[OL-1-4] 企業との産学連携による自助具開発の試み
~業務課題の解決に向けて~
【はじめに】久留米大学医療センター(以下当院)では,関節外科センターを併設し,人工股関節置換術(以下THA)は年間250例ほど行われている.日常生活指導において術後の脱臼予防のため,靴下を履く際はソックスエイドを使用するよう指導している.自助具は作業療法士にて手作りした物(以下DIY)を提供しているため,耐久性や安全面,生産効率性で問題が生じていた.この業務課題を解消すべく外部の企業と製品の共同開発を行った.今回,その取り組みについて報告を行う.
【製品開発の経緯】当院では,ソックスエイドの指導において当初既製品を使用していたが,患者より使用感,価格等に問題があり受け入れは良くなかった.その対応策としてDIYで提供を行った.使用感は良かったが,診療の時間の間に作成しているため業務の負担も多い.更にPL法の問題など医療安全面からも問題が指摘されていた.そこで,当院の取り組みを活かし,企業との連携により既製品の問題点(素材,耐久性,美観)を改善した新たな製品が開発できれば,多くの患者さんが満足され,業務課題も解決すると考えた.
まず当大学の産連担当部署に相談し地域企業の紹介を受け,当院作成の自助具を紹介し,共同開発に至った.開発の中で,SDGsの観点と価格について配慮した結果,車のエアバッグ廃材などを取り入れ試作品を検討した.商品の形状,デザインについては我々の実施経験を提供しながら検討を重ねた.試作品の作成,仕様検討など定期的に会議を開催し,進捗状況を共有した.試作品の製作を進めながら実証実験にて有効性を確認した.なお本実験は,当院の倫理委員会の承認を得て実施した.
【検証実験】対象は当院THA後患者30名とした.実施方法は,まずDIYと比較し同程度の機能を有するかを確認し,既製品であるソックススライダー(以下スライダー),かえるソックスエイド(以下カエル)との比較検証を行った.評価方法は同一患者にて,試作品と既製品・当院作成自助具を使用してもらった.調査項目は主観的患者満足度(使用感,準備のしやすさ,デザイン性,出来栄え)をVisual Analogue Scale法にて各項目を記載してもらい有用性を比較検討した.なお各項目と合計点についてKruskal-Walllisの検定を用い群間の差があることを確認しWilcoxonの順位和検定を用いた.
【結果】まず, 試作品とDIYの準備・使用感・出来栄え・自助具デザインの総得点と,項目ごとを比較した.若干の平均の差はみられたが,有意差はみられなかった.次に試作品と既製品2つを比較した.まず総得点では,試作品>カエル>スライダーの結果であった.準備のしやすさでは試作品>カエル>スライダーであり,スライダーとの有意差な差が認められた.使用感では,試作品>カエル>スライダーであり,スライダーとの有意差な差が認められた. 出来栄えは試作品>カエル>スライダーであり,スライダーとの有意差な差が認められた.デザインは,カエル>試作品>スライダーとなり,デザインはカエルの次点であったが有意差はなかった.
【考察】本研究にて開発した新たなソックスエイドは,今まで当院で製作した物と同程度の機能を有しており,臨床においても安心・安全に使用できるものと考えられた.そして,市販されている2つの既製品と比べても,各項目は高い評価であった.
今後は,本製品に耐久性,抗菌性などの付加を検討しており製品化を目指している.今回,企業との産学連携による共同開発により,新たな製品を生み出すとともに,業務課題も改善できることを学ぶことが出来た.
【製品開発の経緯】当院では,ソックスエイドの指導において当初既製品を使用していたが,患者より使用感,価格等に問題があり受け入れは良くなかった.その対応策としてDIYで提供を行った.使用感は良かったが,診療の時間の間に作成しているため業務の負担も多い.更にPL法の問題など医療安全面からも問題が指摘されていた.そこで,当院の取り組みを活かし,企業との連携により既製品の問題点(素材,耐久性,美観)を改善した新たな製品が開発できれば,多くの患者さんが満足され,業務課題も解決すると考えた.
まず当大学の産連担当部署に相談し地域企業の紹介を受け,当院作成の自助具を紹介し,共同開発に至った.開発の中で,SDGsの観点と価格について配慮した結果,車のエアバッグ廃材などを取り入れ試作品を検討した.商品の形状,デザインについては我々の実施経験を提供しながら検討を重ねた.試作品の作成,仕様検討など定期的に会議を開催し,進捗状況を共有した.試作品の製作を進めながら実証実験にて有効性を確認した.なお本実験は,当院の倫理委員会の承認を得て実施した.
【検証実験】対象は当院THA後患者30名とした.実施方法は,まずDIYと比較し同程度の機能を有するかを確認し,既製品であるソックススライダー(以下スライダー),かえるソックスエイド(以下カエル)との比較検証を行った.評価方法は同一患者にて,試作品と既製品・当院作成自助具を使用してもらった.調査項目は主観的患者満足度(使用感,準備のしやすさ,デザイン性,出来栄え)をVisual Analogue Scale法にて各項目を記載してもらい有用性を比較検討した.なお各項目と合計点についてKruskal-Walllisの検定を用い群間の差があることを確認しWilcoxonの順位和検定を用いた.
【結果】まず, 試作品とDIYの準備・使用感・出来栄え・自助具デザインの総得点と,項目ごとを比較した.若干の平均の差はみられたが,有意差はみられなかった.次に試作品と既製品2つを比較した.まず総得点では,試作品>カエル>スライダーの結果であった.準備のしやすさでは試作品>カエル>スライダーであり,スライダーとの有意差な差が認められた.使用感では,試作品>カエル>スライダーであり,スライダーとの有意差な差が認められた. 出来栄えは試作品>カエル>スライダーであり,スライダーとの有意差な差が認められた.デザインは,カエル>試作品>スライダーとなり,デザインはカエルの次点であったが有意差はなかった.
【考察】本研究にて開発した新たなソックスエイドは,今まで当院で製作した物と同程度の機能を有しており,臨床においても安心・安全に使用できるものと考えられた.そして,市販されている2つの既製品と比べても,各項目は高い評価であった.
今後は,本製品に耐久性,抗菌性などの付加を検討しており製品化を目指している.今回,企業との産学連携による共同開発により,新たな製品を生み出すとともに,業務課題も改善できることを学ぶことが出来た.