[OK-2-5] 職場復帰した高次脳機能障がいを有する事例から外来作業療法の意義を考える
【緒言】当院は,大阪府高次脳機能障がい支援拠点機関で,高次脳機能障がい外来作業療法認知訓練(以下外来)を行っている.訓練頻度は,週1~2回・1回60分で24回である.今回,退院後の外来を経て,職場復帰した事例を報告する.なお,インフォームドコンセントは,口頭と書面で得ている.
【事例紹介】対象は,当院へ救急搬送された40代後半の女性である.診断名は,くも膜下出血で,POD1リハ開始,POD37で回復期病棟へ転棟した.その後ADL自立しPOD95で退院した.外来は,POD102より開始した.病前は母子家庭で3人の子育てとフルタイムで電子機器の検品作業にて就労していた.
【初期評価】リバーミード行動記憶検査(以下RBMT)標準プロフィール(以下SPS)21点,スクリーニング(以下SS)10点.標準言語性対連合学習検査(以下S-PA)有意味10/10/10点,無意味4/8/10点.注意機能は,Symbol Digit Modality Test(以下SDMT)49%,Trail Making Test(以下TMT)A 46秒,B72秒であった.Kohs立方体組み合わせテスト(以下kohs)動作性IQ102.1点.遂行機能は,日本版BADS 遂行機能障害症候群の行動評価(以下BADs)総プロフィール18点,年齢補正98点であった.また,右上部視野欠損のため,机上課題時に右上の物品等の見落としがあった.性格は我慢強く,無理をしがちであった.ADLは自立,IADLのうち料理は義理姉のサポートを受けていた.本人のニーズは,職場復帰であった.
【介入経過】POD102記憶,注意,遂行機能の改善を目的に机上課題や職場での検品作業過程を聴取し,作業過程に即した注意課題を開始した.POD130頃から日常生活や通院後の疲労感は改善され始めるが,課題指示を聞き間違えることがあった.職場に外来通院中と知らせるように指導した.POD150頃より職場復帰の検討を開始した.ただし,2課題同時作業で処理速度が低下するため,職場復帰の際,単一作業から開始するように指導した.POD170頃より短時間勤務(3時間程度)で週3回の職場復帰となった.仕事内容は単純な検品作業のみだったが,病前より約1.5倍の作業時間を要した.また,検品作業以外の業者対応と検品作業の同時遂行できるような具体策を指導した.POD210頃より5時間勤務で週4日勤務となり,事務作業を含む検品作業もミスなく可能となり,検品時間も短縮し効率性が増してきた.POD240頃より8時間勤務で週5日(内1日外来で通院)のフルタイム勤務となった.
【結果】RBMTにおけるSPS22点,SS10点.S-PA 有意味10/10/10点,無意味1/4/8点であった.SDMTは,53%.TMTは,A34秒,B54秒.Kohsの動作性IQは110.4であった.BADs総プロフィール18点,年齢補正98点であった.視野欠損は残存しているが,検品作業時の見落としはなくなった.IADLも自立し,子供の学校行事のサポートや地域活動にも参加できるようになった.外来は,仕事を含む生活で難しいと感じたことを話し,改善策を考えられる場所であったと話され,POD282で終了した.
【考察】高次脳機能障害支援手引きには,医学的リハは開始から最大6か月実施し,その後必要に応じ職能訓練など全体で1年間の訓練は望ましいとされている.今回,軽度の高次脳機能障害であったが,職場復帰に必要な検品作業における認知訓練や精神作業性の疲労の克服など,完全に職場復帰できるまでに9か月を要した.
病気や事故後の高次脳機能障がい者の職場復帰には,長期間の認知的作業療法に加え,個々の作業過程を安全にミスなく遂行できる職能訓練と改善に応じた職場との調整が必要で,その受け皿として外来OTの意義があると考える.
【事例紹介】対象は,当院へ救急搬送された40代後半の女性である.診断名は,くも膜下出血で,POD1リハ開始,POD37で回復期病棟へ転棟した.その後ADL自立しPOD95で退院した.外来は,POD102より開始した.病前は母子家庭で3人の子育てとフルタイムで電子機器の検品作業にて就労していた.
【初期評価】リバーミード行動記憶検査(以下RBMT)標準プロフィール(以下SPS)21点,スクリーニング(以下SS)10点.標準言語性対連合学習検査(以下S-PA)有意味10/10/10点,無意味4/8/10点.注意機能は,Symbol Digit Modality Test(以下SDMT)49%,Trail Making Test(以下TMT)A 46秒,B72秒であった.Kohs立方体組み合わせテスト(以下kohs)動作性IQ102.1点.遂行機能は,日本版BADS 遂行機能障害症候群の行動評価(以下BADs)総プロフィール18点,年齢補正98点であった.また,右上部視野欠損のため,机上課題時に右上の物品等の見落としがあった.性格は我慢強く,無理をしがちであった.ADLは自立,IADLのうち料理は義理姉のサポートを受けていた.本人のニーズは,職場復帰であった.
【介入経過】POD102記憶,注意,遂行機能の改善を目的に机上課題や職場での検品作業過程を聴取し,作業過程に即した注意課題を開始した.POD130頃から日常生活や通院後の疲労感は改善され始めるが,課題指示を聞き間違えることがあった.職場に外来通院中と知らせるように指導した.POD150頃より職場復帰の検討を開始した.ただし,2課題同時作業で処理速度が低下するため,職場復帰の際,単一作業から開始するように指導した.POD170頃より短時間勤務(3時間程度)で週3回の職場復帰となった.仕事内容は単純な検品作業のみだったが,病前より約1.5倍の作業時間を要した.また,検品作業以外の業者対応と検品作業の同時遂行できるような具体策を指導した.POD210頃より5時間勤務で週4日勤務となり,事務作業を含む検品作業もミスなく可能となり,検品時間も短縮し効率性が増してきた.POD240頃より8時間勤務で週5日(内1日外来で通院)のフルタイム勤務となった.
【結果】RBMTにおけるSPS22点,SS10点.S-PA 有意味10/10/10点,無意味1/4/8点であった.SDMTは,53%.TMTは,A34秒,B54秒.Kohsの動作性IQは110.4であった.BADs総プロフィール18点,年齢補正98点であった.視野欠損は残存しているが,検品作業時の見落としはなくなった.IADLも自立し,子供の学校行事のサポートや地域活動にも参加できるようになった.外来は,仕事を含む生活で難しいと感じたことを話し,改善策を考えられる場所であったと話され,POD282で終了した.
【考察】高次脳機能障害支援手引きには,医学的リハは開始から最大6か月実施し,その後必要に応じ職能訓練など全体で1年間の訓練は望ましいとされている.今回,軽度の高次脳機能障害であったが,職場復帰に必要な検品作業における認知訓練や精神作業性の疲労の克服など,完全に職場復帰できるまでに9か月を要した.
病気や事故後の高次脳機能障がい者の職場復帰には,長期間の認知的作業療法に加え,個々の作業過程を安全にミスなく遂行できる職能訓練と改善に応じた職場との調整が必要で,その受け皿として外来OTの意義があると考える.