[OK-3-4] 外来リハビリテーションを経て復職に至った高次脳機能障害を呈する一事例
序論・背景
城西クリニック(以下,当院)は地域医療を基盤とするクリニックとして1996年に設立し,脳損傷,神経難病を抱える方の自己実現を目標に外来リハビリテーション(以下,リハ)を展開している.高橋紀代(2017)は外来リハの役割としては機能改善,社会復帰・参加と述べており,Gabriela(2022)は外来リハでは脳損傷者の復職を促進すると述べている.今回,事例を通じ高次脳機能障害者に対する外来リハでの復職支援について,奏功した点,改善点を振り返り報告したい.本報告に関して所属先の倫理委員会より承認を得ている.尚,事例に対し口頭および書面にて説明し書面にて同意を得ている.報告にあたり利益相反はない.
事例紹介・経過
基本情報:A氏,20代男性,父母と3人暮らし.疾患名:脳挫傷(右側頭葉).障害名:高次脳機能障害.X年,乗用車で走行中に自動車事故に遭い救急搬送される.回復期リハを経てX+3ヶ月,当院にてリハ開始.外来リハは週に1回1時間の頻度にて実施.作業療法評価:WAIS-Ⅳ:FSIQ:114,VCI:121,PRI:122,WM:112,PS:82.Tapping Span(backward):4桁,SDMT:34.5%.WMS-R:注意・集中力:97.その他神経心理学的検査は標準値以上.運動麻痺は無し.職業:血液事業に従事.業務内容は接客,データ入力業務.
<介入初期>
認知機能リハ,生活課題の抽出とスマホを使った代償方法の確認を実施.OTは障害理解を自然に進められるよう働きかける.A氏,家族のみでの職場面談を実施し,週4日(9時-13時)にてリハ出勤開始となる.リハ出勤中も仕事・日常生活と問題なく実施.X+6ヶ月,障害者雇用枠での復職目的にて障害者手帳を申請し,精神障害者保健福祉手帳3級を取得する.X+7ヶ月,障害者雇用枠,週5日(8時30分-17時30分)にて復職となる.
<介入中期>
X+10ヶ月,OTリハにて①接客ブースが隣接しており,他者の声が支障となる②職場の理解が不十分③食欲不振,睡眠が十分取れないという問題が散見され,職場に改善を試みるも理解が得られず再度休職となる.職場面談を実施し配置転換,ジョブコーチの導入を推奨し,社員への症状説明を実施.X+11ヶ月,リハ出勤を敢行し週4日(8時30分-15時)にて復職となる.
<介入後期>
配置転換後の業務は品質管理,データ入力等の事務作業を実施し,苦手に対するメモ帳,リマインダー,見直し等の習慣づけを駆使し,現在まで就労継続中.A氏の遂行能力が高いと合理的配慮が欠如してくるといった障害者雇用に対する職場の理解に一定の課題はあるも,仕事・日常生活のリズムは安定してきた.現在は就労定着に向けた支援を継続中(外来リハ2回1ヶ月)であり,X+1年6ヶ月から週5日(8時30分〜17時30分)勤務を期待されている.
考察
職場やジョブコーチ,A氏,家族と連携を行い,役割分担支援を提供できたことが就労定着に繋がっている.その中でOTはA氏の障害理解に携わり,課題を言語化し,働きやすい環境調整を提供できた.
また心理社会的に込み入ったケースとなると,引き継ぎに関して細やかな情報のやり取りが行えずに,また,家族の希望や本人の精神的な変動も見られるため,地域の就労支援機関に繋がり辛いケースもある.
城西クリニック(以下,当院)は地域医療を基盤とするクリニックとして1996年に設立し,脳損傷,神経難病を抱える方の自己実現を目標に外来リハビリテーション(以下,リハ)を展開している.高橋紀代(2017)は外来リハの役割としては機能改善,社会復帰・参加と述べており,Gabriela(2022)は外来リハでは脳損傷者の復職を促進すると述べている.今回,事例を通じ高次脳機能障害者に対する外来リハでの復職支援について,奏功した点,改善点を振り返り報告したい.本報告に関して所属先の倫理委員会より承認を得ている.尚,事例に対し口頭および書面にて説明し書面にて同意を得ている.報告にあたり利益相反はない.
事例紹介・経過
基本情報:A氏,20代男性,父母と3人暮らし.疾患名:脳挫傷(右側頭葉).障害名:高次脳機能障害.X年,乗用車で走行中に自動車事故に遭い救急搬送される.回復期リハを経てX+3ヶ月,当院にてリハ開始.外来リハは週に1回1時間の頻度にて実施.作業療法評価:WAIS-Ⅳ:FSIQ:114,VCI:121,PRI:122,WM:112,PS:82.Tapping Span(backward):4桁,SDMT:34.5%.WMS-R:注意・集中力:97.その他神経心理学的検査は標準値以上.運動麻痺は無し.職業:血液事業に従事.業務内容は接客,データ入力業務.
<介入初期>
認知機能リハ,生活課題の抽出とスマホを使った代償方法の確認を実施.OTは障害理解を自然に進められるよう働きかける.A氏,家族のみでの職場面談を実施し,週4日(9時-13時)にてリハ出勤開始となる.リハ出勤中も仕事・日常生活と問題なく実施.X+6ヶ月,障害者雇用枠での復職目的にて障害者手帳を申請し,精神障害者保健福祉手帳3級を取得する.X+7ヶ月,障害者雇用枠,週5日(8時30分-17時30分)にて復職となる.
<介入中期>
X+10ヶ月,OTリハにて①接客ブースが隣接しており,他者の声が支障となる②職場の理解が不十分③食欲不振,睡眠が十分取れないという問題が散見され,職場に改善を試みるも理解が得られず再度休職となる.職場面談を実施し配置転換,ジョブコーチの導入を推奨し,社員への症状説明を実施.X+11ヶ月,リハ出勤を敢行し週4日(8時30分-15時)にて復職となる.
<介入後期>
配置転換後の業務は品質管理,データ入力等の事務作業を実施し,苦手に対するメモ帳,リマインダー,見直し等の習慣づけを駆使し,現在まで就労継続中.A氏の遂行能力が高いと合理的配慮が欠如してくるといった障害者雇用に対する職場の理解に一定の課題はあるも,仕事・日常生活のリズムは安定してきた.現在は就労定着に向けた支援を継続中(外来リハ2回1ヶ月)であり,X+1年6ヶ月から週5日(8時30分〜17時30分)勤務を期待されている.
考察
職場やジョブコーチ,A氏,家族と連携を行い,役割分担支援を提供できたことが就労定着に繋がっている.その中でOTはA氏の障害理解に携わり,課題を言語化し,働きやすい環境調整を提供できた.
また心理社会的に込み入ったケースとなると,引き継ぎに関して細やかな情報のやり取りが行えずに,また,家族の希望や本人の精神的な変動も見られるため,地域の就労支援機関に繋がり辛いケースもある.