[OM-1-5] 生活行為向上マネジメントを活用することで終末期がん患者の目標が達成できた一例
【はじめに】終末期のがん患者に対しては,そのニーズを尊重しながら,身体的,精神的,社会的にも生活の質(以下QOL)の高い生活が送れるように援助するとされている.今回,右上腕転移性骨腫瘍のA氏を担当した.作業療法(以下OT)を実践していく中で,転移性脳腫瘍を合併し,余命宣告された.そこで予後を見据え,早期に生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)で退院後の合意目標に向けて支援した経過に対して,考察を踏まえ報告する.なお,本報告は口頭及び書面にて同意を得た.
【事例紹介】80歳代の女性.右利き.元来独居でADL自立.手話講師.キーパーソンは娘(以下家族).自動車で30分程に夫婦で住んでおり,病院への送迎など協力的.現病歴は,X–2年に右上腕骨骨幹部骨折を受傷.同時に,橈骨神経麻痺の合併症に加え,転移性骨腫瘍が判明.手術目的に入院し,術後よりOT開始.原発巣は非肺癌性小細胞癌と判明したが,未治療を選択.退院後は外来リハでOT継続し,上肢機能練習に加え,手関節背屈装具の作製や自助具の選定など実施した.また右大腿骨骨幹部や頸部リンパ節に多発転移あり.X年Y月頃より眩暈や嘔気があり,Z日に当院受診.頭部MRIを施行し,転移性脳腫瘍(左小脳)を認め,症状緩和目的に入院.入院後,余命3ヶ月程度と宣告された.
【作業療法評価(Z+1日目)】GCSはE4.V5.M6.明らかな麻痺はなく,小脳症状は眩暈,嘔気,体幹失調あり.右手は橈骨神経麻痺のため,MMTは手背屈・手指伸展2.握力は右6.9kg/左13.8kg.疼痛は右大腿部に認め,VAS 20mm.基本動作は軽介助.歩行は中等度介助.PS3.病棟ADLはFIM 75点.食事は,左手で自助箸を使用していたが,食欲低下があり,あまり摂取できていない状態であった.個室で他患者と交流なし.合意目標は,1ヶ月後「もう一度,生きている間に家族と昔行った美味しい飲食店で外食をしたい」とし,実行度1,満足度1.
【介入の基本方針】医師は対症療法と今後の方針の決定.看護師は病棟ADLの支援,内服管理.理学療法士と連携し,基本動作や歩行・階段昇降練習を実施.OTは上肢機能練習や自宅環境に合わせた ADL練習.管理栄養士は栄養管理.社会福祉士は介護保険の申請.家族とは,退院後の介護サービスやA氏の目標を共有した.
【介入経過】介入当初より,嘔気が持続し,食欲低下を認め,ベッド上臥床傾向であったが,内服調整後,徐々に症状が軽減し,基本動作や歩行練習が可能となった.またZ+5日目に放射線治療が開始となり,倦怠感など副作用症状に合わせて介入した.病棟スタッフとADL動作の確認後,Z+12日目,室内歩行自立となった.徐々に食欲改善し,「娘に頼んだ食べ物が楽しみ」と発言を認めた.要介護2が認定され,手すりの設置,介護レンタル物品を選定.病棟内Z+26日目に自宅退院後,外来リハ再開となった.
【結果】Z+42日目,眩暈・嘔気は軽減,体幹失調は軽度持続.握力は右5.8kg/左13.4kg.基本動作は修正自立.PS2.FIM95点.合意目標は家族の介護のもと,飲食店で外食することができ,実行度8,満足度9と向上した.しかし,Z+56日目,胸水貯留や身体機能の低下を認め,車椅子生活となり,病院受診以外の外出が困難となった.
【考察】終末期患者のQOL向上には,その人らしい活動,ADL,心身機能が必要になってくる.予後が短いA氏に対して,入院早期に合意目標を形成したことは,心身機能の低下を予防し,ADL拡大やQOL向上に繋がったと考える.今回,MTDLPを活用したことで,早期に多職種や家族と目標を共有することができ,退院後早期に希望であった外食が実現できた.MTDLPは,終末期患者のニーズの早期達成に有用である.
【事例紹介】80歳代の女性.右利き.元来独居でADL自立.手話講師.キーパーソンは娘(以下家族).自動車で30分程に夫婦で住んでおり,病院への送迎など協力的.現病歴は,X–2年に右上腕骨骨幹部骨折を受傷.同時に,橈骨神経麻痺の合併症に加え,転移性骨腫瘍が判明.手術目的に入院し,術後よりOT開始.原発巣は非肺癌性小細胞癌と判明したが,未治療を選択.退院後は外来リハでOT継続し,上肢機能練習に加え,手関節背屈装具の作製や自助具の選定など実施した.また右大腿骨骨幹部や頸部リンパ節に多発転移あり.X年Y月頃より眩暈や嘔気があり,Z日に当院受診.頭部MRIを施行し,転移性脳腫瘍(左小脳)を認め,症状緩和目的に入院.入院後,余命3ヶ月程度と宣告された.
【作業療法評価(Z+1日目)】GCSはE4.V5.M6.明らかな麻痺はなく,小脳症状は眩暈,嘔気,体幹失調あり.右手は橈骨神経麻痺のため,MMTは手背屈・手指伸展2.握力は右6.9kg/左13.8kg.疼痛は右大腿部に認め,VAS 20mm.基本動作は軽介助.歩行は中等度介助.PS3.病棟ADLはFIM 75点.食事は,左手で自助箸を使用していたが,食欲低下があり,あまり摂取できていない状態であった.個室で他患者と交流なし.合意目標は,1ヶ月後「もう一度,生きている間に家族と昔行った美味しい飲食店で外食をしたい」とし,実行度1,満足度1.
【介入の基本方針】医師は対症療法と今後の方針の決定.看護師は病棟ADLの支援,内服管理.理学療法士と連携し,基本動作や歩行・階段昇降練習を実施.OTは上肢機能練習や自宅環境に合わせた ADL練習.管理栄養士は栄養管理.社会福祉士は介護保険の申請.家族とは,退院後の介護サービスやA氏の目標を共有した.
【介入経過】介入当初より,嘔気が持続し,食欲低下を認め,ベッド上臥床傾向であったが,内服調整後,徐々に症状が軽減し,基本動作や歩行練習が可能となった.またZ+5日目に放射線治療が開始となり,倦怠感など副作用症状に合わせて介入した.病棟スタッフとADL動作の確認後,Z+12日目,室内歩行自立となった.徐々に食欲改善し,「娘に頼んだ食べ物が楽しみ」と発言を認めた.要介護2が認定され,手すりの設置,介護レンタル物品を選定.病棟内Z+26日目に自宅退院後,外来リハ再開となった.
【結果】Z+42日目,眩暈・嘔気は軽減,体幹失調は軽度持続.握力は右5.8kg/左13.4kg.基本動作は修正自立.PS2.FIM95点.合意目標は家族の介護のもと,飲食店で外食することができ,実行度8,満足度9と向上した.しかし,Z+56日目,胸水貯留や身体機能の低下を認め,車椅子生活となり,病院受診以外の外出が困難となった.
【考察】終末期患者のQOL向上には,その人らしい活動,ADL,心身機能が必要になってくる.予後が短いA氏に対して,入院早期に合意目標を形成したことは,心身機能の低下を予防し,ADL拡大やQOL向上に繋がったと考える.今回,MTDLPを活用したことで,早期に多職種や家族と目標を共有することができ,退院後早期に希望であった外食が実現できた.MTDLPは,終末期患者のニーズの早期達成に有用である.