第58回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-5] 一般演題:地域 5 

Sun. Nov 10, 2024 8:30 AM - 9:30 AM E会場 (204)

座長:高島 理沙(北海道大学 大学院保健科学研究院)

[ON-5-4] 岸和田市の短期集中予防サービス通所・訪問型サービスC事業における作業療法士の役割

鎌田 亮平1,2, 西尾 優子1, 波多 洋輔1, 梶 江里菜1,2, 市村 真雅3 (1.一般社団法人 大阪府作業療法士会, 2.株式会社リニエL, 3.岸和田市役所 保健部 介護保険課)

【はじめに】高齢社会に伴い社会保障費が年々増加し,全国的に介護予防事業の確立が喫緊の課題である.大阪府岸和田市(以下,当地域)においても,介護予防日常生活支援総合事業における短期集中予防サービスの早期実施を目指し,2018年12月より大阪府理学療法士会で短期集中予防サービス通所・訪問型サービスC事業(以下,当事業)を開始した.2020年度からは,大阪府作業療法士会(以下,当会)も当事業に関わる機会を得た.当事業は,ADL,IADLの改善に向けた支援が必要な地域在住高齢者に対し,3-6ヶ月の短期間で保健・医療の専門職が生活課題の解決に向けた支援を行うものである(厚労省2023).プログラム内容は,岸和田市の実情に応じて通所と訪問を組み合わせ,関係職種で連携して実施している.今回,実施内容及び利用者の参加後の変化について検討したので報告する.
【目的】当事業における実施内容とその効果,関係職種との連携や作業療法士の役割について検討することである.
【方法】当事業は,利用期間は3ヶ月を基本とし,必要に応じて最長6ヶ月まで延長が可能である.週1回120分の通所サービスに加え,利用開始前・中間・修了時に作業療法士(以下,OT)が自宅にアセスメントをする訪問サービスも行う.さらに,初回と修了時に管理栄養士による栄養指導が実施される.利用開始前訪問は,ケアマネジャー(以下,CM)と共に,自宅での生活をアセスメントし生活課題の抽出と目標設定を行う.中間・修了時訪問では,生活課題の確認と共に,当事業修了後の活動・社会参加促進に向けて意識付けを行う.通所サービスではOT は集団で実施する運動メニューの決定と個別の生活課題解決に向けた動作指導などを担う.運動メニューは持久力・バランス力・体幹筋力向上などで,実施は介護職・看護職が担う.また,必要に応じて管理栄養士による栄養指導も行う.研究対象者は2023年4月〜2024年1月に当事業を利用する同意が得られた対象者とし,分析対象者は修了まで至った者とした.評価指標は,体力測定(身長・体重・TUG・CS-30),栄養アセスメント,基本チェックリスト(以下,基本 CL)である.この調査は,所属施設の研究倫理委員会の承認を得た上で実施した.
【結果】分析対象者は参加者27名中,18 名(男4名,女14 名,平均年齢81.4歳)であった.生活課題に対する目標を「生活行為」「場所」「移動手段」に分類した.目標とする生活行為は,入浴・更衣などADL関連は7%,買い物・家事などIADL関連は48%,趣味や社会交流など社会参加は45%であった.その生活行為を行う場所は,自宅内が19%,自宅から1キロ未満圏内が69%,自宅から1km以上圏域が12%であった.生活行為を行うにあたって挙げられた移動手段は,床上動作獲得も含めた屋内移動が20%,荷物を持った屋外歩行や自転車などの屋外移動が60%,バス・電車など公共交通機関利用が20%であった.
【考察】当地域の高齢者は,生活課題に対する目標の分析より,買い物や趣味などと共に社会参加が多く,自宅から1km未満の場所で自転車も含めた屋外移動が必要なことがわかった.目標設定にOTが関わることで,具体的な目標設定となり,多職種で関わることがその達成には有効と考えられる.当地域が目指している,①介護予防の強化,②自立支援の促進,③介護人材の確保のため,今後も多職種が協働し,早期に当事業を確立できるよう連携していく必要がある.