[OM-1-1] 急性期病院での臨床実習指導におけるMTDLPの活用
~生活動作を見据えた作業療法思考過程の整理について~
【はじめに】臨床実習における作業療法の教育指導では急性期の作業療法は患者の全身状態や治療に合わせた機能訓練が中心となり, 作業療法の専門性である生活動作を見据えた臨床思考過程を学ぶことが難しい現状がある. 日本作業療法士協会は, 作業療法士の臨床思考過程を視覚化するツールとして生活行為向上マネジメント(MTDLP)を開発した. 今回, 急性期病院の診療参加型実習において, MTDLPシートを用いて臨床教育を行った. MTDLPの活用は急性期から退院後の生活を見据えた作業療法の実践, また卒前から一貫した作業療法教育の指導に有効であったため報告する.
【倫理的配慮】本報告は倫理的配慮を十分に考慮し, 学生および患者へ説明の上書面で同意を得ている.
【実習形態】対象の学生は, 診療参加型の実習を推奨していた大学3年生で, 実習期間は10週間で急性期での実習は初めてであった. 学生は養成校にてMTDLPの授業を受けていたが, 臨床場面での使用経験はなかった. 実習指導者の担当症例に対しMTDLPを使用し臨床思考過程を整理した.
【初期評価】学生は腰部脊柱管狭窄症の術後に脳梗塞を発症した70代男性を担当し, 担当療法士が興味・関心チェックシート, 生活行為聞き取りシートを用いて, 介入計画を整理する過程を見学した. 療法士はMTDLPシートの作成にあたり, 臨床思考過程について学生の理解度を確認し, 疑問点は都度説明をしながら実習をすすめた. 本症例は「トイレ動作の獲得」が目標として挙がり, 症例の現状の身体機能や動作能力を踏まえ, 「(入院中に)病棟トイレに車椅子を自走していき, 一人で安全にトイレ排泄が行える」ことを合意目標とした. 介入当初は実行度0/10点, 満足度6/10点であった.
【経過】MTDLPマネジメントシートを用いて, 目標に対する基本的訓練, 応用訓練, 社会適応訓練を, 学生とともに整理した. 作業療法開始当初は機能訓練中心であったが, 身体機能の改善とともに段階的に動作練習に移行できた.動作獲得と並行し, 病棟看護師との連携やトイレ環境設定, 動作方法の指導を行なった. 症例の回復期病院転院が決定し, 身体機能, 基本動作・ADL能力ともに大きく改善を認めた. トイレ動作に関して, 車いすの自走, 便座への移乗, コルセットの着脱含む下衣操作が病棟トイレ環境で安全に遂行できるようになった. 合意目標に対し, 実行度は7/10点, 満足度 8/10点で目標を達成した.
【結果】学生は介入当初, 急性期から退院後の生活を見据えた具体的なイメージが掴めないと悩んでいた. MTDLPで合意目標を設定してからは, 目標動作に対する段階的なイメージや達成に必要な環境, 多職種連携も含めた包括的なアプローチを知り, 積極的に質問する場面が増えた. MTDLP各シートを用いながら指導者と一緒に学生が見学・模倣・実施を行うことで, 主体的に担当症例を支援できた. 実習終了時の学生の感想文では, 「MTDLPを用いて患者様・ご家族のHOPEをもとにトップダウンで考えた介入を行ったことで, 作業療法士の役割を改めて実感することが出来ました. 患者様の生活の未来に目を向け, できる作業の幅を少しでも広げられる基盤となる場所が急性期なのだと実習を通して学ぶことができました.」と記載されていた.
【考察】急性期の作業療法教育においては入院期間の関係から応用動作や社会適応訓練を行うことが難しい場合も多い. 作業療法士は発症早期から患者の将来の生活を見据えた介入を行うことが重要であり, 環境調整や多職種連携を含めた包括的な視点が必要となる. 学生指導においては, 指導者の臨床思考過程を可視化し, 急性期から退院後の生活を見据えた途切れない支援を行う上でMTDLPの導入は有効である.
【倫理的配慮】本報告は倫理的配慮を十分に考慮し, 学生および患者へ説明の上書面で同意を得ている.
【実習形態】対象の学生は, 診療参加型の実習を推奨していた大学3年生で, 実習期間は10週間で急性期での実習は初めてであった. 学生は養成校にてMTDLPの授業を受けていたが, 臨床場面での使用経験はなかった. 実習指導者の担当症例に対しMTDLPを使用し臨床思考過程を整理した.
【初期評価】学生は腰部脊柱管狭窄症の術後に脳梗塞を発症した70代男性を担当し, 担当療法士が興味・関心チェックシート, 生活行為聞き取りシートを用いて, 介入計画を整理する過程を見学した. 療法士はMTDLPシートの作成にあたり, 臨床思考過程について学生の理解度を確認し, 疑問点は都度説明をしながら実習をすすめた. 本症例は「トイレ動作の獲得」が目標として挙がり, 症例の現状の身体機能や動作能力を踏まえ, 「(入院中に)病棟トイレに車椅子を自走していき, 一人で安全にトイレ排泄が行える」ことを合意目標とした. 介入当初は実行度0/10点, 満足度6/10点であった.
【経過】MTDLPマネジメントシートを用いて, 目標に対する基本的訓練, 応用訓練, 社会適応訓練を, 学生とともに整理した. 作業療法開始当初は機能訓練中心であったが, 身体機能の改善とともに段階的に動作練習に移行できた.動作獲得と並行し, 病棟看護師との連携やトイレ環境設定, 動作方法の指導を行なった. 症例の回復期病院転院が決定し, 身体機能, 基本動作・ADL能力ともに大きく改善を認めた. トイレ動作に関して, 車いすの自走, 便座への移乗, コルセットの着脱含む下衣操作が病棟トイレ環境で安全に遂行できるようになった. 合意目標に対し, 実行度は7/10点, 満足度 8/10点で目標を達成した.
【結果】学生は介入当初, 急性期から退院後の生活を見据えた具体的なイメージが掴めないと悩んでいた. MTDLPで合意目標を設定してからは, 目標動作に対する段階的なイメージや達成に必要な環境, 多職種連携も含めた包括的なアプローチを知り, 積極的に質問する場面が増えた. MTDLP各シートを用いながら指導者と一緒に学生が見学・模倣・実施を行うことで, 主体的に担当症例を支援できた. 実習終了時の学生の感想文では, 「MTDLPを用いて患者様・ご家族のHOPEをもとにトップダウンで考えた介入を行ったことで, 作業療法士の役割を改めて実感することが出来ました. 患者様の生活の未来に目を向け, できる作業の幅を少しでも広げられる基盤となる場所が急性期なのだと実習を通して学ぶことができました.」と記載されていた.
【考察】急性期の作業療法教育においては入院期間の関係から応用動作や社会適応訓練を行うことが難しい場合も多い. 作業療法士は発症早期から患者の将来の生活を見据えた介入を行うことが重要であり, 環境調整や多職種連携を含めた包括的な視点が必要となる. 学生指導においては, 指導者の臨床思考過程を可視化し, 急性期から退院後の生活を見据えた途切れない支援を行う上でMTDLPの導入は有効である.