[OP-2-5] ピンチ力向上に関する効果・効率的な訓練方法の検討
~ピンセットを利用した訓練方法について~
【はじめに】
手指外傷後の回復段階に応じたピンチ力測定結果についての学会発表や論文は散見されるが,ピンチ力訓練の効果に関するものは少ないのが現状である.一般的なピンチ力訓練用具として,洗濯バサミやセラプラストなどが挙げられるが,負荷量が定量ではなく不明確なため,効果判定や効果・効率的なピンチ力強化が行えているか判断が難しいところである.今回,ピンセットの負荷量を調整した訓練用具を使用して訓練を行ったところ,効果が認められたため報告する.
【対象】
対象は,予め研究内容を説明し同意を得た20代から50代の健常成人(当院リハビリテーション部スタッフ)20名とした.平均年齢は,32.9±9.4歳,男性12名,女性8名であり,右利き17名,左利き3名であった.
【方法】
本研究開始時にピンチ力(3指つまみ,指腹つまみ,側腹つまみ)をそれぞれ左右測定した.その後,強化群を各10名ずつ2グループに分け,週3回の訓練を実施することとし,2週間ごとに8週後まで再測定した.各強化群は,男女の割合,年齢,筋力がおおよそ均等になるように振り分け,いずれも有意差はなかった.強化群1(以下G1)は,負荷量を調整したピンセットで3指つまみと側腹つまみの訓練を各10回ずつ,強化群2(以下G2)は各20回ずつそれぞれ左右で行った.過負荷の原則により負荷量はそれぞれのピンチ力の80%(10RM)とした.解析は,それぞれの強化群における初回測定時と各測定時との間でピンチ力について対応のあるt検定を使用し,比較検討した.統計処理にはR4.2.1(CRAN)を用いた.
【結果】
G1では,利き手において,指腹つまみで初回と4週目との間,非利き手においては,指腹つまみと側腹つまみで初回と8週目との間で有意に向上が認められた.G2では,利き手において,指腹つまみと側腹つまみで初回と4週目との間,非利き手においては,3指つまみで初回と6週目との間,指腹つまみで初回と2週目,4週目,8週目との間,側腹つまみで初回と4週目,6週目,8週目との間で有意に向上が認められた.G2の非利き手においては,指腹つまみで初回と4週目,8週目との間,側腹つまみで初回と4週目,6週目,8週目との間は有意水準1%であり,それ以外は有意水準5%であった.【考察】
本研究においては,ピンセットの負荷量を調整した訓練用具を使用して訓練を行ったところ,いずれもピンチ力が向上傾向であり,いくつかの項目には有意差が認められた.G1よりG2の方がより有意にピンチ力が向上した項目が多かったことから,本訓練を週3回行う場合は,1回の訓練につき20回程度を2週間から8週間行うことが効果・効率的であることが示唆される.また,使用頻度の低いと思われる非利き手においてより有意にピンチ力が向上したことから,受傷後使用頻度の低くなった患側手に対して本訓練方法の有効性を示唆していると考える.
【まとめ】
1.ピンセットを利用したピンチ力訓練を一定期間行い,訓練の効果を検証した.
2.本訓練を週3回行う場合は,1回の訓練につき20回程度を2週間から8週間行うのが効果・効率的である.
3.受傷後使用頻度の低くなった患側手に対して本訓練方法は有効である.
4.今後は,等尺性収縮を利用した訓練方法やセット数を増やす方法等の効果を検証していきたい.
手指外傷後の回復段階に応じたピンチ力測定結果についての学会発表や論文は散見されるが,ピンチ力訓練の効果に関するものは少ないのが現状である.一般的なピンチ力訓練用具として,洗濯バサミやセラプラストなどが挙げられるが,負荷量が定量ではなく不明確なため,効果判定や効果・効率的なピンチ力強化が行えているか判断が難しいところである.今回,ピンセットの負荷量を調整した訓練用具を使用して訓練を行ったところ,効果が認められたため報告する.
【対象】
対象は,予め研究内容を説明し同意を得た20代から50代の健常成人(当院リハビリテーション部スタッフ)20名とした.平均年齢は,32.9±9.4歳,男性12名,女性8名であり,右利き17名,左利き3名であった.
【方法】
本研究開始時にピンチ力(3指つまみ,指腹つまみ,側腹つまみ)をそれぞれ左右測定した.その後,強化群を各10名ずつ2グループに分け,週3回の訓練を実施することとし,2週間ごとに8週後まで再測定した.各強化群は,男女の割合,年齢,筋力がおおよそ均等になるように振り分け,いずれも有意差はなかった.強化群1(以下G1)は,負荷量を調整したピンセットで3指つまみと側腹つまみの訓練を各10回ずつ,強化群2(以下G2)は各20回ずつそれぞれ左右で行った.過負荷の原則により負荷量はそれぞれのピンチ力の80%(10RM)とした.解析は,それぞれの強化群における初回測定時と各測定時との間でピンチ力について対応のあるt検定を使用し,比較検討した.統計処理にはR4.2.1(CRAN)を用いた.
【結果】
G1では,利き手において,指腹つまみで初回と4週目との間,非利き手においては,指腹つまみと側腹つまみで初回と8週目との間で有意に向上が認められた.G2では,利き手において,指腹つまみと側腹つまみで初回と4週目との間,非利き手においては,3指つまみで初回と6週目との間,指腹つまみで初回と2週目,4週目,8週目との間,側腹つまみで初回と4週目,6週目,8週目との間で有意に向上が認められた.G2の非利き手においては,指腹つまみで初回と4週目,8週目との間,側腹つまみで初回と4週目,6週目,8週目との間は有意水準1%であり,それ以外は有意水準5%であった.【考察】
本研究においては,ピンセットの負荷量を調整した訓練用具を使用して訓練を行ったところ,いずれもピンチ力が向上傾向であり,いくつかの項目には有意差が認められた.G1よりG2の方がより有意にピンチ力が向上した項目が多かったことから,本訓練を週3回行う場合は,1回の訓練につき20回程度を2週間から8週間行うことが効果・効率的であることが示唆される.また,使用頻度の低いと思われる非利き手においてより有意にピンチ力が向上したことから,受傷後使用頻度の低くなった患側手に対して本訓練方法の有効性を示唆していると考える.
【まとめ】
1.ピンセットを利用したピンチ力訓練を一定期間行い,訓練の効果を検証した.
2.本訓練を週3回行う場合は,1回の訓練につき20回程度を2週間から8週間行うのが効果・効率的である.
3.受傷後使用頻度の低くなった患側手に対して本訓練方法は有効である.
4.今後は,等尺性収縮を利用した訓練方法やセット数を増やす方法等の効果を検証していきたい.