注意の移動を促すため報酬価値のある対象物を提示する事,無視側での注意固定を促すため注意の移動範囲に考慮した位置に対象物を提示する事が重要と考える.これらを応用する事は認知症に加えUSNを呈する症例に対し有効である可能性が示唆された.