[OK-3-1] 在宅認知症の人への作業療法の訪問による介入の効果
【はじめに】 令和元年6月に取りまとめられた認知症施策推進大綱には,「認知症の人に対するリハビリテーションについては,実際に生活する場面を念頭に置きつつ,各人が有する認知機能等の能力を見極め,最大限に活かしながら日常の生活を継続できるようすることが重要である.このため,認知症の生活機能の改善を目的とした認知症のリハビリ技法の開発,事例収集及び効果検証を実施する」と掲げられた.
【目的】認知症の生活機能の改善を目的とした認知症のリハビリ技法の開発を目的に,作業療法士が何を目的に,訪問の場で認知症の人にどの様な支援を提供しているのか,また,その効果を明らかとするため,認知症の人に訪問を実施している医療機関を対象に,訪問を実施したデータを抽出し,その内容及び効果を検証する.(承認番号:群馬医療福祉大学RS22-16)
【対象及び方法】2019年~2020年の間,石川県立こころの病院のA医師が担当する外来患者でMMSE,Dementia Behavior Scale-13(DBD-13),Barthel Index(BI),Hyogo Activities of Daily Living Scale(HADLS),Frenchay Activities Index(FAI),J-ZBI_8が診察時及び概ね3か月後の2回の評価指標がカルテに残っていた患者について,訪問を実施した事例(介入群)と実施しなかった事例(対照群)を抽出し,後方視により分析した.また,介入群について,医師の指示の内容,目的とした生活行為,介入方法,訪問実施時間と頻度についても明らかとした.
【結果】(1)介入群は男性が3名,女性が11名の14名,対照群は男性9名,女性16名の25名であった.介入群の年齢は73.3±10.8歳で,対照群は77.5±6.5歳であった.介入群の診断名はアルツハイマー型認知症が12名,レビー小体型認知症が1名,軽度認知障害が1名であった.一方,対照群は,アルツハイマー型認知症が22名,レビー小体型認知症が1名,軽度認知障害が2名であった.(2)介入群の医師の指示内容は,生活の指導が4件と最多で,次いで生活機能の評価,家事能力の維持・向上,生活環境の構造化による悪化予防がいずれも3件であった.(3) 目標とした生活行為は,BADLに関するものが5件(入浴3件,トイレ1件,食事1件)で,IADLに関するものが27件(余暇活動5件,整理整頓4件,洗濯と調理,コミュニケーション,日時・日課の管理が各3件,掃除と服薬管理,買い物等外出が各2件)であった.(4)介入内容は,環境調整と反復練習は85.7%で実施されており,介護者指導は57.1%で実施されていた.(5) 訪問回数は平均1.6回で,一回の訪問時間は平均66.8分であった.(6)各評価指標の前後比較では,介入群,対照群ともにMMSEとBIでは差がなく,DBD-13も介入群で改善傾向を認めるが統計的な有意差はなかった.HADLSとFAIにおいては,対照群では有意に悪化(HADLS, p=0.02; FAI, p=0.02)を認めたが,介入群では維持・改善の傾向(HADLS, p=0.65; FAI, p=0.10)を認めた.J-ZBI_8は,介入群で改善の傾向がみられたが統計的有意差は認めなかった(介入群p=0.32,対照群p=0.57).
【考察】今回,後方視によりカルテの既存データをもとに解析を行った.少ないデータではあったが,作業療法士による実際の生活の場での指導を受けることで,IADLの評価であるFAIにおいて,介入群の改善が見られ,本人がIADLに再び参加したことが伺える.また,本人がIADLに参加することで家族の負担感が増加することを推測していたが,結果としては介護負担が改善していた.今後はさらにデータ数を増やし,訪問による生活行為ごとの介入内容を明らかにしていくことが求められる.※令和4年度老人保健健康増進等事業の一環として実施.
【目的】認知症の生活機能の改善を目的とした認知症のリハビリ技法の開発を目的に,作業療法士が何を目的に,訪問の場で認知症の人にどの様な支援を提供しているのか,また,その効果を明らかとするため,認知症の人に訪問を実施している医療機関を対象に,訪問を実施したデータを抽出し,その内容及び効果を検証する.(承認番号:群馬医療福祉大学RS22-16)
【対象及び方法】2019年~2020年の間,石川県立こころの病院のA医師が担当する外来患者でMMSE,Dementia Behavior Scale-13(DBD-13),Barthel Index(BI),Hyogo Activities of Daily Living Scale(HADLS),Frenchay Activities Index(FAI),J-ZBI_8が診察時及び概ね3か月後の2回の評価指標がカルテに残っていた患者について,訪問を実施した事例(介入群)と実施しなかった事例(対照群)を抽出し,後方視により分析した.また,介入群について,医師の指示の内容,目的とした生活行為,介入方法,訪問実施時間と頻度についても明らかとした.
【結果】(1)介入群は男性が3名,女性が11名の14名,対照群は男性9名,女性16名の25名であった.介入群の年齢は73.3±10.8歳で,対照群は77.5±6.5歳であった.介入群の診断名はアルツハイマー型認知症が12名,レビー小体型認知症が1名,軽度認知障害が1名であった.一方,対照群は,アルツハイマー型認知症が22名,レビー小体型認知症が1名,軽度認知障害が2名であった.(2)介入群の医師の指示内容は,生活の指導が4件と最多で,次いで生活機能の評価,家事能力の維持・向上,生活環境の構造化による悪化予防がいずれも3件であった.(3) 目標とした生活行為は,BADLに関するものが5件(入浴3件,トイレ1件,食事1件)で,IADLに関するものが27件(余暇活動5件,整理整頓4件,洗濯と調理,コミュニケーション,日時・日課の管理が各3件,掃除と服薬管理,買い物等外出が各2件)であった.(4)介入内容は,環境調整と反復練習は85.7%で実施されており,介護者指導は57.1%で実施されていた.(5) 訪問回数は平均1.6回で,一回の訪問時間は平均66.8分であった.(6)各評価指標の前後比較では,介入群,対照群ともにMMSEとBIでは差がなく,DBD-13も介入群で改善傾向を認めるが統計的な有意差はなかった.HADLSとFAIにおいては,対照群では有意に悪化(HADLS, p=0.02; FAI, p=0.02)を認めたが,介入群では維持・改善の傾向(HADLS, p=0.65; FAI, p=0.10)を認めた.J-ZBI_8は,介入群で改善の傾向がみられたが統計的有意差は認めなかった(介入群p=0.32,対照群p=0.57).
【考察】今回,後方視によりカルテの既存データをもとに解析を行った.少ないデータではあったが,作業療法士による実際の生活の場での指導を受けることで,IADLの評価であるFAIにおいて,介入群の改善が見られ,本人がIADLに再び参加したことが伺える.また,本人がIADLに参加することで家族の負担感が増加することを推測していたが,結果としては介護負担が改善していた.今後はさらにデータ数を増やし,訪問による生活行為ごとの介入内容を明らかにしていくことが求められる.※令和4年度老人保健健康増進等事業の一環として実施.