[OR-1-4] 入学前学習行動は作業療法士養成校のチューター制学習と学業成績に関係する
【背景】
学業不振による休退学を減らすために,基礎学力の向上を図るリメディアル教育を導入するOT養成校が増えている(野本,2021).その教育法には,学生が小グループで協力しながら勉強する協同学習があり(藤原ら,2021),高校までの受動的態度から自律的な学びへの変換が求められる.本OT専攻では1年生が難渋する解剖学を中心に,教員がチューターとなって指導にあたるチューター制学習(以下,チューター制) を実践しており,その有効性を報告している(千田ら,2022).しかし,チューター制に対する学生自己評価,学業成績,入学前の学習行動との関係性は不明で,これらの相互関係を探索することはチューター制を効果的に運用する一助になると考える.
【目的】
OT養成校入学前の学習行動とチューター制の学生自己評価及び学業成績との関係を検討する.
【方法】
令和3-5年度に本OT専攻に入学した82名中,同意の基に入学時の学習行動調査と1年次前期のチューター制実施後アンケートに回答した56名を対象とした(有効回答率68.3%).学習行動調査は大学生の学習・生活実態調査報告書(ベネッセ教育総合研究所,2016)を参考に,高校3年時の授業態度25項目と学習方略6項目を設問し,当てはまる程度を4件法で回答を得た.チューター制実施後アンケートは参加頻度の他,チューター制の有効度及び5つの到達目標の達成度を4件法で回答を得た.学業成績は1年次前期のGrade Point Average(以下,GPA)と解剖学の成績とした.データ集計では,4件法で得た回答は2件法に再コード化し,解剖学の成績は80点以上と80点未満の2群に分けた.統計解析にはFisherの正確確率検定と対応のないt検定を用い,有意水準をP<0.05とした.本研究は所属機関の倫理審査の承認(21-03号)を得て実施した.
【結果】
チューター制が有効だった者は53名,有効でなかった者は3名で,有効だった者には,チューター制に毎回参加した者,少人数で行うことで意欲高く勉強に取り組めた者,学生と教員間で相談しやすい関係を構築できた者が多かった(P=0.048,0.038,0.019).高校3年時の学習行動との関係では,チューター制が有効だった者は高校3年時に計画的に勉強していた者が多く(P=0.029),チューター制で勉強が習慣化した者は高校3年時に誤答問題の内省を積極的にしていた者が多く(P=0.020),チューター制で親しい学生関係を構築できた者は高校3年時に分からない問題を丸暗記していた者が多かった(P=0.029).GPAはチューター制の有効度・到達目標ともに有意な関係はなかったが,高校3年時の学習行動で授業中に私語をしない者,配布資料を整理していた者,板書以外のことも書き記していた者は,GPAが高かった(P=0.014,0.010,0.001).また,解剖学80点以上には,高校3年時の学習行動で科目間の学びの関連付けを意識していた者が多かった(P=0.041).
【考察】
1年次前期のチューター制は学習意欲の向上及び学生・教員間の関係性構築に寄与することから,入学直後より教員が学生指導を積極的に担う必要がある.チューター制に対する学生自己評価による有効度・到達目標と学業成績との間には有意な関係はなかったが,これは解剖学1科目を中心としたチューター制が学業全体に汎化していない現れであり,チューター制の運用課題と考える.また,成績が良い学生の高校3年時の学習行動は,学業不振にある学生が大学入学後のリメディアル教育によって早期に身に着けるべき事柄と思われ,今後のチューター制に活かすことが肝要である.
学業不振による休退学を減らすために,基礎学力の向上を図るリメディアル教育を導入するOT養成校が増えている(野本,2021).その教育法には,学生が小グループで協力しながら勉強する協同学習があり(藤原ら,2021),高校までの受動的態度から自律的な学びへの変換が求められる.本OT専攻では1年生が難渋する解剖学を中心に,教員がチューターとなって指導にあたるチューター制学習(以下,チューター制) を実践しており,その有効性を報告している(千田ら,2022).しかし,チューター制に対する学生自己評価,学業成績,入学前の学習行動との関係性は不明で,これらの相互関係を探索することはチューター制を効果的に運用する一助になると考える.
【目的】
OT養成校入学前の学習行動とチューター制の学生自己評価及び学業成績との関係を検討する.
【方法】
令和3-5年度に本OT専攻に入学した82名中,同意の基に入学時の学習行動調査と1年次前期のチューター制実施後アンケートに回答した56名を対象とした(有効回答率68.3%).学習行動調査は大学生の学習・生活実態調査報告書(ベネッセ教育総合研究所,2016)を参考に,高校3年時の授業態度25項目と学習方略6項目を設問し,当てはまる程度を4件法で回答を得た.チューター制実施後アンケートは参加頻度の他,チューター制の有効度及び5つの到達目標の達成度を4件法で回答を得た.学業成績は1年次前期のGrade Point Average(以下,GPA)と解剖学の成績とした.データ集計では,4件法で得た回答は2件法に再コード化し,解剖学の成績は80点以上と80点未満の2群に分けた.統計解析にはFisherの正確確率検定と対応のないt検定を用い,有意水準をP<0.05とした.本研究は所属機関の倫理審査の承認(21-03号)を得て実施した.
【結果】
チューター制が有効だった者は53名,有効でなかった者は3名で,有効だった者には,チューター制に毎回参加した者,少人数で行うことで意欲高く勉強に取り組めた者,学生と教員間で相談しやすい関係を構築できた者が多かった(P=0.048,0.038,0.019).高校3年時の学習行動との関係では,チューター制が有効だった者は高校3年時に計画的に勉強していた者が多く(P=0.029),チューター制で勉強が習慣化した者は高校3年時に誤答問題の内省を積極的にしていた者が多く(P=0.020),チューター制で親しい学生関係を構築できた者は高校3年時に分からない問題を丸暗記していた者が多かった(P=0.029).GPAはチューター制の有効度・到達目標ともに有意な関係はなかったが,高校3年時の学習行動で授業中に私語をしない者,配布資料を整理していた者,板書以外のことも書き記していた者は,GPAが高かった(P=0.014,0.010,0.001).また,解剖学80点以上には,高校3年時の学習行動で科目間の学びの関連付けを意識していた者が多かった(P=0.041).
【考察】
1年次前期のチューター制は学習意欲の向上及び学生・教員間の関係性構築に寄与することから,入学直後より教員が学生指導を積極的に担う必要がある.チューター制に対する学生自己評価による有効度・到達目標と学業成績との間には有意な関係はなかったが,これは解剖学1科目を中心としたチューター制が学業全体に汎化していない現れであり,チューター制の運用課題と考える.また,成績が良い学生の高校3年時の学習行動は,学業不振にある学生が大学入学後のリメディアル教育によって早期に身に着けるべき事柄と思われ,今後のチューター制に活かすことが肝要である.