[OK-3-3] 箱づくり法から得られたパーキンソン病患者の作業遂行の特徴
【はじめに】パーキンソン病(以下PD)は運動機能障害と認知機能障害を呈する.運動機能障害は認識しやすい一方,認知機能障害は認識しにくく,病状の誤解や過度な期待を生じやすい.今回PDが患者の作業遂行に与える影響を明らかにし,適切に支援するため箱づくり法を実施した.箱づくり法から得られたPD患者の作業遂行の特徴と,支援方法について考察を加えて報告する.【倫理的配慮】本研究の参加者には書面による説明と署名による同意を得た.本研究は鹿教湯病院(以下当院)研究委員会による承認を受けている.【対象】当院に2023年Lee Silverman voice treatment® BIG及びLOUDを目的に入院したPD患者でHoehn&Yahrの重症度分類Ⅲ,日常生活活動は自立,コース立方体組み合わせテストIQ(以下コースIQ)70以上の9名:男性1名,女性8名,平均年齢70.3(4.6)歳を対象とした.【方法】入院時に統一パーキンソン病評価尺度(以下MDS-UPDRS),Montreal Cognitive Assessment日本語版(以下MoCA-J),Frontal Assessment Battery(以下FAB),コースIQ,簡易上肢機能検査(以下STEF)を評価.箱づくり法は入院3~4週後に実施した.それぞれ平均と標準偏差を求めた.【結果】MDS-UPDRS Part1:10.1(4.6),Part2:9.8(6.4),Part3:13.7(9.8),Part4:3.6(2.9),MoCA-J:25.2(3.1).FAB:15.8(1.6),コースIQ:80.3(7.2).STEF右:89.3(6.8),左:89.8(6.9)となった.箱づくり法の結果.経過時間(秒):総実施時間3455.2(649.2),導入期合計474.5(63.9),展開図作成期550.3(332.2),裁断仮組立期534.7(239.2),接着仕上げ期338.0(140.1),休憩切り替え期99.7(50.3),説明記入期730.8(223.7),面接期726.6(121.2).過程別得点:導入3.79(1.10),展開図作成3.29(1.42),裁断仮組立3.20(1.09),接着仕上げ3.18(1.03),作業習慣3.02(1.18),休憩切り替え4.44(0.69),言語面接3.71(0.96).機能別得点:作品交流3.57(1.05),出会い3.97(0.97),二者交流4.25(0.65),間合い4.61(0.77),役割関係4.05(0.62),イメージ着手3.88(1.09),手順段取り3.08(1.22),可逆的思考2.64(1.26),課題集中2.66(0.78),状況対処3.44(1.01).箱づくり体験:場面緊張感と援助希求感2.20(1.08),順序と正確さの難しさ3.09(0.87),予測判断の不全感2.95(0.70),自己決定不安2.52(0.89),達成感2.11(0.84),愛着心1.86(0.84),安堵感3.37(0.71),対処回避感1.92(0.96),不快気分2.55(0.86),疲労感2.06(1.01),検査緊張感2.42(1.02),段取り意識2.57(0.89),自己表現感2.74(0.86)となった.【箱づくり法から得られたPD患者の作業遂行の特徴】課題が困難でも独力で解決しようとして,時間がかかる傾向があり,認知機能低下を認識せず作業に取り組み戸惑う傾向が伺える.箱制作期全般の得点が下がっており,認知機能障害と身体機能障害の双方の影響を受けている.作業習慣の低下から多重課題の困難さが伺える.全般的に対人領域に比べ課題領域の得点が低く,作業遂行の問題に周囲の人が気づかない可能性が高い.課題困難感領域が高く,不快体験領域が低くなっている.気づかないうちに疲労や姿勢崩れなど身体症状を抱えてしまう可能性がある.【考察】自覚しにくい疲労や身体症状の蓄積を未然に防ぐには,時間配分に注意が必要である.しかし,PD患者は多重課題に問題があり,周囲の声かけなどの支援が欠かせない.一方,周囲の支援者はPD患者の作業遂行の困難さに気づきにくいため,患者とともに家族や支援者がPDの影響を理解する必要がある.それが,PD患者への誤解や過度な期待を解き,PD患者への個別的な支援につながると考える.