[ON-3-1] 業務内容に特化したナビゲーションブック作成の支援
【目的】
ナビゲーションブックとは,障害のある者が就職する際に,障害特性やセールスポイント,職業上の課題,配慮を依頼することについてまとめて,職場と情報共有するための書類である.しかし,就職前に作成することが多いため,内容が具体性を欠き,職場内で十分に活用されないことがあるのが課題である.今回,右片麻痺及び失語のある就労中の事例に対し,業務内容に即したナビゲーションブックの再作成及びそれを用いた説明の支援を実施した結果,職場内の障害理解が深化し,本人の担当業務が拡大したため,報告する.本報告に際し,口頭及び書面にて同意を得た.
【事例】
40歳代男性.公務員.脳梗塞による右片麻痺,失語.当センターの就労移行支援を利用ののち,発症から2年後に復職した.復職に際しナビゲーションブックを作成し,できること,苦手なこと,配慮を依頼したいことを記載し,上司へ提出した.
職場は協力的で,復職後の適応は順調と思われたが,復職から1年後,本人から「配慮はうれしい一方,もっと多くの仕事をやっていきたい」と相談があった.
【評価】
復職時の身体機能はBRS Ⅳ-Ⅴ-Ⅴ,言語機能は,複雑な会話時の聴理解低下や喚語困難,舌突音のひずみ等がみられたが,SLTAは「まんがの説明」減点のみであった.
復職後の担当業務は,部署内の業務のみに限定され,さらに現在の本人に遂行可能と思われる部署内業務についても,同僚が先回りして担当から外していた.ナビゲーションブックの内容は上司から一部の同僚に口頭で伝達されたのみで,「どんな仕事ができるかわからない」と言われたり,発音のひずみを「怒っている」と誤解されることがあった.
【方針】
障害が軽度であるにもかかわらず本人が希望する業務拡大が進まないのは,障害特性や作業遂行度が周囲に十分理解されていないことにより,配慮が過剰になっていることが原因であると考え,ナビゲーションブックの再作成及び説明支援を実施することにした.
【介入】
実施期間は6か月で,回数は再作成支援6回,説明支援5回,来所面談にて実施した.
再作成するナビゲーションブックは,上司や同僚が業務の割り振りを適切に判断できるように,職場内の業務内容とその遂行度を3段階で示し,その理由を記載することとした.
再作成支援では,様式は本人と相談して決め,内容は本人主体で書き出してもらい,その後文言を添削した.添削は,「多くの仕事をやっていきたい」という希望が伝わるよう,「~すればできる」等のポジティブな表現に言い換える修正を主に行った.説明支援では,失語の影響に鑑み,職員会議にて本人自ら説明できるよう,説明したい内容を事前に確認して台本を作成し,音読練習を行った.
【結果】
再作成したナビゲーションブックを職員に配布し説明した結果,担当業務が増えた.また,同僚から「一緒にやりましょう」「この作業はできる?」と声をかけられることが増えた.本人は,できる/できない業務について,他職員と相談しやすくなったとの実感を得た.
【考察】
ナビゲーションブックを作成する際は,雇用主の視点を意識して,できるだけ具体的に記載することが重要である.業務内容とその遂行度に焦点を当てたナビゲーションブックを再作成したことにより,職員が本人の業務遂行力を適切に判断して仕事を頼みやすくなり,本人が希望する業務拡大に寄与できたと思われる.
ナビゲーションブックとは,障害のある者が就職する際に,障害特性やセールスポイント,職業上の課題,配慮を依頼することについてまとめて,職場と情報共有するための書類である.しかし,就職前に作成することが多いため,内容が具体性を欠き,職場内で十分に活用されないことがあるのが課題である.今回,右片麻痺及び失語のある就労中の事例に対し,業務内容に即したナビゲーションブックの再作成及びそれを用いた説明の支援を実施した結果,職場内の障害理解が深化し,本人の担当業務が拡大したため,報告する.本報告に際し,口頭及び書面にて同意を得た.
【事例】
40歳代男性.公務員.脳梗塞による右片麻痺,失語.当センターの就労移行支援を利用ののち,発症から2年後に復職した.復職に際しナビゲーションブックを作成し,できること,苦手なこと,配慮を依頼したいことを記載し,上司へ提出した.
職場は協力的で,復職後の適応は順調と思われたが,復職から1年後,本人から「配慮はうれしい一方,もっと多くの仕事をやっていきたい」と相談があった.
【評価】
復職時の身体機能はBRS Ⅳ-Ⅴ-Ⅴ,言語機能は,複雑な会話時の聴理解低下や喚語困難,舌突音のひずみ等がみられたが,SLTAは「まんがの説明」減点のみであった.
復職後の担当業務は,部署内の業務のみに限定され,さらに現在の本人に遂行可能と思われる部署内業務についても,同僚が先回りして担当から外していた.ナビゲーションブックの内容は上司から一部の同僚に口頭で伝達されたのみで,「どんな仕事ができるかわからない」と言われたり,発音のひずみを「怒っている」と誤解されることがあった.
【方針】
障害が軽度であるにもかかわらず本人が希望する業務拡大が進まないのは,障害特性や作業遂行度が周囲に十分理解されていないことにより,配慮が過剰になっていることが原因であると考え,ナビゲーションブックの再作成及び説明支援を実施することにした.
【介入】
実施期間は6か月で,回数は再作成支援6回,説明支援5回,来所面談にて実施した.
再作成するナビゲーションブックは,上司や同僚が業務の割り振りを適切に判断できるように,職場内の業務内容とその遂行度を3段階で示し,その理由を記載することとした.
再作成支援では,様式は本人と相談して決め,内容は本人主体で書き出してもらい,その後文言を添削した.添削は,「多くの仕事をやっていきたい」という希望が伝わるよう,「~すればできる」等のポジティブな表現に言い換える修正を主に行った.説明支援では,失語の影響に鑑み,職員会議にて本人自ら説明できるよう,説明したい内容を事前に確認して台本を作成し,音読練習を行った.
【結果】
再作成したナビゲーションブックを職員に配布し説明した結果,担当業務が増えた.また,同僚から「一緒にやりましょう」「この作業はできる?」と声をかけられることが増えた.本人は,できる/できない業務について,他職員と相談しやすくなったとの実感を得た.
【考察】
ナビゲーションブックを作成する際は,雇用主の視点を意識して,できるだけ具体的に記載することが重要である.業務内容とその遂行度に焦点を当てたナビゲーションブックを再作成したことにより,職員が本人の業務遂行力を適切に判断して仕事を頼みやすくなり,本人が希望する業務拡大に寄与できたと思われる.