[OP-3-5] 作業バランスの進化論的概念分析
【はじめに】
日常生活における健康的な活動のバランスを示す作業バランス(以下,OB)は,作業療法の実践の根底にある主要な概念のひとつであり,20世紀初頭からの重要な信条である.OBは,ワーク・ライフ・バランスなどと同義とされることもあり,定義は1つではない.研究者によっても捉え方が様々で,先行研究では,約20個の概念と約100個の下位概念があると報告されている.つまり,OBは依然曖昧で進化し続けている概念であることがわかる.しかし概念が曖昧な状態は,不適切な使用を引き起こし当該領域の発展と理解に影響を与えるため,概念を今一度確認する必要がある.そこで本研究は,不明確なOBに定義を与えその特徴を捉えることを目的に概念分析を行った.
【方法】
本研究の対象概念であるOBは,これまで時間と共に多様化し,ワークライフバランスなど様々な学問領域の言葉からも影響を受けてきた.そのため,概念は特定の文脈の中で時間と共に変化するという哲学的基盤をもつ,Rodgersの方法が適切と判断し採用した.
文献を分析の対象とし,CINAHL, PubMed, MEDLINEなどのデータベースにて検索を行った.検索語は”occupational balance”,”lifestyle balance”,”life balance”,”work-life balance”とした.設定した包含基準を基に文献を選定し,分析対象は107件とした.対象文献から,OBの属性,先行要因,帰結に該当する箇所を抽出し,質的に分析を行った.また,OBの関連語と代替語を特定した.分析プロセスは繰り返し行われた.
【結果】
議論の後,OBの定義を「日々の活動の程度・形式・資源を調整し,それに伴う非/充足の主観的な感覚」とした.
属性は,以下の8個のカテゴリーが生じた.「分類(Classification)(領域,特徴,二元的)」,「程度(Degree)(種類・量・割合)」,「形式(Form)(様式・習慣・リズム)」,「資源(Resource)(時間・エネルギー)」,「統制(Control)(調整・管理)」,「充足(Fulfillment)(満足・理想的・一致)」,「本質(Essence)(価値・有意義・重要)」,「一体感(Unity)(調和・互換性)」.
先行要因は,以下の6個のカテゴリーが生じた.「人口統計的素」,「心身の健康状態の変化と相違」,「ライフステージで変遷する社会的要求や責任」,「日々の生活の変化の認識」,「他者・家族・組織・地域の存在」,「社会的な文脈・主義・文化」.
帰結は,以下の3個のカテゴリーが生じた.「心身の健康状態」,「Well-being/QOL」,「より良いOB」.
【考察】
これまで2012年に1度OBの概念分析が行われており,「作業における適切な量とバリエーションがあるという個人的な認識」と定義されている.またバランスの理論的観点として,「量(Quantity)」「一致(Congruence)」「充足(Fulfillment)」「互換性(Compatibility)」が挙げられている.これらと本研究の定義や属性と照らし合わせると,共通性があり,加えて時間経過に伴う新たなOBの概念を反映しているように解釈できる.本研究における結果はあくまでも暫定的なものであり,今後もOBの概念は変化していくと思われる.
日常生活における健康的な活動のバランスを示す作業バランス(以下,OB)は,作業療法の実践の根底にある主要な概念のひとつであり,20世紀初頭からの重要な信条である.OBは,ワーク・ライフ・バランスなどと同義とされることもあり,定義は1つではない.研究者によっても捉え方が様々で,先行研究では,約20個の概念と約100個の下位概念があると報告されている.つまり,OBは依然曖昧で進化し続けている概念であることがわかる.しかし概念が曖昧な状態は,不適切な使用を引き起こし当該領域の発展と理解に影響を与えるため,概念を今一度確認する必要がある.そこで本研究は,不明確なOBに定義を与えその特徴を捉えることを目的に概念分析を行った.
【方法】
本研究の対象概念であるOBは,これまで時間と共に多様化し,ワークライフバランスなど様々な学問領域の言葉からも影響を受けてきた.そのため,概念は特定の文脈の中で時間と共に変化するという哲学的基盤をもつ,Rodgersの方法が適切と判断し採用した.
文献を分析の対象とし,CINAHL, PubMed, MEDLINEなどのデータベースにて検索を行った.検索語は”occupational balance”,”lifestyle balance”,”life balance”,”work-life balance”とした.設定した包含基準を基に文献を選定し,分析対象は107件とした.対象文献から,OBの属性,先行要因,帰結に該当する箇所を抽出し,質的に分析を行った.また,OBの関連語と代替語を特定した.分析プロセスは繰り返し行われた.
【結果】
議論の後,OBの定義を「日々の活動の程度・形式・資源を調整し,それに伴う非/充足の主観的な感覚」とした.
属性は,以下の8個のカテゴリーが生じた.「分類(Classification)(領域,特徴,二元的)」,「程度(Degree)(種類・量・割合)」,「形式(Form)(様式・習慣・リズム)」,「資源(Resource)(時間・エネルギー)」,「統制(Control)(調整・管理)」,「充足(Fulfillment)(満足・理想的・一致)」,「本質(Essence)(価値・有意義・重要)」,「一体感(Unity)(調和・互換性)」.
先行要因は,以下の6個のカテゴリーが生じた.「人口統計的素」,「心身の健康状態の変化と相違」,「ライフステージで変遷する社会的要求や責任」,「日々の生活の変化の認識」,「他者・家族・組織・地域の存在」,「社会的な文脈・主義・文化」.
帰結は,以下の3個のカテゴリーが生じた.「心身の健康状態」,「Well-being/QOL」,「より良いOB」.
【考察】
これまで2012年に1度OBの概念分析が行われており,「作業における適切な量とバリエーションがあるという個人的な認識」と定義されている.またバランスの理論的観点として,「量(Quantity)」「一致(Congruence)」「充足(Fulfillment)」「互換性(Compatibility)」が挙げられている.これらと本研究の定義や属性と照らし合わせると,共通性があり,加えて時間経過に伴う新たなOBの概念を反映しているように解釈できる.本研究における結果はあくまでも暫定的なものであり,今後もOBの概念は変化していくと思われる.