[OP-4-1] 医療機関にて身体障害を対象とする作業療法士が行う復職支援について
~職場との連携に関するスコーピングレビュー~
【はじめに】
本研究の目的は,医療機関にて身体障害を対象とする作業療法士の復職支援について,制度上の課題を明らかにすることである.そのため,復職先の雇用主や上司との連携内容,支援内容の状況を中心に,網羅的に収集を行った.
【方法】
本研究の研究デザインは,スコーピングレビューとした.対象文献の選定基準は,①学会抄録や原著論文などの形式に基準は設けないが,症例報告であること,②日本国内での取り組みであること,③身体障害患者を対象とした医療機関の作業療法実践報告であること,④職場との連携を行っていること,これらの4つの基準をすべて満たすものとした.文献データベースは,「医学中央雑誌」「CiNii」「メディカルオンライン」を用いた.検索式は(就労支援/TA or 復職支援/TA or 仕事復帰/TA or 職場復帰/TA) and (作業療法/AL),検索期間は2015年1月~2023年6月とした.一次スクリーニングとして重複文献を除外し,タイトルと要旨が適格基準を満たしているものを抽出し,二次スクリーニングでは文献本文より適格性の最終評価を行った.最終抽出された文献を再度精読し,作業療法実践内容,職場との連携内容を整理した.なお,本方法の研究論文等の検索と収集,研究論文等の選択は,筆頭著者を含む3名で実施した.これらは倫理指針に基づいて行った.
【結果】
文献データベースより,905文献(医学中央雑誌432文献,CiNii 148文献,メディカルオンライン325文献)が抽出され,そのうち重複文献を除いた566文献について,タイトル,要旨による一次スクリーニングを行った結果,73文献が抽出された.次にこれらの論文の全文を入手し,二次スクリーニングによる適格性の最終評価を行った.その結果最終的に32文献が抽出され,内訳は学会抄録が23件,原著論文が6件,特集論文が2件,解説が1件であった.
介入対象者は32例であり,入院中9例,外来15例,入院中から外来に渡る例が8例であった.対象者の内訳は男性24例,女性8例,年齢は20代4例,30代2例,40代13例,50代10例,60歳以上3例であった.疾患は脳血管疾患19例(くも膜下出血6例,頭蓋内出血8例,脳梗塞5例),頭蓋内損傷5例,悪性新生物3例,脊髄損傷2例,その他3例であった.各対象者の主だった障害は,注意障害や記銘力障害などの高次脳機能障害22例,運動麻痺5例,その他5例であった.病前の職業は,製品製造・加工処理4例,金属材料製造・金属加工3例,一般事務3例など多岐にわたった.支援後に元の職場に復帰したのは27例で,内,配置転換を要した例が6例,就労時間や内容の調整を要した例が14例であった.また,再就職が2件,福祉就労が2件,未就労が1件であった.連携先の対応者は,重複を含め,雇用主や上司が22件と最も多く,障害者職業センターのカウンセラー等が6件,就労移行支援事業所の支援員等が3件であった.支援内容は,多い順に情報共有,職場の環境評価,就労時間や業務内容の調整などであった.支援期間は,6カ月未満6例,6カ月以上1年未満5件,1年以上2年未満6件,2年以上5件,不明9件,継続中1件であった.
【考察】
復職支援における作業療法士の主な役割は,情報共有,職場の環境の評価,適切な就労時間や業務内容の提案等であり,多くが雇用先へ出向いて行われていた.現在,施設外訓練の算定は入院中の疾患別リハビリテーション料3単位が上限である.さらに再雇用までの介入は複数年を要す例も多く,実状に合わせた制度の充実が望まれる.
本研究の目的は,医療機関にて身体障害を対象とする作業療法士の復職支援について,制度上の課題を明らかにすることである.そのため,復職先の雇用主や上司との連携内容,支援内容の状況を中心に,網羅的に収集を行った.
【方法】
本研究の研究デザインは,スコーピングレビューとした.対象文献の選定基準は,①学会抄録や原著論文などの形式に基準は設けないが,症例報告であること,②日本国内での取り組みであること,③身体障害患者を対象とした医療機関の作業療法実践報告であること,④職場との連携を行っていること,これらの4つの基準をすべて満たすものとした.文献データベースは,「医学中央雑誌」「CiNii」「メディカルオンライン」を用いた.検索式は(就労支援/TA or 復職支援/TA or 仕事復帰/TA or 職場復帰/TA) and (作業療法/AL),検索期間は2015年1月~2023年6月とした.一次スクリーニングとして重複文献を除外し,タイトルと要旨が適格基準を満たしているものを抽出し,二次スクリーニングでは文献本文より適格性の最終評価を行った.最終抽出された文献を再度精読し,作業療法実践内容,職場との連携内容を整理した.なお,本方法の研究論文等の検索と収集,研究論文等の選択は,筆頭著者を含む3名で実施した.これらは倫理指針に基づいて行った.
【結果】
文献データベースより,905文献(医学中央雑誌432文献,CiNii 148文献,メディカルオンライン325文献)が抽出され,そのうち重複文献を除いた566文献について,タイトル,要旨による一次スクリーニングを行った結果,73文献が抽出された.次にこれらの論文の全文を入手し,二次スクリーニングによる適格性の最終評価を行った.その結果最終的に32文献が抽出され,内訳は学会抄録が23件,原著論文が6件,特集論文が2件,解説が1件であった.
介入対象者は32例であり,入院中9例,外来15例,入院中から外来に渡る例が8例であった.対象者の内訳は男性24例,女性8例,年齢は20代4例,30代2例,40代13例,50代10例,60歳以上3例であった.疾患は脳血管疾患19例(くも膜下出血6例,頭蓋内出血8例,脳梗塞5例),頭蓋内損傷5例,悪性新生物3例,脊髄損傷2例,その他3例であった.各対象者の主だった障害は,注意障害や記銘力障害などの高次脳機能障害22例,運動麻痺5例,その他5例であった.病前の職業は,製品製造・加工処理4例,金属材料製造・金属加工3例,一般事務3例など多岐にわたった.支援後に元の職場に復帰したのは27例で,内,配置転換を要した例が6例,就労時間や内容の調整を要した例が14例であった.また,再就職が2件,福祉就労が2件,未就労が1件であった.連携先の対応者は,重複を含め,雇用主や上司が22件と最も多く,障害者職業センターのカウンセラー等が6件,就労移行支援事業所の支援員等が3件であった.支援内容は,多い順に情報共有,職場の環境評価,就労時間や業務内容の調整などであった.支援期間は,6カ月未満6例,6カ月以上1年未満5件,1年以上2年未満6件,2年以上5件,不明9件,継続中1件であった.
【考察】
復職支援における作業療法士の主な役割は,情報共有,職場の環境の評価,適切な就労時間や業務内容の提案等であり,多くが雇用先へ出向いて行われていた.現在,施設外訓練の算定は入院中の疾患別リハビリテーション料3単位が上限である.さらに再雇用までの介入は複数年を要す例も多く,実状に合わせた制度の充実が望まれる.