[OM-1-4] 生活行為向上マネジメントを用いた高齢下肢切断事例に対する生活再構築支援
【はじめに】河津(2018)は,回復期リハ病棟での切断リハにおいて,チーム医療や大きく変化する退院後生活を想定する重要性を述べている.先行研究では具体的な方法の報告は乏しい.今回,糖尿病管理が不十分だった高齢右大腿切断事例に対して,生活再構築に向けてMTDLPを用いて課題(疾患特異的な症状の管理,作業に応じた移動手段の獲得)を整理,視覚化して本人,家族と多職種で状況を確認した.その結果,多職種連携が奏功し,本人のセルフマネジメントの力も高まり,生活再構築が促進された.本報告の目的は,高齢下肢切断者の支援におけるMTDLPの有用性を検討することである.なお本報告について本人の同意を得た.
【事例紹介】A氏,60代後半,男性.6年前に糖尿病と診断され通院治療していたが,1年程前から通院とインスリン注射を自己中断.右糖尿病性足部壊疽の診断で大腿切断術を施行.術後19日に当院回復期リハ病棟に入棟.平屋の借家で要介護の母親と二人暮らし.習慣は母親の介助,自動車運転してパチンコ,食事等の買い物,外食,家事.外食等で幼馴染の友人や妹,弟と定期的な交流があった.
【評価】入棟10日のCOPMでは買い物,友人と外食,食事の準備,洗濯,掃除が挙がり,遂行スコア6.6,満足スコア6.0.楽観的で,今後の生活スタイルは術前同等を想定し,課題の把握は不十分.右下肢は断端長37cm,股関節は伸展-10°,内転-15°,MMT3,幻肢痛あり.左下肢はMMT4,下腿遠位は表在・深部感覚軽度鈍麻と痺れあり.両手は握力右12.6kg,左10.6kgで表在・深部感覚中等度鈍麻と痺れがあり,巧緻操作は不十分.MMSEは28/30点.片脚立位は片手支持で可能.FIMは73/126点.
【介入経過】主体的な課題解決,生活の再構築を目指して,MTDLPを用いた介入をA氏に提案した.合意目標は「①両足,糖尿病の自己管理ができる.②安全な移動手段で買い物や友人と出掛ける.」で,どちらも実行度と満足度1.生活行為マネジメントシートで整理した課題(断端,非切断肢足部,糖尿病,義足の自己管理)は進捗状況の一覧表を病室に貼り,A氏と多職種で日々確認し,課題解決に向けた協働が促進された.入棟65日に仮義足が完成し,義足着脱や作業に応じた移動手段をPTと検討して洗濯,買い物等の訓練に取り組んだ.義足の膝継手は固定から遊動に段階的に変更.AMPS(窓拭き,洗濯機)は運動技能1.5→2.2,プロセス技能1.5→1.9ロジットに改善.借家は老朽化の為,母親は特別養護老人ホームに入所.A氏は施設入所の方向となり,同行訪問,生活行為申し送り表を活用して,支援体制を準備した.
【結果】入棟148日で住宅型有料老人ホームに入所.移動は前腕支持型歩行車の義足歩行と車椅子併用で自立.屋外は家族・友人車に同乗か移送サービスを活用.断端等,諸課題の自己管理は定着.COPMは買い物,友人と外食,母親の面会,洗濯,掃除が遂行スコア9.4,満足スコア9.4.右股関節は伸展0°,内転0°,MMT4.左下肢はMMT5.上肢機能,下肢知覚,認知機能は著変なし.TUGはT字杖で23.9秒.FIMは111/126点.退院後は当院外来リハを2ヵ月継続し,生活適応されていた.合意目標は①が実行度と満足度10,②が実行度と満足度7.
【考察】飛松(2011)は,糖尿病切断者の糖尿病悪化や潰瘍等の予防には,自己管理と多職種の生活指導が必要と述べている.MTDLPは,本人と多職種が課題の把握に効果的で,多職種の的確な指導,本人のセルフマネジメントの動機づけに繫がり,有効だった.藤井(2012)は高齢下肢切断者の支援は切断という障害と生活スタイルの再構築の両面から考える重要性を述べている.MTDLPは,下肢切断者の疾患特異的な心身機能と作業形態が変化する活動,参加を多職種で包括的にマネジメントができ,高齢下肢切断者の生活再構築支援に有効なツールと考えられた.
【事例紹介】A氏,60代後半,男性.6年前に糖尿病と診断され通院治療していたが,1年程前から通院とインスリン注射を自己中断.右糖尿病性足部壊疽の診断で大腿切断術を施行.術後19日に当院回復期リハ病棟に入棟.平屋の借家で要介護の母親と二人暮らし.習慣は母親の介助,自動車運転してパチンコ,食事等の買い物,外食,家事.外食等で幼馴染の友人や妹,弟と定期的な交流があった.
【評価】入棟10日のCOPMでは買い物,友人と外食,食事の準備,洗濯,掃除が挙がり,遂行スコア6.6,満足スコア6.0.楽観的で,今後の生活スタイルは術前同等を想定し,課題の把握は不十分.右下肢は断端長37cm,股関節は伸展-10°,内転-15°,MMT3,幻肢痛あり.左下肢はMMT4,下腿遠位は表在・深部感覚軽度鈍麻と痺れあり.両手は握力右12.6kg,左10.6kgで表在・深部感覚中等度鈍麻と痺れがあり,巧緻操作は不十分.MMSEは28/30点.片脚立位は片手支持で可能.FIMは73/126点.
【介入経過】主体的な課題解決,生活の再構築を目指して,MTDLPを用いた介入をA氏に提案した.合意目標は「①両足,糖尿病の自己管理ができる.②安全な移動手段で買い物や友人と出掛ける.」で,どちらも実行度と満足度1.生活行為マネジメントシートで整理した課題(断端,非切断肢足部,糖尿病,義足の自己管理)は進捗状況の一覧表を病室に貼り,A氏と多職種で日々確認し,課題解決に向けた協働が促進された.入棟65日に仮義足が完成し,義足着脱や作業に応じた移動手段をPTと検討して洗濯,買い物等の訓練に取り組んだ.義足の膝継手は固定から遊動に段階的に変更.AMPS(窓拭き,洗濯機)は運動技能1.5→2.2,プロセス技能1.5→1.9ロジットに改善.借家は老朽化の為,母親は特別養護老人ホームに入所.A氏は施設入所の方向となり,同行訪問,生活行為申し送り表を活用して,支援体制を準備した.
【結果】入棟148日で住宅型有料老人ホームに入所.移動は前腕支持型歩行車の義足歩行と車椅子併用で自立.屋外は家族・友人車に同乗か移送サービスを活用.断端等,諸課題の自己管理は定着.COPMは買い物,友人と外食,母親の面会,洗濯,掃除が遂行スコア9.4,満足スコア9.4.右股関節は伸展0°,内転0°,MMT4.左下肢はMMT5.上肢機能,下肢知覚,認知機能は著変なし.TUGはT字杖で23.9秒.FIMは111/126点.退院後は当院外来リハを2ヵ月継続し,生活適応されていた.合意目標は①が実行度と満足度10,②が実行度と満足度7.
【考察】飛松(2011)は,糖尿病切断者の糖尿病悪化や潰瘍等の予防には,自己管理と多職種の生活指導が必要と述べている.MTDLPは,本人と多職種が課題の把握に効果的で,多職種の的確な指導,本人のセルフマネジメントの動機づけに繫がり,有効だった.藤井(2012)は高齢下肢切断者の支援は切断という障害と生活スタイルの再構築の両面から考える重要性を述べている.MTDLPは,下肢切断者の疾患特異的な心身機能と作業形態が変化する活動,参加を多職種で包括的にマネジメントができ,高齢下肢切断者の生活再構築支援に有効なツールと考えられた.