[OR-1-1] リスクマネジメントの能力向上のための授業
~ 2 つのリスク感覚に着目して~
【はじめに】リスクマネジメントが機能するためには事故を読みとる「リスク感性」の必要性が指摘され,リスク感性は年齢や経験年数を重ねるだけでは高まらないとの報告もある.リスクかどうかの見極めは主観的な判断(リスク認知)によって行われる.また,リスク認知は「一般市民」と「専門家」にはズレがあるとされる.リスク感性は事故を振り返り危ないと感じた時点で芽生えた「リスク感覚」をディスカッションによって次につなげていくことが必要とされる.本校では安全な医療を提供できる作業療法士を養成の必要性を感じ,1年生の学生を対象に授業を実施した.今回,授業が2つのリスク感覚の変化に与える効果を検証する.
【方法】対象:作業療法士学科昼間部4年制課程1年生27名.男性6名,女性21名.
方法:90分3回の授業.授業構成は①「Time pressure-Kiken Yochi Training効果測定システム」(以下TP-KYT),②授業1(生活上のリスクについて),③授業2(リハビリテーション場面のリスク)を実施し,授業前後にアンケートを実施した.授業1・2は講義と演習を組み合わせ実施した.
アンケート:「リスク感覚(普段の生活とリハビリテーション場面で危ないと感じる事)はどれくらいと思いますか」について,0(危ないと感じない)から10(とても危ないと感じる)の11段階で自己評価を求めた.授業前後のリスク感覚の変化に対して(1)全体,(2)平均値より高群/低群に分けWilcoxon符号順位検定を用いた.また,授業前後の普段の生活とリハビリテーション場面のリスク感覚に対して Spearmanの順位相関係数を用いた.統計解析ソフトは EZR(Ver.1.54) を使用した.アンケートの実施にあたり,個人情報保護や成績に関係しない事を口頭説明し同意を得て実施した.尚,本研究は筆者が所属する学校研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:第21−教82号)
【結果】授業前のリハビリテーション場面におけるリスク感覚が平均より低群において授業前後に有意な差が見られた(p=0.010).高群では有意な差は見られなかった(p= 0.057).また,普段の生活(ρ=0.196,P=0.326)とリハビリテーション場面(ρ=0.337,P=0.086)のリスク感覚に対して相関は見られなかった.
【考察】今回リスク感覚の変化に関して全体では変化が見られなかった.しかし,リスク感覚の高群/低群に分け比べると低群において変化が見られた.高群においては変化する傾向が確認された.これは,授業によって高い学生は低く,低い学生は高くなるといった両方向の修正が生じたためと考える.リスク認知には個々のヒューリスティックの影響を受け認知バイアスが生じるとされている.今回の対象は実習に出る前の学生であり,リハビリテーション場面でのリスクに対して未経験の状態であため主観的な判断をしているが,ディスカッションを通じ他者の意見を取り入れることで客観性が生まれ修正されたのではないかと考える.
また,「一般市民」と「専門家」にはズレがあるとされるリスク認知に関してリハビリテーション場面のみに変化があったことから,リスクマネジメント能力を高めるためには専門的な内容を用いた授業が必要であることが示唆された.
【方法】対象:作業療法士学科昼間部4年制課程1年生27名.男性6名,女性21名.
方法:90分3回の授業.授業構成は①「Time pressure-Kiken Yochi Training効果測定システム」(以下TP-KYT),②授業1(生活上のリスクについて),③授業2(リハビリテーション場面のリスク)を実施し,授業前後にアンケートを実施した.授業1・2は講義と演習を組み合わせ実施した.
アンケート:「リスク感覚(普段の生活とリハビリテーション場面で危ないと感じる事)はどれくらいと思いますか」について,0(危ないと感じない)から10(とても危ないと感じる)の11段階で自己評価を求めた.授業前後のリスク感覚の変化に対して(1)全体,(2)平均値より高群/低群に分けWilcoxon符号順位検定を用いた.また,授業前後の普段の生活とリハビリテーション場面のリスク感覚に対して Spearmanの順位相関係数を用いた.統計解析ソフトは EZR(Ver.1.54) を使用した.アンケートの実施にあたり,個人情報保護や成績に関係しない事を口頭説明し同意を得て実施した.尚,本研究は筆者が所属する学校研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:第21−教82号)
【結果】授業前のリハビリテーション場面におけるリスク感覚が平均より低群において授業前後に有意な差が見られた(p=0.010).高群では有意な差は見られなかった(p= 0.057).また,普段の生活(ρ=0.196,P=0.326)とリハビリテーション場面(ρ=0.337,P=0.086)のリスク感覚に対して相関は見られなかった.
【考察】今回リスク感覚の変化に関して全体では変化が見られなかった.しかし,リスク感覚の高群/低群に分け比べると低群において変化が見られた.高群においては変化する傾向が確認された.これは,授業によって高い学生は低く,低い学生は高くなるといった両方向の修正が生じたためと考える.リスク認知には個々のヒューリスティックの影響を受け認知バイアスが生じるとされている.今回の対象は実習に出る前の学生であり,リハビリテーション場面でのリスクに対して未経験の状態であため主観的な判断をしているが,ディスカッションを通じ他者の意見を取り入れることで客観性が生まれ修正されたのではないかと考える.
また,「一般市民」と「専門家」にはズレがあるとされるリスク認知に関してリハビリテーション場面のみに変化があったことから,リスクマネジメント能力を高めるためには専門的な内容を用いた授業が必要であることが示唆された.