[OL-1-3] 目標設定/達成シートを用いた共同目標設定が上腕筋電義手の定着に繋がった事例
<はじめに>
田中らによると上腕の筋電義手患者は義手使用の中断率が高いことを報告している.筋電義手が定着する因子として様々な報告がされているが,目標設定の実施と義手の定着度の関連について述べられている研究は少ない.今回,上腕筋電義手を使用している事例に独自で作成した目標設定/達成シートを使用し,共同で目標設定を行い,義手操作訓練を行った.その結果,筋電義手の生活場面での定着に繋がったため,以下に報告する.尚,本報告は本人より同意を得ている.
<事例情報>
60代男性(A氏).右利き.工場勤務.X-3年,右上腕切断受傷.X-2年,外来リハビリテーションにて筋電義手訓練開始.X年より,前担当者が退職し,筆者が担当となる.義手:ソケット:オープンショルダー式,肘継手部:アクソンアーム,手継手部:ミケランジェロハンド,本人の希望は「筋電義手のメリットを知って生活で使えるようになりたい」.性格は向上心が高く,リハビリに意欲的であった.能動義手の使用経験あり.
<評価>
切断肢の状態:断端長29.4cm,骨端周径20.3cm,上腕標準断端,断端の皮膚状態:良好,幻肢:なし,疼痛:Numerical Rating Scale(NRS)3程度の疼痛あり,ROM:肩関節屈曲180/180,外転180/180,MMT:肩関節屈曲5/5,外転5/5,義手の使用状況:週1回1時間.リハビリ時のみ使用.自宅では殆ど使用せず.ADL:片手使用で自立.目標設定/達成シート:「ネクタイを結ぶ」遂行度5,満足度6.「靴下を履く」遂行度3,満足度5.「はさみで紙を切る」遂行度1,満足度1.
<介入経過>
前担当者の介入期間で基本操作,応用操作訓練は終了していたため,義手の日常生活での使用に焦点を当てた介入を開始した.頻度は週1回40分で実施.介入期間は3ヶ月間だった.目標設定/達成シートを用いて面談を実施し,義手を使用して取得したい生活動作の抽出を行った.面談の結果,合計15つの作業活動の取得を目標として設定した.目標設定した生活動作を外来リハビリの時間で実践評価し,現状の遂行度と満足度を自己評価した.この自己評価に基づき,本人の意見を交えて生活動作を「簡単/普通/難しい」の3つのカテゴリーに分類し,難易度が低い生活動作から外来リハビリで訓練を行った.さらに,自宅の生活場面でも筋電義手を使用してもらい,使用感についてフィードバックを得た.筋電義手の使用方法の改善については患者との話し合いを通じて検討を進めた.
<結果>
義手の使用状況は1日2時間着用するようになり,自宅での使用頻度が増加した.休日は8時間着用するようになった.本人の変化としては義手の使用方法を提案するようになった.目標設定/達成シートでは「ネクタイを結ぶ」遂行度7,満足度6.「靴下を履く」遂行度6,満足度5.「はさみで紙を切る」遂行度5,満足度1と各項目で遂行度の向上が見られた.満足度は点数に変化がなかった.
<考察>
Biddisらによれば,義手を継続して使用する上で重要な2つの要素がある.一つ目は義手の性能に対する満足,二つ目は義手を用いて何かを行いたいというニードを掘り起こすことである.本事例では,目標設定/達成シートを活用した目標設定プロセスが,筋電義手が日常生活における有用性を認識させ,義手の性能への満足感を高めることに繋がった.また,目標達成へのプロセスを通じて,A氏が日常や職場での活動で筋電義手を使用する場面を想像する機会を提供したことが,義手を用いたニードを発掘することに繋がったと考える.従って,共同での目標設定は筋電義手の定着に寄与するという示唆が得られた.
田中らによると上腕の筋電義手患者は義手使用の中断率が高いことを報告している.筋電義手が定着する因子として様々な報告がされているが,目標設定の実施と義手の定着度の関連について述べられている研究は少ない.今回,上腕筋電義手を使用している事例に独自で作成した目標設定/達成シートを使用し,共同で目標設定を行い,義手操作訓練を行った.その結果,筋電義手の生活場面での定着に繋がったため,以下に報告する.尚,本報告は本人より同意を得ている.
<事例情報>
60代男性(A氏).右利き.工場勤務.X-3年,右上腕切断受傷.X-2年,外来リハビリテーションにて筋電義手訓練開始.X年より,前担当者が退職し,筆者が担当となる.義手:ソケット:オープンショルダー式,肘継手部:アクソンアーム,手継手部:ミケランジェロハンド,本人の希望は「筋電義手のメリットを知って生活で使えるようになりたい」.性格は向上心が高く,リハビリに意欲的であった.能動義手の使用経験あり.
<評価>
切断肢の状態:断端長29.4cm,骨端周径20.3cm,上腕標準断端,断端の皮膚状態:良好,幻肢:なし,疼痛:Numerical Rating Scale(NRS)3程度の疼痛あり,ROM:肩関節屈曲180/180,外転180/180,MMT:肩関節屈曲5/5,外転5/5,義手の使用状況:週1回1時間.リハビリ時のみ使用.自宅では殆ど使用せず.ADL:片手使用で自立.目標設定/達成シート:「ネクタイを結ぶ」遂行度5,満足度6.「靴下を履く」遂行度3,満足度5.「はさみで紙を切る」遂行度1,満足度1.
<介入経過>
前担当者の介入期間で基本操作,応用操作訓練は終了していたため,義手の日常生活での使用に焦点を当てた介入を開始した.頻度は週1回40分で実施.介入期間は3ヶ月間だった.目標設定/達成シートを用いて面談を実施し,義手を使用して取得したい生活動作の抽出を行った.面談の結果,合計15つの作業活動の取得を目標として設定した.目標設定した生活動作を外来リハビリの時間で実践評価し,現状の遂行度と満足度を自己評価した.この自己評価に基づき,本人の意見を交えて生活動作を「簡単/普通/難しい」の3つのカテゴリーに分類し,難易度が低い生活動作から外来リハビリで訓練を行った.さらに,自宅の生活場面でも筋電義手を使用してもらい,使用感についてフィードバックを得た.筋電義手の使用方法の改善については患者との話し合いを通じて検討を進めた.
<結果>
義手の使用状況は1日2時間着用するようになり,自宅での使用頻度が増加した.休日は8時間着用するようになった.本人の変化としては義手の使用方法を提案するようになった.目標設定/達成シートでは「ネクタイを結ぶ」遂行度7,満足度6.「靴下を履く」遂行度6,満足度5.「はさみで紙を切る」遂行度5,満足度1と各項目で遂行度の向上が見られた.満足度は点数に変化がなかった.
<考察>
Biddisらによれば,義手を継続して使用する上で重要な2つの要素がある.一つ目は義手の性能に対する満足,二つ目は義手を用いて何かを行いたいというニードを掘り起こすことである.本事例では,目標設定/達成シートを活用した目標設定プロセスが,筋電義手が日常生活における有用性を認識させ,義手の性能への満足感を高めることに繋がった.また,目標達成へのプロセスを通じて,A氏が日常や職場での活動で筋電義手を使用する場面を想像する機会を提供したことが,義手を用いたニードを発掘することに繋がったと考える.従って,共同での目標設定は筋電義手の定着に寄与するという示唆が得られた.