[OP-1-4] PD患者を対象にした眼球-頭部協調運動における課題特性による違い
【はじめに】視覚は日常生活において重要な感覚の一つであり,視線移動に関連する眼球頭部協調運動は日常生活の遂行において重要な役割を果たす.しかし,各個人の眼球頭部協調運動には個人差があると報告されているだけで,課題特性を分析するには至っていない.そのため,健常成人とパーキンソン病(以下PD)等の神経変性疾患患者における眼球頭部協調運動の違いは明らかになっておらず,PD患者の眼球運動の苦手さは報告されているが,有効な評価や介入方法がないのが現状である.そこで本研究では,以前本学会で報告した(秋田谷2023)眼球運動と頭部運動の分担比をもととした「追視基準分担比係数」を,健常成人とPD患者で比較し,課題特性の違いが眼球頭部協調運動に与える影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】対象者は,PD患者2名(70代女性/MMSE 26点 TMT PartA82秒,PartB 182秒エラー1,80代男性/MMSE 21点 TMT PartA51秒,PartB中止),20代から30代の健常成人5名(男性4名,女性1名)であった.対象者には頭部に加速度センサー(共和電業)及びゴーグル型の眼球運動計測装置(竹井機器工業;Talk Eye Lite)を装着してもらい,3種類の課題を実施した.追視課題では左右方向の追視を行い,視覚探索課題では検者が読み上げる数字の探索を行った.また,分類課題では中央に表示されるターゲットの色を確認した後に,該当する箇所の指差しを行った.それぞれの課題において,頭部は固定しなかった.測定項目は水平方向の視角,頭部X軸加速度,頭部Y軸加速度とした.それぞれの課題を1試行ずつ実施し,それらの結果から眼球運動量及び頭部運動量,眼球頭部協調運動時の眼球運動・頭部運動分担比を算出した(眼球運動量/頭部運動量).その後,追視課題を元とした際の割合(追視基準分担比計数)を算出した.PD患者においては健常成人5名の平均値と比較し,差が見られた項目と疾患特徴を比較検討した.なお,本研究は著者が在籍する大学の倫理審査委員会で承認を得て実施した(承認番号;5-1-64).
【結果】健常成人の追視基準分担比係数から,視覚探索課題において1より大きく眼球運動優位の方略,分類課題では係数が1より小さく頭部運動優位の方略となり,課題間で違いが認められた.一方,日常的に無動・姿勢傾倒が頻繁に観察される70代女性のPD患者では,全ての課題において追視基準分担比計数が1より小さく頭部運動優位の方略をとり,注視点への視線移動に時間がかかる傾向があった.また,視覚探索課題,分類課題ともに誤った方向に視線を向け,それを頭部を大きく動かし自己修正する反応も多く認められた.なお,80代男性のPD患者は健常成人と同様の傾向であり,課題遂行時間も違いが認められなかった.
【考察】本研究から,健常成人は単純に指標を探索する際には眼球運動が優位に働き,分類等の認知負荷がかかると頭部運動が優位となった.これは探索課題では視野を一定の範囲に固定して眼球の動きで課題に取り組むのに対し,認知的な負荷がかかると頭部を動かして対象物をできるだけ中心視に捉えようとすることが考えられた.一方で無動・姿勢傾倒が認められるPD患者では,全ての課題において注視点の探索及び視線移動に時間がかかる様子が認められた.このことは,視野範囲が狭窄し常に視線移動を行う際に頭部運動を多く用いている可能性があり,認知機能の低下の一因となっている可能性もある.特に今回対象としたPD患者では運動開始や姿勢に問題を抱えた女性対象者でのみ見られたため,眼球頭部協調運動と認知機能・運動機能との関連を今後さらに症例数を増やし検討していく.
【方法】対象者は,PD患者2名(70代女性/MMSE 26点 TMT PartA82秒,PartB 182秒エラー1,80代男性/MMSE 21点 TMT PartA51秒,PartB中止),20代から30代の健常成人5名(男性4名,女性1名)であった.対象者には頭部に加速度センサー(共和電業)及びゴーグル型の眼球運動計測装置(竹井機器工業;Talk Eye Lite)を装着してもらい,3種類の課題を実施した.追視課題では左右方向の追視を行い,視覚探索課題では検者が読み上げる数字の探索を行った.また,分類課題では中央に表示されるターゲットの色を確認した後に,該当する箇所の指差しを行った.それぞれの課題において,頭部は固定しなかった.測定項目は水平方向の視角,頭部X軸加速度,頭部Y軸加速度とした.それぞれの課題を1試行ずつ実施し,それらの結果から眼球運動量及び頭部運動量,眼球頭部協調運動時の眼球運動・頭部運動分担比を算出した(眼球運動量/頭部運動量).その後,追視課題を元とした際の割合(追視基準分担比計数)を算出した.PD患者においては健常成人5名の平均値と比較し,差が見られた項目と疾患特徴を比較検討した.なお,本研究は著者が在籍する大学の倫理審査委員会で承認を得て実施した(承認番号;5-1-64).
【結果】健常成人の追視基準分担比係数から,視覚探索課題において1より大きく眼球運動優位の方略,分類課題では係数が1より小さく頭部運動優位の方略となり,課題間で違いが認められた.一方,日常的に無動・姿勢傾倒が頻繁に観察される70代女性のPD患者では,全ての課題において追視基準分担比計数が1より小さく頭部運動優位の方略をとり,注視点への視線移動に時間がかかる傾向があった.また,視覚探索課題,分類課題ともに誤った方向に視線を向け,それを頭部を大きく動かし自己修正する反応も多く認められた.なお,80代男性のPD患者は健常成人と同様の傾向であり,課題遂行時間も違いが認められなかった.
【考察】本研究から,健常成人は単純に指標を探索する際には眼球運動が優位に働き,分類等の認知負荷がかかると頭部運動が優位となった.これは探索課題では視野を一定の範囲に固定して眼球の動きで課題に取り組むのに対し,認知的な負荷がかかると頭部を動かして対象物をできるだけ中心視に捉えようとすることが考えられた.一方で無動・姿勢傾倒が認められるPD患者では,全ての課題において注視点の探索及び視線移動に時間がかかる様子が認められた.このことは,視野範囲が狭窄し常に視線移動を行う際に頭部運動を多く用いている可能性があり,認知機能の低下の一因となっている可能性もある.特に今回対象としたPD患者では運動開始や姿勢に問題を抱えた女性対象者でのみ見られたため,眼球頭部協調運動と認知機能・運動機能との関連を今後さらに症例数を増やし検討していく.