[ON-1-2] くも膜下出血により高次脳機能障害を呈し,訪問リハビリテーションを行い職場復帰に至った症例
【はじめに】
脳卒中患者の復職率は軽症例含め40%となっており,高次脳機能障害は復職の阻害要因になると言われている(佐伯,2019).今回くも膜下出血(右中大脳動脈瘤)により高次脳機能障害を呈した症例に対して訪問リハビリテーション(以下:訪問リハビリ)を実施し,発症後約1年で復職に至った症例について報告する.本報告に際し症例の同意ならびに当院倫理委員会の承認を得た.
【症例紹介】
50代女性,右利き.夫と二人暮らし.スーパーで週5日勤務(食品レジ).通勤手段はバスと徒歩.X日くも膜下出血(Fishergroup4,H&H2)発症にて当院搬送,同日に開頭クリッピング術+血腫除去術.X+1日より入院OT開始.X+5日開頭減圧術施行.X+6日~脳血管攣縮による梗塞(右シルビウス裂・被殻腹側).X+35日頭蓋骨形成術+残存瘤に対してクリッピング術施行.回復期病院への転院を希望されずX+61日に自宅退院.外来OTを継続したが,より復職に即したリハビリを実施することを目的にX+196日(以下:Y日)より当院訪問リハビリを開始.
【評価】(Y~Y+7日)
麻痺なし,FIM(運動:91/91点/認知:31/35点),HDS-R:30/30点,MMSE:30/30点,TMT-J:A56秒,B74秒, FAB:17/18点.行動評価による高次脳機能障害は屋外歩行中に人や車への注意が欠け制止される場面がある.道に迷い1人で外出ができない.病識は高次脳機能障害に対する僅かな認識はあるも復職した際にどのような支障があるかの理解はできない.病前と同様の勤務体制での復職希望が強い.
【経過】
訪問リハビリ開始時はADL自立,買い物を除くIADLは自立.高次脳機能面はバッテリー評価と行動評価より注意障害,ワーキングメモリ低下,処理容量と速度の低下,病識低下を認めた.病前同様の復職を望んでいたが問題点として職場環境,通勤,業務内容があげられた.職場に症例の現状を理解し業務内容を配慮してもらうためには,職場との直接的なやり取りが必要となるため就労移行支援事業所への通所を提案した.訪問リハビリでは,バーコード探し等の職業模擬練習やデイリーノートを活用し就労支援プログラム内での作業活動の振り返りや代償手段の提案を随時行った.通勤手段の獲得のために道順の工夫,地図アプリの活用,受動的注意機能練習や公共交通機関の利用練習を実施した.また,就労支援員とも連携し業務内容の整理や復職後に予測される問題点の抽出を行うことで,本人が職場からの病状理解や配慮が必要なことに気づくことができた.Y+175日より職場との具体的な面談が進み,業務内容の変更(ネットスーパー部門への異動)と就労時間の配慮が得られた.
【結果】(Y+137日~)
FIM(運動:91/91点/認知:33/35点),TMT-J:A46秒,B62秒,FAB:18/18点.行動評価による高次脳機能障害は屋外歩行で道に迷わず,人や車両へ注意を向けることが可能となった.就労移行支援事業所への通所,近隣のスーパーへの買い物やバスの利用が自立した.高次脳機能障害が作業に及ぼす影響を考え二重課題を避ける等の代償手段を選択できるようになった.Y+203日に訪問リハビリを終了し,Y+205日に復職した.
【考察】
復職支援において高次脳機能障害の知見を有するOTが就労地域の社会資源の活用を提案し,多職種と協働し職場の理解を得ることは重要と考える.また,OTが高次脳機能障害を考慮しながら就労場面を想定した練習を実施し,本人の病状理解を深めることは復職への一助となると考える.
脳卒中患者の復職率は軽症例含め40%となっており,高次脳機能障害は復職の阻害要因になると言われている(佐伯,2019).今回くも膜下出血(右中大脳動脈瘤)により高次脳機能障害を呈した症例に対して訪問リハビリテーション(以下:訪問リハビリ)を実施し,発症後約1年で復職に至った症例について報告する.本報告に際し症例の同意ならびに当院倫理委員会の承認を得た.
【症例紹介】
50代女性,右利き.夫と二人暮らし.スーパーで週5日勤務(食品レジ).通勤手段はバスと徒歩.X日くも膜下出血(Fishergroup4,H&H2)発症にて当院搬送,同日に開頭クリッピング術+血腫除去術.X+1日より入院OT開始.X+5日開頭減圧術施行.X+6日~脳血管攣縮による梗塞(右シルビウス裂・被殻腹側).X+35日頭蓋骨形成術+残存瘤に対してクリッピング術施行.回復期病院への転院を希望されずX+61日に自宅退院.外来OTを継続したが,より復職に即したリハビリを実施することを目的にX+196日(以下:Y日)より当院訪問リハビリを開始.
【評価】(Y~Y+7日)
麻痺なし,FIM(運動:91/91点/認知:31/35点),HDS-R:30/30点,MMSE:30/30点,TMT-J:A56秒,B74秒, FAB:17/18点.行動評価による高次脳機能障害は屋外歩行中に人や車への注意が欠け制止される場面がある.道に迷い1人で外出ができない.病識は高次脳機能障害に対する僅かな認識はあるも復職した際にどのような支障があるかの理解はできない.病前と同様の勤務体制での復職希望が強い.
【経過】
訪問リハビリ開始時はADL自立,買い物を除くIADLは自立.高次脳機能面はバッテリー評価と行動評価より注意障害,ワーキングメモリ低下,処理容量と速度の低下,病識低下を認めた.病前同様の復職を望んでいたが問題点として職場環境,通勤,業務内容があげられた.職場に症例の現状を理解し業務内容を配慮してもらうためには,職場との直接的なやり取りが必要となるため就労移行支援事業所への通所を提案した.訪問リハビリでは,バーコード探し等の職業模擬練習やデイリーノートを活用し就労支援プログラム内での作業活動の振り返りや代償手段の提案を随時行った.通勤手段の獲得のために道順の工夫,地図アプリの活用,受動的注意機能練習や公共交通機関の利用練習を実施した.また,就労支援員とも連携し業務内容の整理や復職後に予測される問題点の抽出を行うことで,本人が職場からの病状理解や配慮が必要なことに気づくことができた.Y+175日より職場との具体的な面談が進み,業務内容の変更(ネットスーパー部門への異動)と就労時間の配慮が得られた.
【結果】(Y+137日~)
FIM(運動:91/91点/認知:33/35点),TMT-J:A46秒,B62秒,FAB:18/18点.行動評価による高次脳機能障害は屋外歩行で道に迷わず,人や車両へ注意を向けることが可能となった.就労移行支援事業所への通所,近隣のスーパーへの買い物やバスの利用が自立した.高次脳機能障害が作業に及ぼす影響を考え二重課題を避ける等の代償手段を選択できるようになった.Y+203日に訪問リハビリを終了し,Y+205日に復職した.
【考察】
復職支援において高次脳機能障害の知見を有するOTが就労地域の社会資源の活用を提案し,多職種と協働し職場の理解を得ることは重要と考える.また,OTが高次脳機能障害を考慮しながら就労場面を想定した練習を実施し,本人の病状理解を深めることは復職への一助となると考える.