[OK-3-2] 生活期の両下肢切断患者に対する長期的な目標を持った理学療法及び作業療法介入が症例の主体性出現及びQOLの向上に繋がった一例
【はじめに】生活期のリハビリテーション(以下,リハ)では限られた時間の中で効果的なリハビリを展開していく必要がある.今回,両下肢切断後に当院医療療養病床へ入院となり,臥床傾向であった症例に対して,長期的な目標を持って理学療法(以下,PT)介入,作業療法(以下,OT)介入を行うことにより症例の自発性を引き出し,QOLの向上へと繋がったため,以下に報告する.
【事例紹介】症例は80歳代男性.X-2年に当院医療療養病床へ入院となり, X年より担当となる.症例は既往に左大腿切断,右下腿切断があり,認知機能の低下が見られた.日中は臥床傾向であり,覚醒レベルは低く,声かけへの反応も乏しかった.症例は右利きだが,右手指の拘縮のため食事は左上肢で自己摂取していた.しかし,食事中に姿勢が崩れ,食べこぼしが見られた.その他の活動は全介助で実施していた.リハは月13単位であり拘縮予防,ベッドアップが中心であった.
【初期評価】日常生活動作能力(以下,FIM)は41点(運動:20点/認知:21点).人間作業モデリングスクリーニングツール(以下,MOHOST)は31点,認知症高齢者の健康関連QOL(以下,QOL-d)は47点,日中は傾眠傾向であった.
【理学療法・作業療法介入】
第1期(1〜90病日)では覚醒レベルの向上,離床時間の延長を目的としたPT介入を開始した.車椅子移乗練習を開始.車椅子座位では覚醒が向上し,声掛けへの反応も良好であったが10分程度で血圧の低下を認めた.そのため,リクライニング車椅子を使用し,離床時間の延長を目指した.座位時間は40分以上可能となったが,動作練習や余暇活動では,諦めが見られ継続した練習が困難であった.食事に対しては受け入れが良いため,OTに相談し,担当を変更した.
第2期(90〜210病日)では座位姿勢,食事動作の安定を目指して,シーティング及び補助具を使用した食事動作練習を開始した.症例は介入の中で,右手指の拘縮,随意性の低下を受容し,左手での食事動作への受け入れがみられた.その後も,症例の受け入れが良い介入を模索することで継続した動作練習が可能となった.食事動作時の姿勢の崩れは軽減し,上肢の随意性も向上し,食べこぼしも減少した.食事動作が安定した為,PTへ担当を変更した.
第3期(210〜300病日)ではOTと協同し,症例のQOL向上,離床意欲の向上を目指した介入を開始した.車椅子での外出やリハ室・談話室でのリハ,徒手機能練習時に症例の興味のある食事に関する会話を積極的に行なった.症例は担当を認識し,リハ参加への意欲的な発言や笑顔が多く見られるようになった.リハ室・談話室でのリハを行うことで他スタッフとの関わりを行う機会を与えた.最終評価時には,日常生活においても他のスタッフにも自身の希望等を伝える機会が増加し,スタッフから声掛けを行う機会が増加した.
【結果】MOHOST(介入前→第1期後→第2期後→第3期後)は31点→44点→57点→68点であった.QOL-dは47点→54点→61点→69点であった.
【考察】生活期では限られた時間の中で,リハを提供していく必要がある.今回, PTの介入では車椅子座位可能時間の延長は可能であったが,症例の興味を引き出し,介入に活かすことが難しかった.OTと協同して関わることで,症例自身の興味を引き出し,自発的な発言の増加や離床意欲の向上へと繋がった可能性がある.
【倫理的配慮・説明】本報告は当院倫理委員会の承認(240208-2)を得た.対象及び家族にはヘルシンキ宣言に基づき本報告の趣旨を口頭及び書面にて説明し,同意を得た.
【事例紹介】症例は80歳代男性.X-2年に当院医療療養病床へ入院となり, X年より担当となる.症例は既往に左大腿切断,右下腿切断があり,認知機能の低下が見られた.日中は臥床傾向であり,覚醒レベルは低く,声かけへの反応も乏しかった.症例は右利きだが,右手指の拘縮のため食事は左上肢で自己摂取していた.しかし,食事中に姿勢が崩れ,食べこぼしが見られた.その他の活動は全介助で実施していた.リハは月13単位であり拘縮予防,ベッドアップが中心であった.
【初期評価】日常生活動作能力(以下,FIM)は41点(運動:20点/認知:21点).人間作業モデリングスクリーニングツール(以下,MOHOST)は31点,認知症高齢者の健康関連QOL(以下,QOL-d)は47点,日中は傾眠傾向であった.
【理学療法・作業療法介入】
第1期(1〜90病日)では覚醒レベルの向上,離床時間の延長を目的としたPT介入を開始した.車椅子移乗練習を開始.車椅子座位では覚醒が向上し,声掛けへの反応も良好であったが10分程度で血圧の低下を認めた.そのため,リクライニング車椅子を使用し,離床時間の延長を目指した.座位時間は40分以上可能となったが,動作練習や余暇活動では,諦めが見られ継続した練習が困難であった.食事に対しては受け入れが良いため,OTに相談し,担当を変更した.
第2期(90〜210病日)では座位姿勢,食事動作の安定を目指して,シーティング及び補助具を使用した食事動作練習を開始した.症例は介入の中で,右手指の拘縮,随意性の低下を受容し,左手での食事動作への受け入れがみられた.その後も,症例の受け入れが良い介入を模索することで継続した動作練習が可能となった.食事動作時の姿勢の崩れは軽減し,上肢の随意性も向上し,食べこぼしも減少した.食事動作が安定した為,PTへ担当を変更した.
第3期(210〜300病日)ではOTと協同し,症例のQOL向上,離床意欲の向上を目指した介入を開始した.車椅子での外出やリハ室・談話室でのリハ,徒手機能練習時に症例の興味のある食事に関する会話を積極的に行なった.症例は担当を認識し,リハ参加への意欲的な発言や笑顔が多く見られるようになった.リハ室・談話室でのリハを行うことで他スタッフとの関わりを行う機会を与えた.最終評価時には,日常生活においても他のスタッフにも自身の希望等を伝える機会が増加し,スタッフから声掛けを行う機会が増加した.
【結果】MOHOST(介入前→第1期後→第2期後→第3期後)は31点→44点→57点→68点であった.QOL-dは47点→54点→61点→69点であった.
【考察】生活期では限られた時間の中で,リハを提供していく必要がある.今回, PTの介入では車椅子座位可能時間の延長は可能であったが,症例の興味を引き出し,介入に活かすことが難しかった.OTと協同して関わることで,症例自身の興味を引き出し,自発的な発言の増加や離床意欲の向上へと繋がった可能性がある.
【倫理的配慮・説明】本報告は当院倫理委員会の承認(240208-2)を得た.対象及び家族にはヘルシンキ宣言に基づき本報告の趣旨を口頭及び書面にて説明し,同意を得た.