第58回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

援助機器

[OL-1] 一般演題:援助機器 1

2024年11月9日(土) 16:50 〜 18:00 D会場 (小ホール)

座長:一木 愛子(神奈川リハビリテーション病院 )

[OL-1-5] ALSに対する姿勢変換機構付き車椅子適用についてのモニタリング評価

米崎 二朗, 池田 真紀, 久山 圭子 (大阪市援助技術研究室)

当研究室では,相談事業を通じて多くの神経難病による重度障がいのある人からの福祉用具に関する相談に対応してきている.特にALSへの福祉用具支援サービスに関する相談が多い.相談経路は,利用者・家族からの直接的なもの以外に,難病医療情報センター,医療機関,在宅支援機関などからの間接的なものも多い.相談内容は,補装具費支給制度種目である重度障害者用意思伝達装置,車椅子,座位保持装置,上肢装具・把持装具用部品,あるいは介護保険における福祉用具貸与・購入費用の給付制度対象種目である介護ベッド及び付属品,床ずれ防止用具,車椅子,体位変換器,腰掛便座(ポータブルトイレ),移動用リフトなどである.当研究室では,更に日常生活動作全般に対し,総合的な福祉用具支援サービスを提供している.また,支援技術者への指導・助言,医学的・工学的技術的後方支援を行うアドバイザリー・サービスも提供しており,その中で,支援者側の現況として,姿勢変換機構付き車椅子の適用において誤用・過用があることを確認している.今回,ALS患者への姿勢変換機構付き車椅子適用のモニタリング評価を行い,現状の問題点を抽出し,適正処方に基づいた福祉用具供給サービスの整備を図るための課題についてまとめ,更に供給システムを整備するための方法について提案を行う.【目的】ALS患者への姿勢変換機構付き車椅子の適正処方に基づいた供給サービスを整備すること.【方法】相談事業の適用事例(145例)に対し,モニタリング評価を行い,担当支援機関と当研究室が提供した福祉用具支援サービスの比較を行った.比較内容は,支援対象とした障がい状況,適用された車椅子の仕様・目的,問題解決方法(適合支援方法,処方内容),利用効果である.これらの結果を基に,移動系の支援としての姿勢変換機構付き車椅子の適正な適合支援のあり方・すすめ方をまとめた.更に,当研究室が提供する工学的技術を介した製作・改良サービスの必要性について,そのサービスの提供の有無による利用効果を比較評価を通じて報告する.【結果】まず,既製品の姿勢変換機構付き車椅子の仕様における問題点を抽出し,ALS患者のニーズを充足するための用具側の問題点と課題をまとめた.その解決策として,ALS適用の姿勢変換機構付き車椅子のプロトタイプ設計・デザインを行った.更に,利用者ニーズに基づいた適正な車椅子供給サービスをすすめるための適正処方システムを開発し,当研究室が技術移転プログラムとして実施してきたスキルアップセミナーの受講者5名を対象に,使用評価を行い,システムの効果性についても評価を行った.その結果,利用者ニーズの把握,適合評価の手順,車椅子データベースからの適用機種の選定,適合方法などのガイドラインを示すことで,支援技術者の適合支援の一助となることを確認した.更に,既製品のままでは,ALS患者のニーズを充足することが難しいことも判明したため,各自治体等で行われている供給システムの状況も調査するとともに,世界各国で行われている福祉用具供給サービスなども参考にしながら,我が国における今後の供給システムについてのあり方・すすめ方について提案をまとめた.【考察・まとめ】ALS患者に対する姿勢変換機構付きの供給サービスのモニタリング評価を行い,現状の問題として誤用・過用が多いことを確認した.そのためには,適正処方のためのガイドライン策定と評価チャートを通じた適正処方システムが必要であるとともに,支援技術者の知識・技術の向上のための技術移転プログラムが必要であり,我が国の普及システムの再構築が重要課題と考える.