[ON-6-5] ICT機器を用いた集団作業療法プログラムに関するスコーピングレビュー
【はじめに】
近年,高齢者に対する介護予防の一環として,ICT機器を用いた取り組みが行われるようになった.しかし,具体的な実施方法や介入効果についての知見は整理されていない.本研究の目的は,地域で生活する高齢者に対してICT機器を用いた集団作業療法(以下,集団OT)がどのように実施されているかについて,現状を整理し,リサーチギャップを特定することとした.
【方法】
既存の知見を網羅的に検索・要約し,リサーチギャップを特定するためにスコーピングレビュー(以下,ScR)を実施した.研究疑問として,ICT機器を用いた集団OTの実施方法(介入対象,実施内容,実施期間,実施頻度,研究デザイン,介入効果)と,リサーチギャップを設定した.本研究は,PRISMA-ScRのガイドラインを参考にScRを実施した.検索データベースは,「Pubmed」「Web of Science」「Science Direct」「OVID」「Cochrane Database」「Willy online library」「Academic Search Complete」「CINAHL」「SocINDEX」「Medline」を使用した.検索用語は研究疑問を元に作成した検索式を用いて行った(最終検索日2023年9月22日).適格基準は, (1)英語で書かれている,(2)著者に作業療法士が含まれている,(3)ICT機器を用いた集団プログラムを行っている,(4)研究対象者がICT機器を操作していること,とした.適格基準と除外基準に準じて,分析対象となる文献を抽出した.なお,学会抄録や解説・特集やレビュー論文は除外した.一次スクリーニングとして,タイトルと要旨から適格基準を満たしている文献を抽出した.二次スクリーニングで文献本文を精読し,対象文献を抽出した.
【結果】
文献検索で特定した4459件から,一次スクリーニング後に80件となり,その後の二次スクリーニングにて,適格基準に合致した10件が最終対象論文となった.実施国は,USAが3件で最多であり,次いでオランダ(2件),中国(2件)であった.対象文献の出版期間は2017年から2023年であった.介入対象は健康高齢者が5件,軽度認知症の高齢者が4件,弱視の高齢者が1件であった.実施内容としては,全ての文献でアプリの使用訓練が実施され,基本操作訓練や基礎知識の講義は2件で実施されていた.実施期間は,「4日間」から「6ヶ月」までであり,実施頻度は「毎日」から「2週に1回」であった.研究デザインは,RCT2件,ケースコントロール研究1件,コホート研究7件であった.介入効果としてはCOPM,タブレットの使用時間,タブレットの使用感,認知機能(注意,記憶),介護者の介護負担感,作業遂行,IADLでの改善が報告された.リサーチギャップとして,パイロット研究のためにサンプルサイズが限定されたことや,地域特性に応じた介入方法の検討が必要であること,ネットワーク制限によるICT機器の汎用性の課題が特定された.
【考察】
ICT機器を用いた集団作業療法の研究は,近年増加傾向であった.しかし,実施された地域は,北米,ヨーロッパ,東アジアからの報告に限定されていた.単群でのパイロット研究からRCTまで幅広い研究デザインで実施されている一方で,いずれの研究においてもサンプルサイズの課題や,さまざまな疾患を併せ持つ高齢者へのプログラムの応用の難しさが挙げられていた.今後,地域におけるICT機器を活用した集団OTを促進するためには,地域特性や疾患特性に応じたニーズ調査や実態調査を実施し,ニーズを明確にした上で,プログラムの一般化に向けた支援を行なっていく必要がある.
近年,高齢者に対する介護予防の一環として,ICT機器を用いた取り組みが行われるようになった.しかし,具体的な実施方法や介入効果についての知見は整理されていない.本研究の目的は,地域で生活する高齢者に対してICT機器を用いた集団作業療法(以下,集団OT)がどのように実施されているかについて,現状を整理し,リサーチギャップを特定することとした.
【方法】
既存の知見を網羅的に検索・要約し,リサーチギャップを特定するためにスコーピングレビュー(以下,ScR)を実施した.研究疑問として,ICT機器を用いた集団OTの実施方法(介入対象,実施内容,実施期間,実施頻度,研究デザイン,介入効果)と,リサーチギャップを設定した.本研究は,PRISMA-ScRのガイドラインを参考にScRを実施した.検索データベースは,「Pubmed」「Web of Science」「Science Direct」「OVID」「Cochrane Database」「Willy online library」「Academic Search Complete」「CINAHL」「SocINDEX」「Medline」を使用した.検索用語は研究疑問を元に作成した検索式を用いて行った(最終検索日2023年9月22日).適格基準は, (1)英語で書かれている,(2)著者に作業療法士が含まれている,(3)ICT機器を用いた集団プログラムを行っている,(4)研究対象者がICT機器を操作していること,とした.適格基準と除外基準に準じて,分析対象となる文献を抽出した.なお,学会抄録や解説・特集やレビュー論文は除外した.一次スクリーニングとして,タイトルと要旨から適格基準を満たしている文献を抽出した.二次スクリーニングで文献本文を精読し,対象文献を抽出した.
【結果】
文献検索で特定した4459件から,一次スクリーニング後に80件となり,その後の二次スクリーニングにて,適格基準に合致した10件が最終対象論文となった.実施国は,USAが3件で最多であり,次いでオランダ(2件),中国(2件)であった.対象文献の出版期間は2017年から2023年であった.介入対象は健康高齢者が5件,軽度認知症の高齢者が4件,弱視の高齢者が1件であった.実施内容としては,全ての文献でアプリの使用訓練が実施され,基本操作訓練や基礎知識の講義は2件で実施されていた.実施期間は,「4日間」から「6ヶ月」までであり,実施頻度は「毎日」から「2週に1回」であった.研究デザインは,RCT2件,ケースコントロール研究1件,コホート研究7件であった.介入効果としてはCOPM,タブレットの使用時間,タブレットの使用感,認知機能(注意,記憶),介護者の介護負担感,作業遂行,IADLでの改善が報告された.リサーチギャップとして,パイロット研究のためにサンプルサイズが限定されたことや,地域特性に応じた介入方法の検討が必要であること,ネットワーク制限によるICT機器の汎用性の課題が特定された.
【考察】
ICT機器を用いた集団作業療法の研究は,近年増加傾向であった.しかし,実施された地域は,北米,ヨーロッパ,東アジアからの報告に限定されていた.単群でのパイロット研究からRCTまで幅広い研究デザインで実施されている一方で,いずれの研究においてもサンプルサイズの課題や,さまざまな疾患を併せ持つ高齢者へのプログラムの応用の難しさが挙げられていた.今後,地域におけるICT機器を活用した集団OTを促進するためには,地域特性や疾患特性に応じたニーズ調査や実態調査を実施し,ニーズを明確にした上で,プログラムの一般化に向けた支援を行なっていく必要がある.