[OP-4-3] 認知行動療法を活用した作業療法の実態と課題に関する文献レビュー
【序論】
認知行動療法は国内外を問わずうつ病,パニック障害,強迫性障害,統合失調症に対する治療効果が報告されている(大野, 2005). また,整形外科疾患においても関節炎に対する認知行動療法では痛み,不安,抑うつ,コーピング,身体機能に対して有益な効果があることがメタアナリシスで報告されている(Dixon et al., 2007; McMahon et al., 2013).作業療法場面で認知行動療法を活用した介入もされており,認知行動療法を学びたいとする作業療法士は8割を超えているが,実施経験は1割を満たしておらず,ニーズと現状のギャップが生じている(田島,2015).
【目的】
本研究は作業療法士が認知行動療法を活用した介入の文献レビューを実施し,その実態と課題についての知見を得ることを目的とする.
【方法】
文献検索はPubMedと医中誌Webを用いて実施した. 期間は2000年~2023年とした.PubMedでは,“Cognitive behavioral therapy” AND “Occupational therapy”,医中誌Webでは“認知行動療法” AND “作業療法” で検索した.PRISMA声明に則って適格性の確認を実施した(上岡,2021). 対象文献は全文入手可能で,作業療法士が認知行動療法を活用して介入したことがわかる論文を採用し,その実態について分析した.
【結果】
文献は合計7件(国内4件,国外3件)の文献が特定され,その内,文献の種類は原著論文が2件,実践報告が4件,パイロットスタディが1件であった. 研究デザインは症例報告が3件,ケースコントロール研究が2件,ランダム化比較試験が1件,無作為パイロット研究が1件であった.その内,各症状に対するアプローチは5件であり,作業に着目したアプローチは2件であった.また,認知行動療法のプロトコルに則った研究は0件であった.
効果としては,不安症の改善,うつ病患者の復職への基礎的準備性の改善,不眠症の改善,慢性腰痛の改善に伴う基本動作・セルフケア・趣味活動の改善,変形性膝関節症患者の身体機能の改善,軽症脳卒中患者における自己効力感・抑うつ・行動・情緒状態の改善,成人期ADHD者の障害認識・就労支援・就労定着に対しての有用性の示唆等が挙げられていた.
【考察】
認知行動療法を活用した作業療法士による介入は多様な疾患で活用されており,各症状や目的において報告数が少ないながらも有用性が示唆されているが,認知行動療法のプロトコルに則った報告がなされていないことが課題である.今後,各症状に合わせた効果的な介入プロトコルの確立や,認知行動療法を実践できる作業療法士の教育プログラムに関する研究が増加していくことが望まれる.
また,認知行動療法は現在,心理士や精神科医,看護師等が主に行っているが,整形外科疾患における疼痛改善や身体機能の改善においては殆ど行われていないため,整形外科疾患のクライアントに関わる機会が多い作業療法士が認知行動療法を活用した作業療法の治療効果が証明されれば,より効果的な治療を提供することができる可能性があると考える.
認知行動療法は国内外を問わずうつ病,パニック障害,強迫性障害,統合失調症に対する治療効果が報告されている(大野, 2005). また,整形外科疾患においても関節炎に対する認知行動療法では痛み,不安,抑うつ,コーピング,身体機能に対して有益な効果があることがメタアナリシスで報告されている(Dixon et al., 2007; McMahon et al., 2013).作業療法場面で認知行動療法を活用した介入もされており,認知行動療法を学びたいとする作業療法士は8割を超えているが,実施経験は1割を満たしておらず,ニーズと現状のギャップが生じている(田島,2015).
【目的】
本研究は作業療法士が認知行動療法を活用した介入の文献レビューを実施し,その実態と課題についての知見を得ることを目的とする.
【方法】
文献検索はPubMedと医中誌Webを用いて実施した. 期間は2000年~2023年とした.PubMedでは,“Cognitive behavioral therapy” AND “Occupational therapy”,医中誌Webでは“認知行動療法” AND “作業療法” で検索した.PRISMA声明に則って適格性の確認を実施した(上岡,2021). 対象文献は全文入手可能で,作業療法士が認知行動療法を活用して介入したことがわかる論文を採用し,その実態について分析した.
【結果】
文献は合計7件(国内4件,国外3件)の文献が特定され,その内,文献の種類は原著論文が2件,実践報告が4件,パイロットスタディが1件であった. 研究デザインは症例報告が3件,ケースコントロール研究が2件,ランダム化比較試験が1件,無作為パイロット研究が1件であった.その内,各症状に対するアプローチは5件であり,作業に着目したアプローチは2件であった.また,認知行動療法のプロトコルに則った研究は0件であった.
効果としては,不安症の改善,うつ病患者の復職への基礎的準備性の改善,不眠症の改善,慢性腰痛の改善に伴う基本動作・セルフケア・趣味活動の改善,変形性膝関節症患者の身体機能の改善,軽症脳卒中患者における自己効力感・抑うつ・行動・情緒状態の改善,成人期ADHD者の障害認識・就労支援・就労定着に対しての有用性の示唆等が挙げられていた.
【考察】
認知行動療法を活用した作業療法士による介入は多様な疾患で活用されており,各症状や目的において報告数が少ないながらも有用性が示唆されているが,認知行動療法のプロトコルに則った報告がなされていないことが課題である.今後,各症状に合わせた効果的な介入プロトコルの確立や,認知行動療法を実践できる作業療法士の教育プログラムに関する研究が増加していくことが望まれる.
また,認知行動療法は現在,心理士や精神科医,看護師等が主に行っているが,整形外科疾患における疼痛改善や身体機能の改善においては殆ど行われていないため,整形外科疾患のクライアントに関わる機会が多い作業療法士が認知行動療法を活用した作業療法の治療効果が証明されれば,より効果的な治療を提供することができる可能性があると考える.