[OP-2-4] 異なるピンチ動作時の母指CM関節を構成する大菱形骨および第1中手骨の動態観察
母指CM関節症は中年女性に好発する変形性関節症であり, 母指の疼痛とピンチ力低下により日常生活動作を著しく増悪させる疾患である. 母指CM関節症の治療には, 手術療法と保存的治療があるが, 保存的治療の一つにピンチ訓練が挙げられる.Adamsらは母指CM関節の安定性には, 第一背側骨間筋(FDI)と母指対立筋(OP)の同時収縮が重要であり, 母指CM 関節症に対してピンチ動作訓練を実施することで, 母指CM関節の亜脱臼を防ぐ可能性を述べている. また母指CM関節症に対するPinch動作訓練の効果に関する報告も複数ある. しかし, どのようなつまみが母指のCM関節の求心位に寄与するのかを詳細に報告した研究はない. 本研究の目的は, 健常者の母指CM関節に体表エコー検査を実施し,のどのつまみが母指CM関節の求心位に寄与, すなわち大菱形骨に対して中手骨が求心位となるかを検討することである.
対象者は, 定力分析ソフトG*Powerにて先行研究を参考に算出された20~25(平均年齢20.7±1.1歳)歳の健常女性24名とした. 本実験での課題は, 机上でのピンチ動作とし, 指尖つまみ, 指腹つまみ, 側腹つまみの3条件でそれぞれ3回ずつ合計9回のピンチ動作を実施し, 体表エコー検査で計測した. 被験者は, 椅子座位にて手関節回内外中間位で机の上に手を置き, 検者は被験者の母指CM関節背側部・橈側部にプローブを当て関節裂隙を描出した. 体表エコー検査により得られた画像は静止画にて保存し, 画像処理ソフトimage Jを用いて, 体表から大菱形骨および第一中手骨の最も高い部位に垂線を引き, 体表からの大菱形骨, 第一中手骨間の距離の差を安静時Difference in distance(以下, dd), ピンチ時dd¹でそれぞれ求め, 安静時とピンチ時の差を算出した. 本研究における求心位とは, ピンチ時のdd¹の値が0に近くなり, 開始時ddとピンチ時dd¹の差が大きいことと定義した. 得られたデータの変化量を反復測定一元配置分散分析, 多重比較は修正版Shafferの方法を用いて条件間で比較した.有意水準は5%とした.
統計解析の結果, 背側からの測定では各つまみ条件間で有意差を認めた(p=0.002). 開始時ddとピンチ時dd¹の差の平均値はそれぞれ, 指尖つまみ0.968±0.608㎜, 指腹つまみ0.351±0.583㎜, 側腹つまみ0.616±0.780㎜であった. 多重比較の結果, 指尖つまみが指腹つまみと比較し有意に高値であった(p<0.001).
指尖つまみは指腹つまみと比較しdd-dd¹の値が有意に大きかった. 指尖つまみでは手内筋のうち, 母指対立筋, 短母指屈筋, 短母指外転筋が動作に関与する. その中でも指腹, 側腹つまみと比較すると, 母指対立筋が動作に関与する. 一方で指腹つまみでは, 母指内転筋が動作に関与する. 母指内転筋は, 第3中手骨骨幹部, 第2・3中手骨の底部, 小菱形骨, 有頭骨から起始し, 母指基節骨底の尺側と指背腱膜に停止する. 第一中手骨には付着せず, 母指基節骨を尺側に牽引するため第一中手骨に対しては後方突出, 回外作用を持つと考えられている. 一方で母指対立筋は, 横手根靱帯の橈側, 大菱形骨から起始し, 第一中手骨橈側掌面の全長に渡って停止する. この解剖学的特徴により, 母指対立筋は中手骨基部の回内作用を持っているため, CM関節が求心位になった可能性が考えられる.
対象者は, 定力分析ソフトG*Powerにて先行研究を参考に算出された20~25(平均年齢20.7±1.1歳)歳の健常女性24名とした. 本実験での課題は, 机上でのピンチ動作とし, 指尖つまみ, 指腹つまみ, 側腹つまみの3条件でそれぞれ3回ずつ合計9回のピンチ動作を実施し, 体表エコー検査で計測した. 被験者は, 椅子座位にて手関節回内外中間位で机の上に手を置き, 検者は被験者の母指CM関節背側部・橈側部にプローブを当て関節裂隙を描出した. 体表エコー検査により得られた画像は静止画にて保存し, 画像処理ソフトimage Jを用いて, 体表から大菱形骨および第一中手骨の最も高い部位に垂線を引き, 体表からの大菱形骨, 第一中手骨間の距離の差を安静時Difference in distance(以下, dd), ピンチ時dd¹でそれぞれ求め, 安静時とピンチ時の差を算出した. 本研究における求心位とは, ピンチ時のdd¹の値が0に近くなり, 開始時ddとピンチ時dd¹の差が大きいことと定義した. 得られたデータの変化量を反復測定一元配置分散分析, 多重比較は修正版Shafferの方法を用いて条件間で比較した.有意水準は5%とした.
統計解析の結果, 背側からの測定では各つまみ条件間で有意差を認めた(p=0.002). 開始時ddとピンチ時dd¹の差の平均値はそれぞれ, 指尖つまみ0.968±0.608㎜, 指腹つまみ0.351±0.583㎜, 側腹つまみ0.616±0.780㎜であった. 多重比較の結果, 指尖つまみが指腹つまみと比較し有意に高値であった(p<0.001).
指尖つまみは指腹つまみと比較しdd-dd¹の値が有意に大きかった. 指尖つまみでは手内筋のうち, 母指対立筋, 短母指屈筋, 短母指外転筋が動作に関与する. その中でも指腹, 側腹つまみと比較すると, 母指対立筋が動作に関与する. 一方で指腹つまみでは, 母指内転筋が動作に関与する. 母指内転筋は, 第3中手骨骨幹部, 第2・3中手骨の底部, 小菱形骨, 有頭骨から起始し, 母指基節骨底の尺側と指背腱膜に停止する. 第一中手骨には付着せず, 母指基節骨を尺側に牽引するため第一中手骨に対しては後方突出, 回外作用を持つと考えられている. 一方で母指対立筋は, 横手根靱帯の橈側, 大菱形骨から起始し, 第一中手骨橈側掌面の全長に渡って停止する. この解剖学的特徴により, 母指対立筋は中手骨基部の回内作用を持っているため, CM関節が求心位になった可能性が考えられる.