第58回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-6] 一般演題:地域 6 

2024年11月10日(日) 09:40 〜 10:40 E会場 (204)

座長:石川 隆志(なかみちケアセンター)

[ON-6-2] 群馬県内における母親学級・両親学級での作業療法士の必要性や役割の理解,連携に関する調査

小林 昭博1, 田中 あゆ2 (1.群馬医療福祉大学リハビリテーション学部, 2.医療法人社団ほたか会群馬パース病院)

【背景・目的】妊娠・出産は女性や家族にとって人生の中でも大きなライフイベントである.妊娠・出産を無事に終えるための適切なアドバイスを受ける場が母親学級・両親学級である.母親学級・両親学級にて関わっている職種は助産師や看護師,保健師が主であるが,作業療法士(以下,OT)は先行研究ではほとんど見当たらない.著者らは,県内A市の保健センターで母親学級・両親学級に関わっている保健師と助産師を対象に多職種連携のアンケート調査を行い,OTと連携している多職種は少ないこと,7割はOTに介入して欲しいと考えていることを他学会にて報告した.この結果を踏まえ,今回は調査対象を県内全域に拡大した.本研究の目的は県内における母親学級・両親学級でのOTの必要性や役割の理解,連携に関する調査を行ない,新たな知見を得ることである.
【方法】群馬県内にて産婦人科を標榜している医療機関79施設と各市町村の母子保健サービスに関わっている機関48施設,合計127施設で,研究協力が得られた施設の助産師,看護師,保健師を対象に無記名アンケート調査を実施した(2023年11月〜12月).事前に研究依頼書を送付し,協力の承諾が得られた12施設91名を対象としたところ,65名から返送があった(回収率71.4%).事前の依頼書と共に送付したサンプル用紙に回答し,返送した者が8名おり,今回は分析対象に加えた.1名は全ての項目で未記入であったため,分析から除外した.結果,72名を分析対象とした.アンケートの内容は職種,施設内外の連携職種,OTの役割の把握の有無,今後のOTの関わり及び介入の希望であった.分析はEZR(Version 1.64)を用い,有意水準は5%とした.OTの役割の有無の把握と職種間の差についてはFisherの正確検定を実施し,有意差があった場合は,Bonferroniの多重比較を実施した.また,職種間とOTの関わり及び介入希望の差については,Kruskal-Wallis検定を実施した.本研究は,所属機関の研究倫理審査委員会の承認済み(RS23-07).
【結果】回答者の職種は助産師21名(29.2%),看護師4名(5.6%),保健師47名(65.3%)であった.施設内でOTと連携しているとの回答は5名であったが,施設外は0名であった.OTの役割については知っているが63名(87.5%),知らないが9名(12.5%)であった.今後のOTの関わりの希望については,非常にそう思うが21名(29.2%),ややそう思うが26名(36.1%),どちらともいえないが13名(18.1%),あまりそう思わないが3名(4.2%),全くそう思わないが1名(1.4%),無回答が8名(11.1%)であった.OTの役割の把握の有無と職種間の差については,助産師と保健師との間に有意な差が見られた(p=.026).また,OTの介入希望については,非常にそう思うが20名(27.8%),ややそう思うが29名(40.3%),どちらともいえないが15名(20.8%),あまりそう思わないが2名(2.8%),全くそう思わないが1名(1.4%),無回答が5名(6.9%)であった.職種間とOTの関わりの希望及び介入希望の差については,介入希望では有意差は見られなかったが,OTの関わりの希望については助産師と看護師(p=.046),看護師と保健師(p=.048)で有意な差が見られた.
【考察】本研究にて県全域においてもOTと連携をしている多職種は少ないこと,OTの関わりや介入の希望は6割以上あることが明らかとなった.実際に妊産婦に関わっている職種はOTの役割を知っていても,一緒に働いていたり,連携をしていることがほとんどなく,実際のOTのイメージがつき難いと考えられた.
〈謝辞:本研究は群馬県健康づくり財団健康づくり研究助成「あさを賞」の助成を受けたものです〉