第58回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

援助機器

[OL-1] 一般演題:援助機器 1

2024年11月9日(土) 16:50 〜 18:00 D会場 (小ホール)

座長:一木 愛子(神奈川リハビリテーション病院 )

[OL-1-6] 在宅ALS患者に重度障害者用意思伝達装置を円滑に導入するための留意点

廣田 洋一, 児玉 努, 中村 優里, 島谷 結布子 (コールメディカルクリニック広島)

【目的】
 在宅ALS患者に補装具の重度障害者用意思伝達装置(以下,意思伝達装置)を導入するにあたり,その適合技術,補装具支給制度の理解,関係者との連携が求められ,独特の困難感を伴う.症状進行や,導入決定にあたっての相談の手段が限られる事例もあり,円滑な導入支援が求められる.意思伝達装置導入の手引きは多数存在するが,納品までの期間短縮に関連する要因についての報告は少なく,それを整理して支援の一助にすることを目的とした.
【方法】
 対象は訪問リハビリ(週3回,各40分)で意思伝達装置の導入支援をしたALS患者,導入できなかった1名(A氏:70代)と導入できた3名(B氏:70代,C氏:70代,D氏:50代)とし,診療録より調査した.調査内容は,a)検討開始時のALSFRS-R,b)試用した意思伝達装置の機種数,試用期間,調達先,c)更生相談所の調査判定方法,d)導入検討開始~納品までの日数,その間の入院日数とした.また,意思伝達装置導入支援の工程を1)意思伝達装置の導入検討~試用,2)試用~補装具申請品目の仮決定,3)仮決定~補装具費申請,4)申請~更生相談所支給判定,5)判定~支給決定,6)支給決定~適合判定・納品の7段階に分け,4例の日時を調査した.各工程間の日数を4例で比較し,その長短に関する要因を調査した.尚,入院期間がある工程は比較の対象外とした.全例がALSと診断され指定難病受給者証を交付されていた.また本調査に関して全例に同意を得た.
【結果】
 A氏はa) 5点,b)1機種試用,試用期間14日,調達先は業者,c)自宅訪問による直接判定予定も症状悪化で中止,d)143日後逝去し,導入不可.B氏はa) 10点,b)2機種試用,試用期間94日,調達先は訪問リハ事業所と業者c)書類判定,d)96日後納品.C氏は a) 10点,b)2機種試用,試用期間161日,調達先は訪問リハ事業所と業者,c)直接判定,d)207日後納品,途中入院日数19日.D氏は a) 18点,b)2機種試用し,試用期間236日,調達先はALS協会と業者,c)書類判定,d)266日後納品,途中入院日数68日.
 導入支援工程は1)2~46日,調達先の在庫状況が影響した.2)14~42日,試用機種数が2機種になると長かった.3)10~28日であり,申請を行う主介護者の日程的余裕が理由で遅延した.4) 11日~37日,書類判定方式が早かった.5)10~91日,事前に更生相談所に判定項目を確認し動画提出で短縮できた一方,事務手続きの連携の齟齬で遅延した.6)19-21日,ほぼ同一期間であった.
【考察】
 意思伝達装置の導入検討開始から納品までに最短で約3か月要した.短縮のための対策として試用期間と,判定手続きに分けて考察する.
 試用は導入には必須であり,適応判定のため練習を要することもある.心身機能や活動性にあわせ2機種試用せざるを得ないこともあり,対応できる調達先の確保や,意思伝達装置の適応の判断を迅速かつ的確に行う必要性が期間短縮のため必要である.判定手続きは,外出が難しい主介護者が手続きに行けない場合の対策や,迅速な書類判定が得られるための適切な情報を更生相談所に提供することが期間短縮のため重要であるが,我々の手が届かない事務手続きの遅延も存在した .
 意思伝達装置導入までの期間短縮のために我々ができることは,適切な機器選定を調達先と連携した上で試用を含め計画的に行い,更生相談所が迅速に判定できるように情報提供することと考えられた.