[OR-1-2] 当院における作業療法士のリスクマネジメントについてのアンケート調査
~経験による相違についての考察~
【はじめに】
近年の臨床現場において,リスクマネジメントへの取り組みや,リスク管理の徹底が重要視されている.先行研究において,事故発生件数は業務経験年数と高い相関を示すとの報告が多くみられる.当院においても,新人作業療法士(以下,新人OT)の事故内容の多様化や発生件数が増加しており,リスク管理能力の向上や教育体制の見直しが急務である.
【目的】
リスクマネジメントについてアンケートを実施し,新人とプリセプターとリーダークラスによる,自己評価の相違について調査を行った.経験による相違から,問題・課題を明らかにし,事故発生防止や発生時の初期対応の改善を図ることを目的とした.
【方法】
当院に在籍する作業療法士24名にアンケートを実施.同意書にて同意を得た.アンケートは,前田らのリハビリテーションにおけるリスクマネジメントの考え方を参考に【訓練処方箋に基づくリハ医療】【患者の安全】【施設・設備・危機管理】【常備すべき器具】【リスクマネジメント・マニュアルの作成】の各項目についての質問と,教育の必要性や学びたい内容などを加えた12問の質問をリッカート法(1:できている,2:毎回ではないができている,3:できていないことが多い,4:できていない)(1:思わない,2:毎回ではないが思う,3:思うことが多い,4:思う)と記述式にて構成した.分析方法は,新人をA群(n=8),プリセプターをB群(n=8),リーダークラスをC群(n=8)の3群に分類し,EZR Ver.4.2.3を用いて,群間の比較にKruskal-Wallis検定を適用し,有意水準は5%とした.
【結果】
分析結果は,「リハビリ処方内容への理解」(p=0.01)(中央値(MED):A群2.0,B群1.0,C群1.0).「対象者の異変についての他職種への報告」(p=0.03)(MED:A群2.0,B群1.0,C群1.0),「リハビリ機器を使用する場合の用途や有害事象への理解」(p=0.01)(MED:A群2.0,B群1.0,C群1.0),「急変時に医療安全マニュアルの通りに初期対応が行えるか」(p<0.001)(MED:A群3.0,B群2.0,C群1.0),「リスク管理に対する教育は十分であるか」(p=0.002)(MED:A群4.0,B群2.0,C群2.0)の5問に有意差がみられた.
【考察】
今回の結果,各項目ともに有意差があり自己評価は全般的に経験による差がみられる結果となった.特に,【リスクマネジメント・マニュアルの作成】の「急変時に医療安全マニュアルの通りに初期対応が行えるか」について有意差が大きくみられた.回復期病棟では急変が少なく,入院時カンファレンスにて中止基準が明確化されていることも一因にある.また,全身状態が不安定な場合や急変の可能性が高い患者は,一定の経験年数を有する者が担当することが多く,個々の経験則からリスク管理を行われることが多い.これらのことから,新人は急変場面に遭遇する機会が少なく,初期対応に関する経験不足から,自己評価が低いと考えられる.また,医療安全研修においても経験年数が高いものからの指示の下で動くため受動的な立場にあたることも要因である.アクシデントの対策は,発生前に行う予防的行動と発生後に行われる事故要因分析や再発予防の取り組みなどがある(竹内,2011)とされる.様々な経験年数を有する者での実際の急変時の振り返りや,新人のみでの急変に対するデモンストレーションを行い,高い意識を持ち続けることが必要である.本研究では自己評価に限局していることや経験以外の他の因子との関連性を検討することが必要である.
近年の臨床現場において,リスクマネジメントへの取り組みや,リスク管理の徹底が重要視されている.先行研究において,事故発生件数は業務経験年数と高い相関を示すとの報告が多くみられる.当院においても,新人作業療法士(以下,新人OT)の事故内容の多様化や発生件数が増加しており,リスク管理能力の向上や教育体制の見直しが急務である.
【目的】
リスクマネジメントについてアンケートを実施し,新人とプリセプターとリーダークラスによる,自己評価の相違について調査を行った.経験による相違から,問題・課題を明らかにし,事故発生防止や発生時の初期対応の改善を図ることを目的とした.
【方法】
当院に在籍する作業療法士24名にアンケートを実施.同意書にて同意を得た.アンケートは,前田らのリハビリテーションにおけるリスクマネジメントの考え方を参考に【訓練処方箋に基づくリハ医療】【患者の安全】【施設・設備・危機管理】【常備すべき器具】【リスクマネジメント・マニュアルの作成】の各項目についての質問と,教育の必要性や学びたい内容などを加えた12問の質問をリッカート法(1:できている,2:毎回ではないができている,3:できていないことが多い,4:できていない)(1:思わない,2:毎回ではないが思う,3:思うことが多い,4:思う)と記述式にて構成した.分析方法は,新人をA群(n=8),プリセプターをB群(n=8),リーダークラスをC群(n=8)の3群に分類し,EZR Ver.4.2.3を用いて,群間の比較にKruskal-Wallis検定を適用し,有意水準は5%とした.
【結果】
分析結果は,「リハビリ処方内容への理解」(p=0.01)(中央値(MED):A群2.0,B群1.0,C群1.0).「対象者の異変についての他職種への報告」(p=0.03)(MED:A群2.0,B群1.0,C群1.0),「リハビリ機器を使用する場合の用途や有害事象への理解」(p=0.01)(MED:A群2.0,B群1.0,C群1.0),「急変時に医療安全マニュアルの通りに初期対応が行えるか」(p<0.001)(MED:A群3.0,B群2.0,C群1.0),「リスク管理に対する教育は十分であるか」(p=0.002)(MED:A群4.0,B群2.0,C群2.0)の5問に有意差がみられた.
【考察】
今回の結果,各項目ともに有意差があり自己評価は全般的に経験による差がみられる結果となった.特に,【リスクマネジメント・マニュアルの作成】の「急変時に医療安全マニュアルの通りに初期対応が行えるか」について有意差が大きくみられた.回復期病棟では急変が少なく,入院時カンファレンスにて中止基準が明確化されていることも一因にある.また,全身状態が不安定な場合や急変の可能性が高い患者は,一定の経験年数を有する者が担当することが多く,個々の経験則からリスク管理を行われることが多い.これらのことから,新人は急変場面に遭遇する機会が少なく,初期対応に関する経験不足から,自己評価が低いと考えられる.また,医療安全研修においても経験年数が高いものからの指示の下で動くため受動的な立場にあたることも要因である.アクシデントの対策は,発生前に行う予防的行動と発生後に行われる事故要因分析や再発予防の取り組みなどがある(竹内,2011)とされる.様々な経験年数を有する者での実際の急変時の振り返りや,新人のみでの急変に対するデモンストレーションを行い,高い意識を持ち続けることが必要である.本研究では自己評価に限局していることや経験以外の他の因子との関連性を検討することが必要である.