第58回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

地域

[ON-1] 一般演題:地域 1

2024年11月9日(土) 12:10 〜 13:10 E会場 (204)

座長:羽賀 祐介(スカイ訪問看護ステーション)

[ON-1-5] リエイブルメント 第2報

~訪問型サービスC を活用した自立支援~

古谷 正登1, 小林 努1, 原 直利2 (1.三田尻生活・ケア総合センター株式会社 三田尻訪問看護ステーション, 2.山口県立総合医療センター リハビリテーション科)

【はじめに】2017年度より全国の市町村で介護予防・日常生活支援総合事業への移行が始まり,山口県防府市でも2020年度より通所型サービスC(短期集中予防サービス)が本格実施となった.その一方で,居住地が山間部である,あるいは事業を好まない等の理由で支援が届かない対象者も一定数存在する.演者は,リエイブルメントの視点に基づいて虚弱な高齢者が元の生活を取り戻せる地域づくりを目指し,支援の拡充を図っている.本発表では,訪問型サービスC(以下:訪問C)のモデル事業として関わった事例を報告する.なお,発表に際しては本人に紙面で説明し同意を得ている.
【事例紹介】90代男性.事業対象者.X年8月,心不全による浮腫のため足が動かなくなってきたと相談あり.屋外では,浮腫によりサンダルを履く事から前方への転倒が増え,引きこもるようになった.主治医から浮腫の治療を勧められたが拒んだため介護申請の相談があり,訪問Cの導入となった.訪問Cの概要は,要支援1・2又は事業対象者に対して,介護予防活動や社会参加に繋げる目的で実施され,1回60分程度で全12回(約3ヶ月)である.
【評価】X年9月より介入を開始.対象者にはセルフマネジメント力を高める事が出来るように動機付け面談を行った.更に,本人が元々行っていた「草取り作業」「お大師様の世話」「散歩」に着目し作業活動へアプローチを行った.初期評価に関して,CS-30:5回,片脚立位:右5秒,左2秒,老健式活動能力指標5点,GDS 10点,FAI 0点であった.MTDLPの合意目標としては,①「お大師様の世話を行う事が出来る」(実行度1/10,満足度1/10),②「172m先の知人宅まで歩く事が出来る」(実行度1/10,満足度1/10).活動状況に関して,日中のほとんどの時間を椅子に座りテレビを見て過ごしている.夜間はリハビリパンツ内に排尿を行い,起き上がりが大変との事で電動ベッドを自費で利用している.
【経過及び結果】初回訪問時に夜間の排尿が大変との事で中止していた利尿剤の再開と浮腫に対応した靴の選定を行った.また「体重・血圧測定」「下肢の運動」「(外出するために)1日1回靴を履く」という生活目標を意識できるように「セルフマネジメントシート」を渡し自己管理していけるよう共有した.毎週訪問時にはセルフマネジメントシートを活用し1週間を振り返り,出来ている部分にはポジティブフィードバックを行う事で行動変容を促した.日常生活でも,靴を履いての草取り作業,お大師様の世話,知人宅への訪問や散歩など活動性が高まる事で連続歩行距離が延びた.訪問の終盤には「夢を見ているよう」「これから先も歩く事が大切」など毎日の運動習慣が定着したためX年12月訪問Cの卒業を迎えた.最終評価は,CS-30:10回,片脚立位:右5秒,左5秒,老健式活動能力指標7点,GDS 0点,FAI 10点.合意目標①「お大師様」(実行度8/10,満足度9/10),「知人宅までの歩行」(実行度8/10,満足度10/10).
【考察】心不全の悪化を機に負の連鎖が生じたため,運動習慣の再獲得を通して,元来の生活様式を取り戻すという合意目標を共有した.支援には,地域の繋がりが多いという強みに着目する事で活動量を維持できると考えた.訪問時には草取り作業や屋外歩行など実際の作業活動へ直接介入を行うplace-train-modelを活用し,「出来る」事と「課題」をその場で共有した事で自信の再獲得に繋がり,「夢を見ているよう」といった肯定的な言葉が表出されたと考えられる.
【結論】今回リエイブルメントの視点に基づいて関わることで行動変容を促す事が出来,「元の生活へ戻る」一助になると言える.今後も,可能な限り住み慣れた地域での暮らしをサポートしていきたい.