第58回日本作業療法学会

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一般演題

基礎研究 /管理運営

[OP-4] 一般演題:基礎研究 4/管理運営 1 

Sun. Nov 10, 2024 10:50 AM - 11:50 AM H会場 (207)

座長:井村 亘(玉野総合医療専門学校 作業療法学科)

[OP-4-4] 臨床経験年数別にみるリハビリスタッフが抱える課題と達成度の違い

~ COPM を利用して見えてきたこと~

坂下 竜也, 押川 眞, 景山 沙織 (医療法人徳洲会 福岡徳洲会病院 リハビリテーション科)

【はじめに】
 当院リハビリテーション(リハビリ)科では年に2回,理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)の各部門長は,リハビリスタッフの育成や教育を目的に面談を通して各自の課題の確認や目標の設定を行っている.その中で臨床経験年数の違いで課題とする内容やその達成に至る過程に違いがある事を感じてはいたものの,その詳細な内容を把握するまでには至っていなかった.そこで今回,業務改善の一環としてカナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure:COPM)を利用し,これらの把握に努めると共に今後の指導や教育方針を検討する事とした.
【方法】
 対象は当リハビリ科に所属するPT56名,OT29名,ST15名の計100名で,臨床経験年数は1年目から31年目の平均8.1±6.9年である.部門長との面談はスタッフ一人に対し約15分程度で,令和5年5月(前期)と10月(後期)の2回実施した.前期面談時期に当リハビリ科で使用している業務成果表を通して各スタッフに自身が重要と思う課題を5つ選択してもらい,COPMの方法に準じて選択した課題の「遂行度」と「満足度」を自己採点してもらった.前期面談後に選択した課題に対しては,各自で課題達成に向けた取り組みを行い,後期面談時期に再度自己採点してもらった.経験年数は1年目12名(A),2~5年目30名(B),6~10年目29名(C),11~15年目16名(D),16年目以上13名(E)と5グループに分けた.選択した課題はその内容から,評価や治療等の「直接業務」,診療録記載や書類作成等の「間接業務」,接遇や他職種連携等の「対人関係」,研修会参加やサブライセンス取得等の「キャリアアップ」の4項目に分け,臨床経験年数別に選択した課題の違いや遂行度と満足度の推移を検証した.
【結果】
 選択した課題の割合は「直接業務」がA:40%,B:64%,C:53%,D:41%,E:38%,「間接業務」がA:22%,B:11%,C:8%,D:6%,E:9%,「対人関係」がA:27%,B:13%,C:13%,D:24%,E:25%,「キャリアアップ」がA:11%,B:12%,C:26%,D:29%,E:28%であった.1年目を除く10年目までは直接業務の比率が高く,1年目は間接業務の比率が他のグループより高い傾向にあった.また,1年目と11年目以降に対人関係の比率が高い傾向にあり,6年目以降でキャリアアップの比率が高くなる傾向があった.COPM総スコア(合計50点満点)の平均点は,「遂行度」が前期~後期でA:22.7~29.0,B:24.5~27.4,C:26.8~31.1,D:28.6~32.3,E:30.6~32.8に対し,「満足度」がA:18.3~24.5,B:18.8~23.3,C:23.5~28.1,D:25.3~29.8,E:26.7~30.5であった.その点数差は「遂行度」と「満足度」でA:6.3と6.2, B:2.9と4.4,C:4.3と4.6,D:3.7と4.6,E:1.7と3.8であり,すべてのグループで後期の遂行度と満足度が高くなった.中でも1年目でその差が最も大きく,16年目以上で最も少なかった.
【考察・まとめ】
 Lawらはリハビリスタッフの問題に対し,フィードバックや指導を行う際にもCOPMを活用できることを述べている.今回の結果から,臨床経験年数別に課題と捉える内容に明確な違いがあり,前期と後期の遂行度と満足度の点数差から,経験年数の違いで課題の達成度に差がある事を確認できたと思う.臨床経験の積年を経てこのような傾向にある事を理解し,スタッフの経験年数を考慮した指導や教育方針を見直すと共に,より課題達成が円滑に進むよう支援していきたい.