[ON-7-3] 地域在住高齢者における社会活動参加への動機づけに対するセルフモニタリングの効果
【序論】地域在住高齢者において,社会的孤立やフレイル,うつ病,認知症は本人やその家族の生活の質の低下と強く関連するため対策が必要である.サロンやボランティア活動などの社会活動参加の促進は,そういった問題解決において重要な役割を担っている.そして,高齢者の社会活動参加を促進するためには,社会活動参加への動機づけが特に重要とされる.近年の地域在住高齢者に対する研究では,健康状態の自己評価(以下,セルフモニタリング)によって,生活習慣や自身の健康状態への意識が高まり,健康であることへの動機づけが促進されることが報告されている.以上より,健康状態に加えて社会活動の内容も含めたセルフモニタリングが社会活動参加を促進するという仮説が立つ.そこで我々は,「社会活動を含めた健康セルフモニタリングシート(以下,セルフモニタリングシート)」を立案した.セルフモニタリングシートは,健康状態や社会活動参加状況を振り返り,翌日の生活目標を記入するシートである.
【目的】セルフモニタリングシートが,地域在住高齢者における社会活動参加の動機づけを高めるか明らかにする.
【方法】2022年8月~10月に4か所の通いの場に参加している地域在住高齢者33名を対象とした.対象者を介入群17名と対照群16名にランダムに振り分けた.収集したデータは年齢,性,家族構成,生活状況(仕事や通院,趣味,日記をつける習慣の有無など),社会的活動参加動機づけ尺度であった.社会的活動参加動機づけ尺度は,社会参加への動機づけに対する評価であり,「自己の発揮志向」,「自己成長の追求」,「他者への同調」,「喪失の制御」,「周囲への貢献希求」から構成される(各因子の得点範囲は1~5点,高いほど動機づけが高い).介入群は,30日間セルフモニタリングシートを個別で実施し(1日1回5分~10分),対照群は,普段の生活を継続した.解析はベイズ統計を用い,目的変数を介入前後の社会的活動参加動機づけ尺度の各得点変化量とし,説明変数を介入の有無,共変量をベースラインの社会的活動参加動機づけ尺度の得点とした共分散分析を実施した(95%ベイズ信頼区間が0を含まない場合に有意と解釈される).
【倫理的配慮】本研究は研究倫理審査委員会の承認を得ており,対象者には書面を用いて研究について説明し,同意を得た.
【結果】対象は,平均年齢76.00±5.79歳,女性22名(66.67%)であった.両群の対象者特性に差は認められなかった.社会的活動参加動機づけ尺度の1因子である「自己成長の追求」の変化量のみに有意差が認められた(介入前得点:介入群=4.12,対照群=4.10,介入後得点:介入群=4.13,対照群=3.88,変化量平均:介入群=0.01, 対照群=-0.22;事後期待値=0.25, 95%ベイズ信頼区間[0.01, 0.48]).
【考察】高齢者サロンに参加している本研究の対象者の「自己成長の追求」の得点は先行研究より高かった.しかし,そのような高齢者であっても動機づけは普段の生活のみでは低下する可能性が報告されている.実際に本研究では,対照群のみ「自己成長の追求」が低下した.「自己成長の追求」は社会参加が自分自身の成長に必要であると感じることで生じる動機づけであり,セルフモニタリングにより,社会参加の必要性を認識できたことが「自己成長の追求」の低下を抑制した可能性がある.本研究結果より,セルフモニタリングシートの実施は社会活動参加を維持するための対策として有用である可能性が示唆された.
【目的】セルフモニタリングシートが,地域在住高齢者における社会活動参加の動機づけを高めるか明らかにする.
【方法】2022年8月~10月に4か所の通いの場に参加している地域在住高齢者33名を対象とした.対象者を介入群17名と対照群16名にランダムに振り分けた.収集したデータは年齢,性,家族構成,生活状況(仕事や通院,趣味,日記をつける習慣の有無など),社会的活動参加動機づけ尺度であった.社会的活動参加動機づけ尺度は,社会参加への動機づけに対する評価であり,「自己の発揮志向」,「自己成長の追求」,「他者への同調」,「喪失の制御」,「周囲への貢献希求」から構成される(各因子の得点範囲は1~5点,高いほど動機づけが高い).介入群は,30日間セルフモニタリングシートを個別で実施し(1日1回5分~10分),対照群は,普段の生活を継続した.解析はベイズ統計を用い,目的変数を介入前後の社会的活動参加動機づけ尺度の各得点変化量とし,説明変数を介入の有無,共変量をベースラインの社会的活動参加動機づけ尺度の得点とした共分散分析を実施した(95%ベイズ信頼区間が0を含まない場合に有意と解釈される).
【倫理的配慮】本研究は研究倫理審査委員会の承認を得ており,対象者には書面を用いて研究について説明し,同意を得た.
【結果】対象は,平均年齢76.00±5.79歳,女性22名(66.67%)であった.両群の対象者特性に差は認められなかった.社会的活動参加動機づけ尺度の1因子である「自己成長の追求」の変化量のみに有意差が認められた(介入前得点:介入群=4.12,対照群=4.10,介入後得点:介入群=4.13,対照群=3.88,変化量平均:介入群=0.01, 対照群=-0.22;事後期待値=0.25, 95%ベイズ信頼区間[0.01, 0.48]).
【考察】高齢者サロンに参加している本研究の対象者の「自己成長の追求」の得点は先行研究より高かった.しかし,そのような高齢者であっても動機づけは普段の生活のみでは低下する可能性が報告されている.実際に本研究では,対照群のみ「自己成長の追求」が低下した.「自己成長の追求」は社会参加が自分自身の成長に必要であると感じることで生じる動機づけであり,セルフモニタリングにより,社会参加の必要性を認識できたことが「自己成長の追求」の低下を抑制した可能性がある.本研究結果より,セルフモニタリングシートの実施は社会活動参加を維持するための対策として有用である可能性が示唆された.