第58回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

地域

[ON-3] 一般演題:地域 3

2024年11月9日(土) 14:30 〜 15:30 E会場 (204)

座長:浅野 友佳子(たいじゅクリニック訪問リハビリテーションらいらっく )

[ON-3-5] オンラインを用いた多職種連携による短期的な介入が生活課題改善に与える影響

~地域在住高齢者3症例に対するケースシリーズ研究~

坂本 泰平1,2, 石橋 裕3, 小林 法一3, 小林 隆司4, 石橋 仁美5 (1.医療法人社団 哺育会 浅草病院 リハビリテーション科, 2.東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法科学域 客員研究員, 3.東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法科学域, 4.兵庫医科大学 リハビリテーション学部 作業療法学科, 5.東京工科大学 医療保健学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻)

【序論・目的】作業療法士は,訪問型サービスCで地域在住高齢者に対して短期間での介入にて生活課題が改善したという報告はあるものの,地域で働く作業療法士の数は少ない状況であり,まだまだ支援の手が行き届いていないことが示唆される.そのような中,地域における要介護者や要支援者の人が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識・技術を有する専門職として介護支援専門員があり,利用者が抱える生活課題の実態を把握している.作業療法士は,介護支援専門員を含む関係者間での情報共有が不可欠であり,情報通信技術(以下,ICT)の活用は情報共有に有効な手段であるとされており,医療・介護・健康分野における先導的なICT利活用,研究推進が求められている一方で,その取り組みは少ない状況である.このような状況を踏まえ,本研究目的は,作業療法士が直接利用者宅を訪問せずに,介護支援専門員等の在宅支援者にICTを利用したオンライン上で利用者の生活課題に多職種連携の範囲内で回答し,在宅支援者が利用者に対して,利用者宅を訪問し生活への助言を通常業務として実施することで,利用者の生活課題改善につながるのではないかを検討することである.
【対象】研究対象者は,東京都荒川区に在住する65歳以上で要支援1もしくは2,および事業対象者の方であり,改善したい生活課題のある方とした.本研究は,荒川区高齢福祉課に協力を依頼し実施した.なお,荒川区には8箇所の包括があり,3箇所の研究協力が得られ,3症例を本研究の対象とした.
【方法】研究方法は,単群内における経時的繰り返し測定デザインを用いたケースシリーズ研究である.研究代表者らは,介護支援専門員等から相談が寄せられた生活課題に対して助言をした.助言をする際のICT機器はzoomを利用した.助言は1回につき15分〜20分とし,研究開始後2~7週の間に3回程度実施した.評価項目は,メインアウトカムである目標達成状況としてGoal Attainment Scale(以下,GAS)を使用した.各評価項目を介入前,初回評価時より8週間後,12週間後の3回測定した.バイアスを減らすために評価は助言を行わない作業療法士が利用者の自宅に訪問し,実施した.本研究は,所属大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号21087).
【結果】A氏の主目標は,玄関の出入りがスムーズにできるようになりたいことであり,玄関のレイアウトを変更する助言をすることで目標を達成した.GASのスコアは初期評価-2,8週間後0,12週間後0であった. B氏の主目標は,炊事など手を使う行為をスムーズにできるようになりたいことであり,道具の交換,道具の使用方法の提案,代替手段の提案をすることで目標を達成した.GASのスコアは初期評価-2,8週間後0,12週間後0であった.C氏の主目標は,日常生活の中で右足を良くするための日常生活上の工夫,社会資源を知ることであり,自分の心身機能のバロメーターとして区の老人福祉センターでデータ計測を提案することで,自分自身の体や認知機能へのマイナス的な執着を取り除くことができ目標を達成した.GASのスコアは初期評価-2,8週間後0,12週間後0であった.
【考察・結論】今回の結果より,3症例全ての対象者が抱える生活課題を改善し継続することができた.本研究により,作業療法士が介護支援専門員等の在宅支援者にオンライン上で利用者の生活課題に回答することで,利用者の生活課題の改善及び継続に効果を与えうると考える.